この動きは海外でも同様で、たとえばインドネシアでは配車サービス大手Gojekが医療サービス「GoMed」を展開しているほか、インドではTata 1mgとPharmEasyがシェアを競う。
今後の世界経済成長を担う国の一つとして注目されるバングラデシュにおいて、この分野を牽引するのが「MedEasy」というプラットフォームだ。
クリニックや薬局に通うのが困難な人や農村部の住民に、手頃な価格で処方薬などを配送している。
自己負担7割、医療従事者の数は日本の約4分の1
MedEasyを運営するのは、MedEasy Healthcare Limitedだ。同社は2023年9月にシードラウンドで75万ドルを調達した。この資金調達についてスタートアップメディアFuture Startupが報じた記事によると、バングラデシュでは医療費の約7割が自己負担で、そのうちの64%が医薬品に充てられるとのこと。また、日本の外務省公式サイトでも、次のようなデータが確認できる。
バングラデシュの医師や医療スタッフの数は日本に比べるとかなり少なく、2020年のデータで、医師の数は日本が人口10,000人あたり25.7人なのに対しバングラデシュは6.67人、また看護師・助産師では日本が人口10,000人あたり131.5人なのに対してバングラデシュは4.89人ととても少なく、医師の7割強にすぎません。
(中略)
医薬品は市中の薬局で購入できますが、高温多湿の中で保管され、有効期限切れ間近のものも少なくありません。また、同じ薬剤が見つかっても有効成分量が同じものを探すのに苦労することもあります。常用する医薬品・衛生用品などは可能な限り日本を始め先進国において自分で調達してくることをお勧めします。
(世界の医療事情-バングラデシュ 外務省公式サイト)
同国のこうした事情を念頭に置きつつ、MedEasyについて解説したい。
中間業者を省いて医薬品を割引価格で
MedEasyは、中間業者を省いた医薬品調達ネットワークにより低価格化を実現している。ジェネリック医薬品は割引価格で提供し、配送手数料も課していない。競合他社と比較して配送時間を4分の1に短縮し、約8割の顧客維持率を誇るという。ブラウザ版では市販薬や処方薬だけでなく、糖尿病患者向けの検査キットやインスリン注射器、生理用品、避妊具、乳幼児向けのおむつといったカテゴリーも確認できる。
もちろん、専用アプリも用意されている。ブラウザ版、アプリともに投薬管理機能や医師とのオンライン通話機能も用意。家にいながらにして診察から処方薬の入手まで完結できる仕組みだ。
上述のFuture Startup記事によると、2023年9月時点でMedEasyのユーザー数は15万人を超えている。
農村部の慢性疾患患者にもアクセスしやすい医療の実現
MedEasyはまだシードラウンドを経た段階ではあるが、バングラデシュ国内のオンライン医療サービスの中ではすでに最大手になっているという。「Next11」や「Frontier 5」とも呼ばれるほど経済成長を続けるバングラデシュ。しかし、交通インフラが整っていない農村部から都市部へ行くのは今でも一苦労…という事態も珍しくない。
バングラデシュに限ったことではないが、無医村の住民が慢性疾患を発症した場合、処方薬を入手するために多大な費用と時間がかかってしまう。この問題の解決に取り組み、医療格差の是正を目指すのがMedEasyなのだ。
将来的には、バングラデシュに3,000万人いる慢性省患者の医療への接続を合理化するというMedEasy Healthcare社。新興国で医療DXを主導する旗手として、今後も大いに注目すべき企業である。
参照:
MedEasy
Future Startup
外務省
(文・澤田 真一)