電動アシスト付き自転車を初めて開発・商品化した日本では実用重視で生活感のあるママチャリのイメージが強かったため、海外e-bikeは逆輸入のような形で入ってきた。対照的に、オフロード用やマニア向け、デザイン重視だった海外e-bikeの分野では、10年ほど前から実用性の高い「ママチャリ」的モデルが人気を集めている状況だ。
海外e-bikeメーカー各社が「カーゴバイク」ラインの拡充
大型荷物の運搬や子どもの送迎に便利な電動カーゴバイクがいま、世界の各都市で人気を広げている。ヨーロッパの多くの都市でカーゴバイクは従来より生活の一部となっていたが、近年の電動モーターの導入によってさらなる進化が期待されている。海外メーカー各社は、こうした運搬性能の高い電動自転車のラインアップを拡充。たとえば、アメリカのPedegoが今年4月にリリースした新モデル「CARGO」は、前かごやサドル下部のコンパートメントに荷物を収納可能。オプションで子供用シートやサイドバッグなども取り付けられ、アレンジ次第ではサーフボードのような大きな物でも運搬可能だ。
CARGOは、Pedegoが2015年から販売している「Stretch」を新たなレベルに高めたというモデル。CARGOが加わったことで、同社の実用ラインが9年ぶりに拡充されたことになる。
同じくアメリカの老舗自転車メーカーCannondaleも、2023年に「Cargowagen Neo」と「Wanderwagen Neo」の2モデルを発表。当時「Cannondaleも電動付きカーゴ自転車ブームに参戦」「Cannondaleが新規カーゴ2モデルで実用性重視に」などと報道された。
Cannondaleは現在Dutch Cargo傘下のいちブランドとなっているが、これは親会社だったDorel Sportsが2021年にオランダの複合企業Pon Holdingsによって買収されたためである。
オランダは、昔から前かごの大きな自転車「Bakfiets」で荷物を運ぶ習慣が浸透している国。オランダ企業Dutch Cargoのサイトではカーゴラインの充実ぶりが確認できる。
台湾のTern Bicyclesは、2017年から「GSD (Get Stuff Done)」シリーズを展開。2020年には新モデルを追加し、今年6月には、コンパクトなカーゴバイクとして「Quick Haul Long」をリリースしている。
電動カーゴバイク世界市場のCAGRは22.8%
海外e-bike業界におけるママチャリ風モデル開発トレンドが続く背景には、環境と健康に配慮した移動手段として世界的に街乗り自転車の活用が浸透したことや、消費者のニーズが実用的製品にも拡大したこと、日本のママチャリ文化の影響などが考えられる。Grand View Researchの調査では、2023年に12億米ドルと推定された世界の「電動カーゴバイク」の市場規模は、2024年から2030年にかけて年平均成長率22.8%で成長すると見込んでいる。一方、ほぼ同期間のe-bike全体の世界市場規模について、調査会社3社はCAGR約9~10%と見込んでいる。
これらのデータからも、同セグメントに参入する世界的メーカーが今後も増加するのは必至だ。ママチャリ発祥の国である日本は、カーゴバイクでも「逆輸入」という事態を回避し、自動車分野のように海外でも存在感を発揮できるだろうか。
参照:
Pedego
Cannondale
Dutch Cargo
Tern Bicycles
(文・Techable編集部)