また、マットレスの硬さや枕の高さなどにこだわっても、就寝時の姿勢は必ずしもずっと同じではない。ベッドに横になった時は快適だったはずが、朝起きたら窮屈な姿勢になっていて首や肩が凝っていた、ということは誰しも経験があるのではないだろうか。
そこで米カリフォルニアの企業が手がけているのが、AIでユーザーの睡眠中の姿勢にあわせて身体への圧を調整するというスマートマットレスの「HEKA」だ。ユーザーの睡眠姿勢が常にベストな状態になるように開発されている。このほど発表した第6世代のマットレスでは、リアルタイムにユーザーの姿勢を感知して素早くサポートし、身体にかかっている負荷をすぐ取り除くことで深い睡眠が得られるように設計しているという。
睡眠科学をベースに開発
カリフォルニア・シリコンバレー拠点のiFutureLab Inc.が展開するHEKAは、睡眠科学をベースにAIを活用したスマートなマットレス。スタンフォード大学医学部の睡眠や生体リズムを研究するセンターのJamie Zeitzer博士らが手がけている。同社は2013年に、ユーザーの睡眠姿勢に合わせて体を支えるAIマットレスとしてHEKAを開発し、翌年には特許を取得した。首や背中、腰など特定の部位に負荷がかからないようにすることで、神経への刺激を減らし、安眠につなげるというものだ。
たとえば、同じマットレスでも、当然ながら使用する人の体格などによって使用感は異なる。また、マットレスが柔らかすぎると体が沈んで姿勢が歪み、硬すぎても体の特定の部位に過度な圧力がかかる。そうした姿勢の歪みや圧力を調整して睡眠時の快適な姿勢をサポートするのがHEKAだ。
何層にもなっているHEKAの内部にはセンサーが埋め込まれ、ユーザーの体型や体のカーブ、姿勢などを認識する。そして、マットレスの足元側の下部にあるチップなどから成る“ブレイン”がセンサーからの情報を処理。独自のアルゴリズムや睡眠科学に基づいて特定箇所に負荷がかからないよう指示を出し、エアサスペンションが調整されるという仕組みだ。
体の動きに素早く対応
HEKAの第5世代は2017年に発表され、翌年に一般発売された。今回の第6世代ではこれまでのスマートさに磨きをかけ、即応性などを高めるとともに、ユーザーエクスペリエンスも向上させているという。たとえば、姿勢が変わるときに頚椎や腰椎などに負荷がかからないよう、HEKAは自動で部分的に上下するが、この対応時間が短くなり、強度も向上したという。また、首や肩などそれぞれの部位の高さや位置に応じて細やかに調整された異なる圧力でサポートする。
つまり、体の左側面を下にした状態から仰向けになり、今度は右側を向いて横向きに寝る、といった動きを取っても、一連の寝返りの動きに応じてマットレスが素早く変動し、体を少し持ち上げたり、沈めたりする。
加えて、第6世代では日々の使用状況からユーザーの特性などを学習する能力も強化され、よりパーソナライズされた仕様でスムーズかつ正確にサポートを行えるようになっているという。おそらく、ユーザーの癖のようなものも把握してスムーズに対応するのではないだろうか。
米国や中国で特許取得済み
睡眠時の身体への負荷を取り除くことが深い眠りにつながると同社はうたっている。同社ウェブサイトによると、マットレスに使用している技術に関しては世界で広く知的財産権を持ち、米国や中国では特許も取得済みとのこと。HEKAの顧客はすでに世界各地で20万人を超えているそうだ。また、北米や欧州、アジアなどにマットレスが体験できるセンターを630か所設置しているという。
参考元:
GlobeNewswire
HEKA
(文・Mizoguchi)