Moproboは名前のとおり「モップ」であって「vacuum cleaner」ではない。「vacuum」(吸い込む)のではなくモーターの力で「飲み込む」ため、「吸引力」という言葉があてはまらない掃除機だ。
ゴミを「飲み込み」、床を「洗う」モップロボット
ダイソンの掃除機はサイクロン方式という独自性とそれによる吸引力が最大の特徴だが、Moproboも独自の「フローティング・クローラーベルト」技術によってパワフルさを実現している。フローティング・クローラーベルトは、高トルクモーターが床の上の物体を飲み込み、超微細ナイロンシートが液体を吸収するというもの。
「吸引」しない=「空気の流れを使わない」ことから排気もなく、ハウスダストやダニアレルギーの家族がいても安心して使えるという。
また、フローリングなどの固い床は「洗う」べきという発想に基づき、約1リットル容量の水タンクを内蔵し、電解水殺菌モジュールを採用。汚れた水をただちにリサイクルし、常に清潔な状態の水で拭き掃除をすることで、細菌やウイルス、その他の有害な微生物を根絶するとしている。
開発は製品名と同じくMoproboという名のスタートアップで、2021年の設立。CEOであるFrank Zheng氏のLinkedInによると、エンジェルラウンドで1500万ドルを調達済みとのこと。
吸引力の「ダイソン」は失速、世界の掃除機市場動向は
冒頭でも言及したように、「吸引力」が売りのダイソンは失速。世界的な組織再編の一環として、英国の従業員の約3割に当たる1000人をリストラすると報道された。AI・自動化への対応が遅れたことが原因の一つと見られている。
Grand View Researchの最新レポートでは、世界の掃除機市場規模は2024年から2030年にかけてCAGRは10.0%を記録し、2030年には264億4,000万米ドルに達すると予測されている。特に、AI活用・自律型掃除機が市場を牽引し、予測期間中に最も早く成長するのはロボット掃除機とのこと。まさにダイソンが出遅れたともいわれている両分野がカギとなるようだ。
ロボット掃除機といえば「ルンバ」だが、開発・販売元のiRobotアマゾンが買収を断念するというニュースが2月に流れた。この買収は、中国勢に押されてシェアを失うルンバを救済する意味合いが強かったのだが、EU規制当局の承認が得られなかった。ダイソン同様にiRobotも従業員の約3割をリストラした。
ちなみに、MoproboのCEOは自社を「AI&ロボティクス」企業としている。クラファンサイトや製品サイトを見る限り、今回の新型掃除機のどのあたりにAIが活用されているのか不明だが、「ゲームモード」機能が該当するかもしれない。
子供でも掃除を楽しめて自発的に家事に参加できるよう、掃除をゲーム仕立てにする機能で、手元の画面にゴミを飲み込む様子が表示されている。
(文・根岸志乃)