年間に10万ものスキンサンプルを生産しているというL’Orealでは、もともと形成外科患者に提供してもらった肌サンプルを使って分析をおこない、9パターンの肌サンプルを培養していた。
だが、このプロセスには60人もの科学者が関わっており、これまで不安定な環境で作業を進めざるを得なかったのが現状だったという。
・肌サンプル生成プロセスをオート化
そこで、同社ではバイオプリンティングのスタートアップ「Organovo」とチームを組み、ゲノム解析、プロテオミクス解析を基盤とした3Dバイオプリントの技術を使って、今までの不安定な培養プロセスのオート化を図ろうとしている。
Organovoでは、生物学と工学の技術を駆使し、人体のオリジナルの組織の形状、機能を似せた「生きた“ヒト組織”」をオートで作製する手法を確立した。
・小さなブロックで形成された“ヒト組織”
“exVive3D”というバイオプリント“ヒト組織”は、生きたヒト細胞からつくられた小さなブロックから成る。
同社のバイオプリンター“NovoGen Bioprinter”を用いて作製された組織は、細胞の密度、細胞のタイプなど、さまざまな重要な要素がオリジナルの組織と共通になっている。
・肌サンプルを販売するビジネスを展開へ
L’Oreal側は、肌に関する知識やノウハウ、資金を、Organovo側はバイオプリント技術を提供するというビジネスモデルで、生産した肌サンプルの約半分は、ライバルのコスメ会社や製薬会社向けに販売する予定だ。5年以内には実行に移したい考えで、大きな収益を見込んでいるという。
コスメや製薬のテストに用いられるだけでなく、皮膚を怪我した患者の再生医療に役立てられることも期待される。
Organovo