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Mobile 【フィンランド現地レポ】東京ゲームショウではHill Climb Racing2のボンバーマンモードが登場|5人で開発したゲームが世界的ヒット、本格的な日本進出を目指すFingersoft

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【フィンランド現地レポ】東京ゲームショウではHill Climb Racing2のボンバーマンモードが登場|5人で開発したゲームが世界的ヒット、本格的な日本進出を目指すFingersoft

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「ヨーロッパのシリコンバレー」として知られ、スタートアップのエコシステムが発展しているフィンランド。首都ヘルシンキは過去に「ワークライフバランスに優れた都市」として世界1位をとっていることでも名高い。本企画ではフィンランドに住む筆者が、現地でイノベーションを起こしているスタートアップ事業を取材し、フィンランドの人々のリアルな働き方や暮らしの様子をまじえながら現地からレポートする。

今回は、世界各国でプレイされている人気カーレースゲームアプリ『Hill Climb Racing(ヒルクライムレーシング)』を開発したFingersoft Oy(以下、フィンガーソフト社)をオウル市で取材した。

スマホを持って小学校へ

長い夏休みが終わり、学校が始まった。フィンランドでは、多くの子供たちがプレスクールや小学校に入学すると同時にスマホを手にする。

ずいぶん昔の話だが、我が家も学校へ通い始める前に子どもたちに携帯電話を買い与えた。小学1、2年生は授業時間が短く、給食が終わると帰宅する日もあるので、親は常に携帯電話で子どもの居場所をチェックしなければならない。フィンランドではスマホの浸透率が高く、子どもにスマホを持たたせない選択は考えられないような気がする。

ところで、フィンランド統計局の時間利用調査*によると、フィンランド人(10歳以上)は、1日平均4時間26分をテレビやコンピューター、スマートデバイスを使った娯楽に費やしているという。なかでも、10~14歳の男子は1日あたり1時間28分、15~24歳の男子は1日あたり1時間44分をデジタルゲームに費やしているそうだ。これには、他の作業をしながらスマホを使うなどのマルチタスクも含まれるものの、若年層の男性ユーザーが日常的にゲームを楽しんでいることがみてとれる。
*2020年から2021年にかけて実施。

学校でのスマホ利用が禁止になるのも時間の問題

小学生のうちからそんなにゲームばかりしていて大丈夫なのかと心配していたら、やはり学力は低下傾向にあるようだ。この対策として、フィンランドの教育文化省は現在、スマホの使用制限に関する法律案を準備している。 楽しいゲームだからこそ、みんな没頭してしまうのだろうが、勉強と遊びの両立を心がけたいものだ。

こうした“規制”の議論もなされているゲーム市場だが、世界的にみると売上高は回復傾向にある。「Global Games Market Report 2023」によれば、2023年の世界のゲーム市場規模(売上)は約28兆円超と推計されている。

超ヒット作「Hill Climb Racing」を生んだフィンガーソフト

今回、フィンランド人なら誰もが聞いたことがあるであろう超ヒットゲームHill Climb Racing & Hill Climb Racing 2を開発した、オウル市にあるフィンガーソフトの本社を訪問した。

フィンガーソフト本社。会社が補助金を出して電気自電車の購入・通勤を奨励している(筆者撮影)

海に面した市場のすぐそばに、フィンガーソフトの本社がある。2012年、オウル市に隣接する小さな町の一軒家でワンマン会社として立ち上がった同社は、ここ12年の間に売上高2,400万ユーロ、利益率10%を達成し(共に2023年度)、いまや116名のスタッフを抱えるゲームソフト会社に成長した。スタッフの平均年齢は37歳。20か国以上から集まったスタッフがオフィスで楽しそうに働いている。

オフィスドアを開けると右手にビリヤード台、エレキギター、ゲームコーナーがあり、冷蔵庫にはドリンクが常備されている。(筆者撮影)

駐車場からオフィスの中に入ると、右手にカラフルなソファ、ビリヤード台、奥には大型テレビとゲーム機が置いてある。クリエイティブな感性が必要とされる職業だけあって、休憩時間に即興ができる音楽スタジオまで完備されている。

左手にはキッチンがあり、テーブルやチェアも用意。大きな窓からたっぷり光が入る作りとなっており、コーヒータイムやランチタイムもしっかり楽しめそうだ。

勤務時間中にジムで体を鍛えてもよいとのこと(筆者撮影)

