偉大な巨匠たちの作品を眺めて鑑賞するのは、とても豊かな時間ではあるものの、どうしても絵画は、目の不自由な人にとってはなかなか楽しみにくいものでもある。
・視覚障害者が、“手で触れて”絵画を鑑賞
そこで、スペインにあるプラド美術館では、目の不自由な人にも絵画鑑賞を体験してもらおうと、3Dで“触れる絵画”「Touching the Prado」というプロジェクトを企画した。
・ゴヤの絵画など、傑作6点のレプリカを成形
スペインの印刷会社Estudios Dureroが開発した“Didu”という特殊な出力技術を用いて、ゴヤ、ベラスケスといった画家の著名な絵画作品6点を3Dプリントのレプリカとして成形。
・レイヤーごとに肌触りを変化
レイヤーごとに、異なるインクで出力される仕組みになっていて、UV光を照射するなど、化学処理がほどこされると反応が起こり、出力レイヤーの体積が増加する。
この仕組みによって、箇所によって異なる手触り、デコボコ感、色彩を再現した。最後に、レイヤーの最上面にオリジナルの画像をプリントして、レプリカは完成だ。
・点字などのナビゲーションも
このレプリカには、点字や音声ガイドといった小型の仕掛け装置が内蔵されていて、ユーザーが絵画の構造や内容を理解する手助けをしてくれるという。
今年の6月28日までプラド美術館で開催されていたこの特別展示。目で見て楽しむだけでなく、“手で触れて”体感できる、新たな美術鑑賞体験がここにはある。
このようなユニークな切り口の展示が、わが国でも開催されることが待たれるところ。
Estudios Durero