「ARTSAT KIT」は、個人の手で組み立てられる人工衛星キット。簡単な電子工作の知識があれば、誰でも製作可能だという。
クラウドファンディングサイト“Makuake”に登場して、10日あまり。その衝撃度から、早くも予定金額の半分を調達している。
多くの協力者によって実現した本プロジェクト。開発チームの一員でもあるスペースシフト、代表取締役の金本 成生(かねもと なるお)氏に話を聞いた。
・宇宙開発に携わりたい人のための技術習得キット
Q1:まずは、「ARTSAT KIT」開発のきっかけから、お聞かせください。
「ARTSAT KIT」の前身「ARTSAT1:INVADER」の開発者である、多摩美術大学の久保田先生にお会いしたのがきっかけです。「ARTSAT1:INVADER」は芸術衛星として、大きな成功を収めました。そのプロジェクトを支えた技術は、再度活用すべきと思ったのです。(中略)
そこで、以前から友人だった設計者の田中さんと当時の設計図などを確認し、小型ロケットや宇宙機器の開発で知られる、インターステラテクノロジズの稲川社長に協力を要請して、回路の整理や部品の再選定を行った上で、キット化に至りました。
Q2:「ARTSAT KIT」とは、どんなプロダクトなのでしょうか。
自分自身で人工衛星を作ってみたい、将来は惑星探査機を作るミッションを手がけて、見知らぬ惑星を探査してみたい、と考えている人たちのための、技術習得を目的とした人工衛星開発キットです。
部品はすべて基板に実装されており、宇宙での動作確認も完了している構成であるため、ソフトウェアのカスタマイズや研究、ハードウェア設計上の要点などを、作りながら密に学ぶことができます。電子工作の知識と簡単なプログラミングの知識があれば、組み立てパソコンと接続し、衛星を動作させることも可能です。
・2年後には打ち上げもあり得る!?
Q3:キットの開発で最も苦労されたのは、どんなところでしょうか。
プロジェクト開始から時間が経っていることもあり、当時の設計図やプログラムがどこにあるのか、確認するところから始まりました。
設計者の田中さんも、大学を出て別のお仕事が控えていたため、なかなか時間を割けませんでした。(そんな中で)当時の記憶を呼び覚まして、部品構成や回路図の整理を行いました。(中略)
そのような当時の状況から、キットとして提供できるところまで整理をし、さらに動作確認を行うという部分が、一番苦労した点かと思います。
Q4:資金調達後の展開について教えてください。
すでにキットの設計は完了しており、あとは基盤の製造を発注するのみ、という段階になっています。資金調達後はすみやかに製造フェーズに移り、購入者には予定通り、8月にキットをお届けできるよう進行します。
その後は、購入者を中心としたコミュニティを立ち上げて、ユーザープログラムの交流や、どのようにキットを活用されているか、事例の情報交換などを行ってもらう予定です。
(将来的には)個人や教育機関の衛星開発がより活性化するよう、こちらでも手助けをしていければ、と思っています。キットを手に入れたお客さまが、2年後には手段を講じて、打上げることもあり得るでしょうから。
「ARTSAT KIT」の支援受け付けは、3月29日まで。パーソナル人工衛星打ち上げの日が、すぐそこまで迫っている。
ARTSAT KIT/Makuake