地下には大きなサウナやジム、スタッフ専用のバーまであり、スタッフは勤務中にジムで体を鍛えて良いそうだ。こんな環境なら、みんな楽しそうにしているはずである。

さっそく、取材依頼を快諾してくれた最高事業成長責任者(Chief Growth Officer)のDaniel Rantala氏に話を伺った。

事業の成功と労働時間短縮を両立させる経営方針

2児の父であるDaniel Rantala氏。家庭と仕事の両立を考えた対策を打ち出している。(筆者撮影)


――フィンガーソフト社の会社紹介をお願いします。


Rantala: フィンガーソフト社は2012年にワンマン会社としてスタートしました。当社が2012年9月に発表したアプリゲーム『Hill Climb Racing』は、翌年の2013年には米国で10位、全世界では7位のダウンロード数を誇るゲームとなり、たった1年でダウンロード数が1億を超えるヒットゲームとなりました。

2016年には『Hill Climb Racing2』をリリース。Hill Climb Racingの中国語版は、中国モバイルの「アウトスタンディング・ゲーム・オブ・ザ・イヤー2015」アワードでベスト・イノベーション部門を受賞しました。

最初の数年間はフィンランドの田舎にある一軒家がオフィスだったんですよ。ロックバンドのような創造的な自由と精神でHill Climb Racingを創り上げた当社は、今もその精神を大切にしています。100名以上のスタッフを抱える企業に成長した今も、スタッフ一人ひとりが自由に創造できるよう、給与をはじめ、福利厚生の面で働きやすい環境を提供しています。

――日本のサービス残業とは真逆を行くフィンガーソフト社の「80%勤務」とは?


Rantala: スタッフには福利厚生として、手厚い医療サービスや、社員旅行をはじめとする数多くのイベント、自転車通勤を奨励するための電動自転車購入時の助成金、ランチクーポン、毎月の無料マッサージなど多くの特典を提供しています。

フレキシブルワーキングアワーに加えて、勤務時間を80%に短縮するオプションがあります。これは、通常の勤務時間を80%に減らしながらも、給与は通常の90%受け取れるシステムです。仕事と私生活のワークライフバランスが取れるということで、子育て世代のスタッフや趣味を大切にするスタッフを中心に2割のスタッフが「80%勤務」を利用しています。これは、とても斬新な試みだと思います。正規導入前にトライアルを行っていますが、トライアル中に生産性の低下は特別見られませんでした。

テクノロジーとクリエイティビティが混在するのがゲーム業界です。弊社では、無駄に労働時間を強いるより、1日のうちに業務に集中できる時間を確保することが大切と考え、これらはスタッフの生産性を最適化できるシステムだとポジティブに受け止めています。

笑顔のJuuso Ervasti氏。ゲームアーチストはワークデスクも賑やかだ。(筆者撮影)


――御社には複数の主要製品があるかと思います。実際にどれくらいのユーザーがプレイしているのでしょう。


Rantala: 主要製品はHill Climb Racing、Hill Climb Racing2、そして今年発表したLEGO Hill Climb Adventuresの3つのモバイルゲームです。あわせて月間アクティブプレイヤーが約5,000万人、デイリーアクティブプレイヤーは約700万人と、非常に多くの方にプレイしていただいています。

Hill Climb Racingは2012年にリリースされ、モバイルゲームの中では最も多くプレイされているレースゲームなんです。Hill Climb Racingには約3,500万人の月間アクティブユーザーがいます。続編のHill Climb Racing 2は2016年に発売され、約1,500万人の月間アクティブユーザーがいます。

― Hill Climb Racingのほうがユーザー数が多いのですね。


Rantala:ダウンロード数やユーザーアクティビティにおいて比較すると、Hill Climb Racing のほうがHill Climb Racing2よりも人気があるといえるかもしれません。一方で興味深いことに、収入性ではHill Climb Racing2のほうが多いんです。主要市場向けにゲームのプロモーションを積極的に行っていたり、マルチプレイの対戦型になっているため、プレイヤーが課金しやすい環境にあります。これに対して、Hill Climb Racingは広告収入が主で、プレイヤーの思い入れがあるため、ゲーム機能の変更は考えていません。

ちなみにGoogle Playでは、10億ダウンロードを達成したゲームタイトルは6つしかなく、Hill Climb Racingはそのうちの1つなんですよ。信じられないかもしれませんが、Hill Climb Racingは5人チーム、Hill Climb Racing2は19人チームの少人数で開発されています。

フィンランド人にお馴染みのHill Climb Racing 2。(筆者撮影)

