Google Venturesから資金調達のBounti、「AIは万能薬ではない」
AIの有用性を認めつつも、あくまで「人間中心のセールスアプローチが必要」とするスタートアップが、サンノゼを拠点とするBountiである。AIと人間の直観力を組み合わせることで、従来の営業手法の限界克服を目指す企業だ。営業担当者をサポートする自律AIツールを提供する同社は9月12日にステルスモードを抜け、Google Ventures主導のシードラウンドで1,600万ドルの資金調達を発表。あわせて、シリコンバレー古参として実績の高いLew Cirne氏を独立取締役に迎えたことも明らかにした。
Bountiのツールは反復的なタスクを自動化するだけではなく、顧客一人ひとりのニーズに合わせたアプローチを可能にし、そこから洞察を得ることで、営業チームがより多くの取引をより迅速に成約まで持っていけるというもの。
今後、AIが営業においてますます重要な役割を果たすことは間違いないが、Bountiによると「現在のAIは万能薬ではない」。人間の洞察力や直観力、経験は、営業活動において依然として必要不可欠だという。
AI製品急増で顧客との関係は「どこかが壊れている」と指摘
Bountiの共同創業者であるMatt Cooley氏は、「こんにちの営業担当者と顧客の関わりは、どこかが壊れてしまっている」、「AI製品の爆発的な増加により、パーソナライゼーションと人間同士のつながりが浸食されている」などと指摘。「顧客は自分のニーズにつながりのない営業アプローチに疲れ切っている」と語っている。
疲弊しているのは顧客だけではない。同社が営業担当者800人を対象に行った独自調査によると、回答者の4分の3が「営業ノルマや販売目標がストレスになっている」と回答。また、66%が潜在顧客1件ごとに1時間以上のリサーチを行い、半数以上が「モチベーションが感じられず、不満がある」と応えている。
一方で、対面でのアポを取るために顧客ごとに送信メールの内容をカスタマイズしているのは23%のみ。残り8割近くのメールが、上述のようにニーズに合わない営業活動で顧客を疲れさせていることになる。
10分で500社をリサーチ、カスタマイズメールを生成
Bountiの自律AIを活用すれば、営業担当者は時間のかかるリサーチやメール作成を自動化することが可能だ。AIがわずか10分で500社以上の企業を調査したうえで高い見込み客を特定し、潜在顧客に関する広範なオンラインデータを分析。担当者はターゲットに関する詳細なインサイトを短時間で獲得できる。さらに、このインサイトに基づきAIが見込み顧客のニーズに合わせたメッセージを作成。ただし、Bounti社は大量のメール配信を自動化するのではなく、人間の関与が重要だと考えている。営業担当者はAIが生成したインサイトをふまえつつ、自分の経験や判断に基づいて最終的な意思決定を下すことが可能だ。こうしたアプローチによって顧客との信頼関係構築が円滑に進み、成約率が向上するとしている。
Cooley氏はリリースで「Bountiの技術は、営業およびマーケティングチーム、新規獲得チームをエンパワーして、人間にしかできない業務に集中できるようにします」、「営業チームの代わりになるのではなく、チームを強化するAIツールを創出しましょう」と述べている。
また、BountiはAIシステムにおけるフィードバック・ループの重要性も認識。営業担当者からのフィードバックはAIアルゴリズムを継続的に改善し、より的確で効果的なインサイト生成のために使われるという。もう一人の設立者であるAshar Rizqi氏も、「AI活用によるセールス自動化は極めて複雑で、実際の訓練を受けた人間から得られる深い専門知識が必要です」と発言した。
参考元:
Bounti
Newswire | Press Release
(文・五条むい)