背景には、デジタルコンテンツに対する需要の高まりがある。質のいいコンテンツを、スピーディーかつ安く量産する重要性が増しているのだ。
この分野ではGrammarly(2009年創業)やProWritingAid(2012年創業)などが先行してきたが、新たに市場に参入したのがアメリカのスタートアップであるLinguixだ。
CEOの体験から生まれたLinguix
Linguixは2018年にAlex Lashkov氏、Vitaly Kukharenko氏、Eugene Godov氏によって共同設立された。創業のきっかけになったのは、創業者兼プロダクトマーケティングマネージャーを務めるAlex氏の経験だ。同氏は英語のネイティブスピーカーではない。アメリカでコンテンツマーケティングに携わっていたものの、ライティングスキルが障壁になり、契約やチャンスを失っていると感じていたという。
そこでAlex氏はGrammarlyを使い始めたが、自身には合わないと悟ることになる。Grammarlyは文章のミスをなくすのには役立つ一方、間違いがあってもなくても無数の警告を出してくる。同氏が求めていたのは、実際の課題を解決するためのツールだった。
そして、ライティングを通じて課題解決に役立つツールを開発し始めた。まずはノンネイティブ向けの文法チェッカーを考案。文法が明らかに間違っている場合を除いて警告を出さないのが特徴だ。
メール開封率25%向上など結果の出る機能が満載
Linguixの機能は、最低限の文法チェックだけではない。文をわかりやすく、自然で説得力あるものにするための提案をしてくれるほか、よく間違える文法を自動で検知して解説までしてくれるという。メール全体を書き直す機能もある。Linguixで書き直したメールは、開封率が25%向上するとのことだ。
文章作りそのものを任せることも可能だ。たとえば段落を1つ書き終えたら、ボタンを押すだけで続きを書いてくれる。ボタンも「謝罪のメール」「プレスリリース」「ブログの記事」など、実用的なものが揃っている。
さらに、「スタイルガイド」という機能は、誰が書いても統一感を出せるよう支援してくれる。たとえば、「consumers」ではなく「customers」を、「manhours」ではなく「person hours」を使うといったルールを設定できるのだ。
この機能により、組織全体でマナーに則った書き方や、インクルーシブな表現を使うことができ、大きな損失につながりうるミスを防げる。
メールが読まれる可能性を高め、文章づくりの時間を短縮し、無用なトラブルを避ける……Linguixはこのような結果を生む機能が満載なのだ。
ユーザー数31万人突破。ChromeやSafariにも対応
実用的な機能だけでなく、使いやすさもLinguixのポイントだ。同社のYouTube動画を見ると、直感的に操作できることがよくわかる。動画では、文章を打ち込むか、コピーペーストすると文法やスペルのミスを下線で示す様子や、それぞれのミスについて修正案を表示する様子が確認できた。
また改善したい部分を選択すれば、言い換え表現も提案してくれるようだ。
ちなみにLinguixはChromeやFirefox、Safariといったブラウザの拡張機能として使えるほか、Google Workspaceにも対応している。
実用性を重視したLinguixは支持を集め、現在ユーザー数は31万人を超える。Google Chromeストアでの評価も高い。顧客リストにAmazonやIntel、ebayやFacebookなど世界に名だたる企業が名を連ねていることからも、同社に対する信頼性の高さがうかがえる。
Alex氏には、どのような未来が見えているのだろうか。同氏はAIについて「コミュニケーションや文章作成について言えば、人間を置き換えるのではなく、人間を強化するAIツールが台頭するだろう」と述べている。Linguixがその立役者になれるのか、注目したい。
参考・引用元:
Linguix
株式会社グローバルインフォメーション
Crunchbase
Chromeウェブストア
(文・里しんご)