Storyは、生成AI企業がLLM(Large Language Model)のトレーニングと推論のために、クリエイターの知的財産を無断で使用することを防ぐための、ブロックチェーンを活用したプラットフォームの構築を目指している。
AI著作権侵害との闘い
Storyは現在、生成AIによるインターネット上の知的財産の盗用問題に取り組んでいる。生成AIのLLMはシステムが洗練された出力を生成できるように、膨大な量のトレーニングデータを必要とする。しかし、そのデータの多くには、著作権が適用されていることを無視してはならない。昨年、ニューヨーク・タイムズはMicrosoftとOpenAIに対して、同社の知的財産の不正使用に関する損害賠償を求める訴訟を起こした。訴訟のなかで、タイムズは同紙に掲載されたコンテンツを利用して、GPT-4がテキストを生成した事例をいくつか挙げた。
訴訟に関する動議のなかで、Microsoftの弁護士は、このような主張は根拠がないとした。トレーニングに使用されるコンテンツは作品市場で流通するものではなく、モデルに言語を教えるものだとの主張だ。
今年8月時点で、この訴訟の最終的な判決は出ていない。しかしこの訴訟は、生成AIの著作権問題に関する重要な先例となる可能性があり、業界全体から注目されている。
コンテンツを知的所有権を埋め込んだ“レゴブロック”に変換
ブロックチェーンとは、改ざんが不可能な形で情報を記録・管理可能な分散型データベースのことだ。Storyが提供するプラットフォームは、クリエイターが自分の作品を創作した後に、その知的財産の所有者であることを証明できる、ブロックチェーンシステムとして機能する。
共同創業者兼CEOのS.Y. Lee氏はこのように述べる。
Storyのプラットフォームによって、クリエイターが創作した作品を、知的所有権を埋め込んだ“レゴブロック”として扱うことができます。もう弁護士を通す必要はありません。代理人を通す必要もなく、長時間を費やすビジネス交渉の必要もありません。ライセンスやロイヤリティ分配の条件を、小さな知的財産レゴブロックに埋め込むだけなのです。
知的所有権の未来
Storyは知的所有権を作品にプログラミングすることで、柔軟な作品流通が可能になり、インターネットを“知的財産レゴランド”に変革する。知的財産は、さまざまな媒体やプラットフォームをまたがってリミックスされ収益化できるのだ。このようにしてStoryは、クリエイター主導の未来を開く。Lee氏は、このように述べた。デジタルルネサンスが勃興するなかで、誰もがクリエイターになれるという素晴らしい時代が訪れています。しかし同時に知的財産が適切に収益化されないなら、それは長期的にはAIにとって自滅的な行動になるのです。
参考元:
Story
プレスリリース
(文・五条むい)