Techableでは福岡の九州大学ビジネス・スクールを経て、ドローンコンサルティング会社を起業した株式会社トルビズオンの増本衛氏を直撃。福岡起業のリアルに迫ってみた。
・地元にかける熱い思い
Q1:福岡に拠点を置くIT企業が増えていますが、貴社が本拠地に福岡を選んだ理由を教えて下さい。
三点あります。一つ目は、「福岡が好きだから」。一時、東京や大阪で過ごしていた時もありました。しかし、福岡に慣れてしまうと大都市圏には絶対戻りたくないです。生活の質がこちらの方が断然上に感じますし、生活コストも低いです。海も山も近いし、食べ物も安くて美味い。かといって田舎過ぎもしない。福岡は九州においては市場規模も一番大きいですから、起業家としてのビジネスのネタにも困りません。また、空港から中心部への距離が近く、福岡を拠点にすれば東京やアジアの各都市に、簡単にアクセスできます。私も妻も両親は九州に住んでおり、家族の連携が十分に取れるのも安心です。
二つ目は、「福岡で学び、ネットワークを作ったから」。
会社設立は二年前でしたが、同じ年に九州大学ビジネス・スクール(QBS)を卒業しました。そこで出来たネットワークが、ビジネスの立ち上げに役立ちました。九州各県に本社を持つ中堅企業や大企業の九州支店において能力の高い人材が集まっていますし、行政からも多くの方が学びに来られます。ちなみに、QBS在籍中には「産官学連携」のフレームワークも学び、いかに民間・行政・研究機関が連携をし、地域の価値を高めていくかということを日々考えていました。
最後は、「スタートアップしやすい環境」。冒頭でも挙げましたが、コストが安いので家賃にしても人件費にしても東京などとは比較になりません。また、行政のサポートも手厚い。特に福岡市はスタートアップ都市宣言を出しており、各種起業家支援が充実しています。実際に市長自らが起業家を集めシリコンバレーの先端企業を回るツアーを開催したり、福岡の大企業とベンチャーをマッチングさせる場を提供したりと、弊社も様々な制度を活用しました。今回参加したSLUSH ASIAにおいても、まさに福岡市の支援をいただきました。
・デメリットはない!?
Q2地方はスピード感や情報量の面、資金の融資の面などでデメリットがあるかと思います。そういった面で福岡に拠点を置いてデメリットを感じられたことはありますか?
総合的に判断すると、デメリットは「無い」です。それぞれ見ていきます。
まずスピード感ですが、東京と比べると全体的にやや遅く感じます。先ほどご紹介したコストが安くて飯がうまい環境は、悪くも働きます。ゆったりと自分のペースで仕事をしていても、なんとか食べていける空気感がある。そこがスピード停滞の原因なのかもしれません。しかしそのような環境においても、断然速いスピードで動く起業家もたくさんいます。むしろそんな環境だからこそ、「速いもの勝ち」のような世界です。
情報量に関してはネットのおかげで以前ほど中央と地方で差は無いと思いますが、リアルで参加しなければならないセミナーやコンベンションなどは、中央の開催が多いのでそこはデメリットでしょうね。ただ、最近はLCCなど国内線の価格が以前よりもかなり安くなっています。ホテルもネットを使えば、コスパの良い場所がすぐに見つかります。起業家仲間には、福岡に住みながら東京に頻繁に出張に行く方が多いです。私も東京に行くことが随分増えました。たまに、日帰り出張もやります。
資金の投融資に関しては、東京の方が機会は多いと思います。しかし、東京から福岡によく投資家が来ていますし、地方銀行も今はビジネスプランコンテストなどを始めており、地元の元気なベンチャーを探しています。また福岡市はサンフランシスコともつながりが深く、シリコンバレーの投資家などが福岡を訪問することもあるようです。その意味では、実力さえあれば福岡か東京かの差はあまり関係無いと思います。
・福岡から世界へ
Q3:今後御社はどのようにドローンの事業を拡大したいと考えてらっしゃいますか?
ドローンは空の産業革命の担い手と言われていますが、日本においては首相官邸落下事件や、姫路城破壊事件などで「ドローン=悪」という負のイメージが定着してしまいました。そのため企業は導入に慎重になっており、このままでは日本のドローン産業は中国や欧米のドローン先進国に遅れをとってしまいます。この状況を打破するためにも、一社でも多くの企業にドローンを安心安全に活用する術をお伝えしていきたいと考えています。
弊社はBtoCは行わず、あくまでBtoBに特化し拡大していきます。「ドローン=悪」のイメージを取り払うためには一般ユーザにドローンを普及していくことが大切です。しかし、一般ユーザ向けのドローンに特化した小売店やサポート業者はすでに数多く存在し、差別化にならないためBtoBを選択しました。
現在、九州・西日本を拠点とするインフラ企業数社とパートナーシップを結び、ビジネスを展開しています。「インフラxドローン」のソリューションを極めれば、これをセットにして海外にも進出できます。そのために必要な技術の蓄積、パトナーシップの構築を急ぎたいと考えています。
(取材・文 テッペートダ)
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