開催国日本の出展企業が最も多く150社超、ついで台湾と韓国がそれぞれ46社、45社だった。韓国のスタートアップMeissaのブースで、グローバルビジネス開発マネージャーのキム・サンヒョン氏に話を伺うことができた。
Meissaは、自社開発の3Dドローンマッピングエンジンにより、建設現場などでデータを収集・分析するプラットフォームを展開するスタートアップ。2017年にソウル大学内で設立され、現在Cラウンドの資金調達を進行中だ。
オフィスから建設現場の状況を把握
――Meissaの事業内容について簡単にお伺いできますか。キム:当社は建設現場向けソリューションを展開しています。工事現場でドローンを飛ばして、そのドローンが自動で現場を撮影します。その撮影した通常の2D画像を、当社のソリューションが自動で分析して「2Dオルソ画像」と「3D点群データ」を生成するというものです。
キム:2Dオルソ画像とは「ひずみがない」、現場と完全に一致する画像です(orthoとはギリシャ語で「正しい、ひずみがない」の意味。orthodoxなどの派生語がある)。点群データは、この画面上のポイント…点々の1つ1つにXYZ座標が入っています。
たとえば、Google Mapを航空写真モードで見ると、どこかひずみがあり、建物の側面が見えていますよね。これを“現場と完全に一致する”2Dオルソ画像に分析したものがこちらになります。
――建物の屋上だけが見える、真上から見た状態になるんですね。
キム:はい。そして、こちらが3D点群データになります。点の1つ1つが、座標情報を持っているものです。
――これは…トライポフォビアの人にはちょっと抵抗があるかもしれないですね(笑)。
キム:(笑)このデータに測定ツールを利用して、長さや体積、面積を測定したりします。
――現場で測量しなくても、いろいろ把握できるということですか。
キム:そうですね、誤差はあっても5センチぐらいなので、結構役に立ちますね。建築現場で1週間に1回といった頻度で撮影するだけで、遠隔地から進捗状況を把握できるんです。作業の遅れや間違いも、現場に行かず本社にいながら確認できるという遠隔モニタリングです。
同社のソリューションの場合、ドローンの扱いに慣れてなくても不安はない。ドローンの飛行経路を、同社のドローン制御専用アプリ「Meissa Flight」によって設定できることで、初心者でも簡単にドローンを操縦できるのだ。この使いやすさが導入先からも好評の様子。また、Meissaのドローン専門家が直接現場で飛行トレーニングも行ってくれるという。
取得したデータを活用するソリューション「Meissa Platform」もまた優れたUXが特長である。数回クリックするだけで、土工量算出や断面図、土工横断選などの測量成果物を正確に確認できる。ドローンが撮影できない屋内のデータは、CCTVカメラや360度カメラとの統合で取得する。最新の現場地図にCAD図面やBIMなどのデータを重ねて、正確な施工管理が可能となる。定期的に取得した現場データはすべてクラウドにアーカイブされる。
日本の建設現場に2024年6月から導入開始予定
――プラットフォームのUIは、すでに日本語に翻訳されているんですね。キム: はい。 韓国語と日本語、英語に対応しています。当社は昨年10月ごろから日本展開を始めまして、日本語でUI/UXを提供しております。マニュアルも日本語で対応しようとしているところです。
韓国のスーパーゼネコン各社にすでに導入いただいているんですが、日本の事業展開は昨年から始めましたので。来月の6月から、実際に大手スーパーゼネコンさんの現場で導入が始まる予定です。現在日本でのパートナーを探しているところで、契約書のやりとりを進めている段階ですね。
Meissaのプラットフォームは、POSCOやヒュンダイ建設など韓国大手建設会社上位10社のうち8社が利用。国内外300か所以上の現場で利用されているという。マッピングソフトウェアには自社開発のMeissaエンジンがあるが、他にPix4DとMetashapeも選択できる互換性が評価されているようだ。
――国によって法律が異なることがハードルにはなりませんか。
キム: そうですね、ドローンの運用については、飛行・飛ばす時の法律が国によって違いますね。 アメリカや東南アジアにも導入していただいてますけれども、それぞれ法律が違います。日本は厳しいほうですね。
――違うのはドローン関連の法律だけで、プラットフォーム自体はユニバーサルに利用可能と。
キム:そうです。実際、日本にもいろんな類似の競合企業があると思うんですが、当社は土木工事に特化したいろんな機能を提供しております。
Meissa Platformの土木工事特化機能としては、区域別管理や工程管理表、DTM/DEMなどがある。DTMとはDigital Terrain Modelの略で、重機や車両、樹木、建物を除いた地表の高さのみを示すデータ。DTMはDEM (Digital Elevation Model)に含まれる。
同社のソリューションがあれば、最新の現場マップを介して、複数のステークホルダーがコミュニケーションを取ることも可能になる。さらに、アプリ「Meissa Guard」ではモバイルGPSが作業員や重機などの位置情報をリアルタイムで追跡し、危険区域に入る際には現場責任者に通知が届くという。こういった機能により、事故を未然に防いで安全な建設現場をサポートする。
建設現場ソリューションをゴルフコース管理にも応用
――今回のブースには、ゴルフ場向けソリューションのポスターもありますが。キム:建設現場で活用したソリューションをゴルフ場でもいかせるんじゃないかということに気づきまして、ゴルフコースマネジメント向けサービス「Meissa Green」を始めました。
キム:広大なゴルフ場を管理するには、労力が必要ですよね。そこでドローンを活用して、省人化・省力化を目指すというものです。ゴルフ場コース管理チームのコミュニケーションも、当社アプリを使って可能ですね。 ゴルフ場の芝の健康状態なども確認できます。
――Meissaはゴルフテックでもあるんですね。日本ではコロナ禍以降ゴルフ人気が続いているのですが、韓国も同じ状況でしょうか?
キム:ええ、韓国でも流行っていまして、じつは私も今レッスンを受けています(笑)。日本のゴルフ場への導入はまだ予定がなく、これからですね。
当社には衛星画像の分析ソリューションもありまして、こちらの事業は子会社であるMeissa Planetが展開しています。衛星画像を分析して、「このあたりに山火事の危険性が高いですよ」といったことを知らせるものです。
――今後、日本で事業を展開するうえでアピールしたいことなどありますか。
キム:そうですね…韓国の建設技術はもともと日本から来たものということもあり、業界の状況が似ています。韓国の建設業界でも今、省人化を目指してDXサービスを利用しているんですね。
ただ、省力化するはずのDXソリューションが原因で、現場の仕事がかえって増える、二度手間が発生することもあるんです。 当社では、現場の方の声をできるだけ技術開発などに反映するために努力しております。
高齢化と人手不足、資材高騰など課題を抱える日本の建設業界。残業規制が厳格化された2024年問題にくわえ、団塊世代が後期高齢者となる2025年問題も待ち受けている。Meissaは競合との差別化に成功し、日本の建築現場でも導入実績を伸ばしていくだろうか。
引用元:
Meissa日本語サイト
Meissaグローバルサイト
Meissa
(取材/文・Techable編集部)