筆者の家族も随分前から Hill Climb Racing シリーズをプレイしている。年齢を問わず、誰でもすぐに始められるところが魅力の一つだ。少々とぼけた感じの普通のおじさんが主人公というキャラクターも面白い。物理を駆使した車の動きで、予想に反して車が回転したり、クラッシュしたりと、意外な展開についはまってしまうのだ。

世界でもトップクラスのユーザ数をもつというこのゲームが、たったの24名で開発されているとは驚いてしまう。

――今年、新製品を発表されましたね。


Rantala:今年5月に、新アプリゲーム『LEGO Hill Climb Adventures』をリリースしました。

これはThe Lego Groupとフィンガーソフト社のクロスコラボレーションなんです。今年の冬頃には、LEGO Hill Climb Adventuresのモバイルゲームを日本でリリースする予定ですので、どうぞお楽しみに。

フィンガーソフト社はさらなる続編『Hill Climb Racing 3』の開発にも取り組んでいる。3Dで、リアルタイムのプレイヤー対プレイヤーのマルチプレイヤーゲームタイトルになるとのことだが、リリース時期についてのコメントは貰えなかった。またウェブ版のHill Climb Racingも開発中ということだ。

――御社にとって日本市場はどんな立ち位置なのでしょうか。


Rantala: フィンガーソフト社は日本市場を重要視しています。日本はデジタルビデオ・ゲーム発祥の地として、何千万人もの熱狂的なゲーマーがいます。弊社のゲームを楽しんでくださっている方々が大勢いることは調査などで把握してきたのですが、本格的に浸透させる機会がありませんでした。これまで見過ごしてきた日本市場に、これから全力でアプローチしたいと思っています!

――戦略を教えてください。


Rantala:コナミデジタルエンタテインメントとIPパートナーシップを締結しました。このIPパートナーシップによって、ボンバーマンキャラクターがHill Climb Racing2に登場し、日本のプレイヤーはお馴染みのキャラクターでプレイすることができます。

日本のプレイヤー向けに、日本企業とローカライズ事業も行っています。翻訳を含めたローカライズ、ゲームコンテンツ、プロモーションは札幌に本社を置く日本企業インフィニットループが担当しています。

――日本で実際にプレイできるのはいつごろになりますか。


Rantala:じつは嬉しいお知らせがあります。今年9月26日(木)~29日(日)に幕張メッセで開催される東京ゲームショウ2024にフィンガーソフト社が初出展します。

開催中は、コナミのボンバーマンキャラクターでHill Climb Racing2をプレイできるんです。この機会に楽しんでいただきたいと思います。弊社からは私を含め5名が訪日し、インフィニットループからも日本人スタッフが駆け付けます。会場でお会いできるのを楽しみにしています。

東京ゲームショウ2024を楽しみにしているRantala氏(筆者撮影)



東京ゲームショウ2024のブースメンバーは左からJonathan Massey氏(Director of Game Products), Juha Kilpala氏 (Producer of Hill Climb Racing), 金子詩歩氏 (QA Engineer), Iñigo Mirantes氏 (Senior Art Specialist) とRantala氏(フィンガーソフト提供)



【出展情報】
東京ゲームショウ2024 @ 幕張メッセ
ビジネスデイ 9月26日(木)・27日(金)ならびに 一般公開日 9月28日(土)・29日(日)に一般展示会場08-C04でHill Climb Racing2を展示予定。

Fingersoft Oyについて
2012年田舎の一軒家でワンマン会社としてスタート。ダウンロード数20億を超える超ヒットゲームHill Climb Racing Hill & Climb Racing2をクリエイト。スタッフのワークライフバランスを考えた「80%勤務」を奨励しながら、 2023年度の売上高2400万ユーロ、利益率10%の業績を上げる。株式会社コナミデジタルエンタテインメントとのIPパートナーシップで、ボンバーマンキャラクターがClimb Racing2に登場。今後も日本企業とのIPパートナーシップを通して、日本市場への進出を目指す。
詳しくはhttps://fingersoft.com


≪著者プロフィール≫
ケラネン陽子/ フィンランド在住27年・ビジネスコンサルタント

石川県白山市出身。大学卒業後、フィンランドへ移住。オウル市で経営学を学び、これまで約20社の海外・日本事業を担当。2018年にコンサルタント会社を起業。2023年より本格的に事業活動を開始し、「世話好きなおばちゃん」のような親しみやすさと実用的なサービスで、日本進出を目指す外国企業をサポート。夏限定の野外フェスやフローティングサウナが大好きな2児の母。

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