こうしたネオバンクの強みは、ユーザーフレンドリーなモバイルバンキング、柔軟な融資システム、そして顧客ニーズに迅速に対応する保険商品の開発などが挙げられる。最先端技術を武器にレガシーバンクに挑戦しているのだ。
レガシーバンク向けDX支援プラットフォーム
言い換えれば、技術革新の波に乗り遅れたレガシーバンクが存在するということである。コンサバティブな従来銀行業界において、システムのDX化すら果たせていないレガシーバンクも少なくない。そんなレガシーバンクや保険会社のDXを支援するプラットフォームを提供するのが、ルーマニア・ブカレスト発のスタートアップFintechOSだ。
乗り遅れたとはいえ、日本でもレガシーバンク各社がデジタル戦略を重要な経営課題として認識しており、各社が強みを生かしながらデジタル化に取り組んでいる状況だ。取り組みの例としてはインハウスのIT部門を設立しての内部開発や、銀行内でのIT人材育成とチーム構築、レガシーシステムの段階的刷新などがある。
さまざまなアプローチがある中で、FintechOSが提供する同名のDX支援プラットフォーム「FintechOS」は、“次世代の金融商品管理ツール”として、コアシステムを置き換えることなくエンドツーエンドの商品イノベーションと優れた顧客体験などを実現するとしている。
商品開発からサービス展開まで最短12週間を実現
幅広い機能を搭載した同社のプラットフォームは、「10倍の速度で市場へ投入」「運用コストを30%削減」「収益拡大は2倍」という導入効果を謳うもの。既存商品のデジタル化や新商品の開発、融資に必要な信用判断や引受業務の自動化も実施できる。組込みのダッシュボードと分析機能によって、商品の企画から廃止までを追跡・査定・最適化することも可能だ。
特に注目すべきは、プラットフォームの一部である「 FintechOS Studio」は、ローコード/ノーコードビルダーだろう。技術スキルに関係なく、誰でもデータ駆動型の金融・保険商品を考案からリリースまで担当可能で、「最短12週間でソリューションを立ち上げて実行できる」と主張している。
金融機関では商品企画から実現までに数年を要することも珍しくないが、FintechOSを活用すれば週単位でのプロジェクト進行が可能になるという。その時々のトレンドに乗り遅れることなく、タイムリーな商品展開が可能だ。
15o以上のサードパーティーサービスとデータソースが予め統合されているほか、基礎的なAI APIを含む同プラットフォームでは最先端の生成AIも活用できる。また、パーソナライズされた顧客オンボーディングプロセスによって競合との差別化を図り、コストと離脱率を抑えつつ顧客コンバージョンも改善されるという。
5月にシリーズB+で6,000万ドルの資金調達
2017年に設立されたルーマニアのスタートアップFintechOSだが、現在ではニューヨークとロンドンという金融市場の中心に拠点を置くグローバル企業に成長。今年5月、FintechOSはシリーズB+投資ラウンドで6,000万ドルの出資を得ることに成功した。ラウンドの主導はMolten Ventures、Cipio Partners、BlackRockが担う形で、既存投資家のEarlyBird VC、OTB VC、Gapminder VCも改めて参加している。
このラウンド自体にFintechOSが前年比40%の成長と営業利益率170%の増加を達成したマイルストーンとしての意味合いも含まれ、前回の投資ラウンドからは300%以上の成長を遂げているとのこと。
アメリカ、イギリス、EU、アジア太平洋地域でSociété Générale、Admiral、Benenden Health、Avant Money、Vibrant Credit Unionなどの主要顧客をすでに抱えているFintechOS。国際的な知名度も獲得する最中にあり、今後も成長が期待される。
参照:FintechOS
(文・澤田 真一)