・3Dプリンターで成型したバイオアート
そんなDNAに対する意識啓蒙のために活動しているのが、シカゴ美術館附属美術大学に所属するアーティストのHeather Dewey-Hagborg氏だ。3月半ばにテキサスで開催されたSouth by Southwest (SXSW) のイベントで、3Dプリンターを用いて制作した、3Dバイオアートを展示した。
・髪の毛1本の遺伝子情報から
Hagborg氏は、髪の毛1本から一体どれほどの遺伝子情報が読み取れるのかを調査するため、公共の場やトイレ内に落ちていた、“誰かの髪”のサンプルを集めた。集めたサンプルは、ニューヨーク市内にある生物学ラボGenspaceに持ち込み、遺伝子分析をおこなった。
分析によって、個人を特徴づけるDNAの要素を検出し、それをもとにコンピューターを用いて、予測できる人物の顔モデルを制作。できあがったモデルを3Dプリントして、人物の顔を再生成した。
・プライバシー保護のために活動
このバイオアートの作品は、“Stranger Visions”という展示として公開された。もちろん、再生成された人物の顔が、実際に本人の顔とどの程度似ているのかはわからないものの、抜け落ちた髪の毛1本、皮膚や爪の小片に、人物の顔が再現可能なほどの遺伝子情報が込められていることには、驚きを禁じ得ない。
・オープンソースでサイト上に公開
だからこそ、Hagborg氏としては、個人の遺伝子情報は守られなければならず、プライバシー保護のために選択肢が用意されるべきだと考えた。氏が運営するサイトbiononymous.meは、人々の意識啓蒙、および情報公開、交換がされるコミュニティとしての役割を果たすべく設立された。
Hagborg氏は、DNA保護の手段として“Invisible”を提案している。“Invisible”には2つのプランが用意されている。1つめは“Erase”。99.5%の遺伝子情報を除去することができる。2つめは“Replace”で、ある種のDNAノイズによって、遺伝子を隠す方法。漂白剤のような単純な化学物質を使っておこなえるという。これらの方法の手順は、サイトにオープンソースとして公開されている。
これはもうSFの世界の話ではない。法的整備も急がれる問題だろう。
Stranger Visions
biononymous.me