オリィ研究所がめざすのは、人間の“孤独の解消”だ。“会いたい人に会いに行ける、行きたいところに行ける”をコンセプトに、遠隔操作で自由自在に動かせる、世界初の小型分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発。在宅勤務やALSといった難病患者のコミュニケーション補助、遠隔結婚式参加など、すでに多数の利用実績を積んでいる。
現在、あちこちの機関でひっぱりだこの本製品。ここに至るまで、さまざまな苦労があったらしい。創業者兼取締役の結城 明姫(ゆうき あき)氏に、話を聞いた。
・人を癒すのは人工知能ではなく“人間”
Q1:「OriHime」開発のきっかけと経緯について、お聞かせください。
吉藤(代表取締役)は、中学時代3年間不登校でした。そのとき“孤独”を経験した彼は、母親が申し込んだロボコンで、ものづくりと出会ったのです。
その後、人工知能の研究に携わりますが、奈良で行っていた折り紙の会で人と人のつながりの重要性を感じたことや、また自分が社会復帰できたきっかけが、人と人のつながりであったことから、人を癒すのは人工知能ではなく、“人間”であるとの考えに至ったのです。(そこから)早稲田大学に入り、人と人のコミュニケーションを補助するデバイスとして、分身ロボットOriHimeの開発をスタートしました。
Q2:開発にあたって最も苦労したのは、どんなところでしょうか。
ロボットといえばAIという風潮の中、“分身ロボット”というコンセプトを理解してもらうまでに、3年かかりました。説明しても、最後までAIだと思い込む人が、当初は多くいたようです。
また、実際に使いたいというお子さんがいても、学校側が利用を許可しないなど、使ってもらうための理解や協力を得るのに苦労しました。
・機能向上した新バージョンを今夏リリース予定
Q3: 夏にリリース予定の新バージョンについて、お話いただけるでしょうか。
去年のバージョンからより安定性を高めた他、ソフトウェアのユーザーインターフェースを、一新しています。
企業が在宅勤務等で使うときに、ユーザーを管理しやすいスケジュール機能などもつけたビジネス用途のソフトウェアと、ALSなどの病気で目線しか動かせなくなった人でも「OriHime」を操作したり、文字を目線で打ち込んで読み上げる機能を持った目線操作型ソフトウェアを、新しくリリースする予定です。
たとえ寝たきりでも、ロボットを通じて社会に参加することができる。要介護者が増え続ける日本の社会にとって、これは大変に意義のあることだ。今後は価格を下げ、個人レンタルにも注力していくそう。一家に1台「OriHime」がいる。そんな未来が来ても、おかしくはないのだ。
OriHime