金沢大学が熊本城の空撮を行った事例なども大きく報道されているが、物資の輸送に欠かせない高速道路の早期復旧にもドローンが使われ、九州自動車道が地震後約2週間で復旧ている。
Techableでは今回の高速復旧にあたりドローンを派遣しコンサルティング業務を行った株式会社トルビズオンの代表取締役の増本衛氏を直撃。ドローンの活用方法や、今後の展開についてインタビューを行った。
・どのようにドローンが活用されたのか?
Q1:ドローンのコンサルティング業務とは具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?
ドローンは大きく3つの機能を持っています。映像撮影、データ収集、物流です。弊社はもとを正せば、動画制作コンサルティングの企業です。顧客企業の経営層やマーケティング担当と打ち合わせを重ね、そのビジョンや戦略、事業モデルを理解した上で、最適な動画を制作していくというプロセスを取ってきました。広告代理店と制作会社の機能を一気通貫で統合したイメージですが、規模が小さいため、コストをかけずに小回りの効くWeb動画に特化していました。
ある時、メニューに空撮を組み込みました。最初は付属サービスの域を過ぎませんでしたが、ドローンを使用していくうち、建築・測量、・点検・防災・倉庫管理・農業・林業など、様々な事業へ展開できる可能性を秘めていることが分かってきました。
そこで各業界のニーズをドローン・ソリューションでどのように解決することができるのか、そのノウハウを探る旅を始めたのです。中国の深圳や米国のシリコンバレーなど、ドローンの先進エリアを視察するうちに、その実情がつかめて来ました。今はその先進モデルをお手本にしながら、日本独自の法体系やビジネスモデルを考慮しつつ、独自のソリューションを開発しています。
・東日本大震災の時はまだ活用されていなかった
Q2:貴社のドローンは高速道路の早期復旧に役に立ったとのことですが、具体的にどのようなことを行いましたか?
高速道路の早期復旧に”役立った”と言うよりも、早期復旧に”役立つことが分かった”という方が正しいです。
2011年東北大震災が起こった際、ドローンは今ほど浸透していませんでした。そのため震災直後の防災対応という点では、ドローン活用は少なかった。しかしその後、ドローンが日本の市場に浸透しはじめた2014年頃から、復興での活用ケースが目立つようになりました。特に復興の建築現場での測量などで使われています。このケースからわかることは実際に現場で活用されるには、時間がかかるという点です。
さて、今回の熊本地震では国土地理院が阿蘇大橋の被害状況をドローンで撮影しレポートしました。余震が続く中、地上からは近づけない、ヘリコプターでも低すぎて近寄れない、そのような現場を撮影するには最適だったと考えられます。そしてこの空撮データは、復旧作業にも一定の効果をあげたはずです。
しかし高速道路の復旧に関しては、既存の有事対応プロセスが適用されます。まだ慣れない新しい技術を導入し、現場を混乱させることは避けなければなりません。そこで今回は、ある程度復旧の目処が立った段階で、実証実験という形で震災現場でのドローン活用を試みました。現場で収集したデータを持ち帰り、ソフトウエアにて分析した報告を提出しました。具体的には現場の被害状況、標高分析、土量分析、植生分析など、様々な角度からデータを抽出し、提示しました。
ここから我々は多くの学びを得ました。特に強調したいことは、震災後のデータだけ見ても不十分であるという点です。これらを比較するものが無いため、データ活用には限界があります。もし震災前のデータと震災後の現場をビフォーアフターで比較することができれば、どの辺りが崩れやすいのか、崩れた時にどうなるのかというシミュレーションも可能になります。
・人命救助につながるケースも
Q3:過去こういったケースにドローンが出動したことはあるのでしょうか?似たような事例があれば教えて下さい。
2015年にネパールで起こった大地震の際にドローンが活用されたケースです。震災における被災者の生存率は、災害の発生から72時間以内の救助活動で決まると言われていますが、この作業を迅速に進めるためにドローンの活用が役に立ったようです。
具体的には、赤外線カメラを搭載したドローンによる生存者の発見、倒壊した建物を撮影したデータから作成した3Dマッピングによる状況把握などが挙げられます。ネパールでは大きな事例はありませんでしたが、今後は数10kgの物体を運べるドローンも投入され、被災地への食料・衣料品運搬も実現するでしょう。
Techableではインタビュー第2弾として九州での起業に関するインタビューも掲載予定だ。
(取材・文 テッペートダ)
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