こうした“効率のよさ”で支持を集めている音声コンテンツだが、実際には同じタイトルを紙の本で読むのとオーディオブックで聞くのとでは、前者のほうが圧倒的に速い。音読より黙読のほうが速いことからも想像がつくだろう。
そんな中、ポッドキャストでの学びを高速化するアプリが登場した。スイス発のスタートアップ・Snipdによる、社名と同じ名前のアプリだ。
基本的にポッドキャストを再生するアプリだが、SnipdにはAIで学びを効率化する機能が搭載されている。文字起こしや内容の要約、要約の読み上げ、チャプター分けなど、その守備範囲は広い。
なお文字起こしは、iPhoneに標準搭載のポッドキャストアプリでも使えるが、対応したのは2024年3月。Snipdは、確認できる限りでも2021年9月には実現していた。
金融畑出身のCEOが起業、ハッカソンで注目の的に
Snipdは2021年にKevin Smith氏、Ferdinand Langnickel氏、Mikel Corcuera氏の3人によって共同設立された。CEOのKevin氏は大学院で金融工学を学んだあと、グローバル金融機関のUBSで活躍。その後2016年に金融テクノロジー会社に転職し、2019年にはAIおよびデータ分析部門の責任者に就任した。Snipd設立前から、業務でAIに携わっていたわけだ。
そして2020年に「革新的で使いやすいポッドキャストプレーヤーを作る」というアイディアで『HackZurich 2020』に参加し、見事に優勝を果たした。同イベントはヨーロッパの大規模なハッカソンであり、応募が毎年5500件を超えるという高い知名度を誇る。
AIでポッドキャストによる学びを高速化
Snipdは「インスピレーションや新しい知識を得たい」というユーザーのニーズに注目し、差別化を図っている。先ほど触れた機能のほか、ユーザーの興味・関心に合いそうなポッドキャストを、要約つきで提案してくれる。また、ユーザーは自分にとって重要な箇所を気軽に保存することが可能。「他のことをしながら聞いているときでもここを保存したい」と思ったらアプリ上のボタンをタップするだけで、ユーザーが必要としている箇所をAIが自動的に判別し、要約と文字起こしのテキストなどを保存してくれる。
要約はAIによる読み上げも可能で、この場合、5分程度にまとめてくれるという。また、さっと目を通すことで、耳から入れるよりも速く内容を学べる。
2022年に70万ドルの資金調達に成功
ポッドキャスト市場は拡大を続ける見込みだ。2022年時点での市場規模は185億ドルで、2023年から2030年にかけて年平均27.6%で成長すると予測されている。ポッドキャストでの学びをさらに高速化するSnipdは投資家からも注目を集め、2022年にはプレシードラウンドで目標額を上回る70万ドルの調達に成功している。
拡大が見込まれる市場だけに、競合も増えていくだろう。実際、Googleがポッドキャスト再生アプリの提供を2024年に終了すると発表している。他サービスとの差別化で躍進を続けてきたSnipdの勢いが今後も続くのか、注目したい。
参考・引用元:
Snipd
Pew Research Center
Grand View Research
Apple Podcast for Creators
PitchBook
HackZurich
YouTube Music
(文・里しんご)