・脳から脳へ、直接コミュニケーション
コンピューターの力を借り、言語の壁を越えて頭に浮かんだ思考やアイデア、指示を直接相手の脳に送る。そんなSFのような技術を、Chantel Prat氏らが所属するワシントン大学のチームが研究しているという。
ある人がコンピューターを通じて、0.8キロメートルほど離れた場所にいる相手の手の動きをコントロールするという研究だ。2013年にこのプロジェクト初のデモンストレーションがおこなわれたが、以降も研究が続けられ、より正確で、現実世界に則した技術になるよう、開発が進められている。
・実験では脳波を測定するヘルメットを使用
実験の仕方はこうだ。まず一方の人が、脳波を検出するセンサーが搭載された“脳波測定ヘルメット”を頭に着用する。脳波はコンピューターによって送信、解析され、もう一方の相手側に電気信号が届けられる。
相手側は、“経頭蓋磁気刺激”のコイルが設置されたスイミングキャップを着用しており、このコイルは、手の動きを統括する脳のエリア付近に設置されている。テストでは、第1の人が手を動かそうと思考すると、脳波が第2の人に送信され、その相手側の手が動くというものだ。
・送信側の思考を、離れた場所にいる受信側がキャッチ
送信側の目の前にはゲームの画面が配置されている。このゲームの内容は、海賊船に包囲された町で、プレイヤーは大砲からの攻撃を防ぐというもの。しかし実験では、ゲームのコントローラーに触れることは許可されておらず、大砲について考えることしかできない。
一方、離れた場所にいる受け手側は、部屋の中で着席しており、右手には大砲を制御できるタッチパッドコントローラーが置かれている。もし、脳から脳へと直接指令を送る実験が成功していたなら、受信側の手が動き、タッチパッドを操作する、という流れだ。
・誤解なく、直接アイデアを伝えることも可能に
すべての送信、受信ペアが必ずしも成功したわけではなく、正確さも25~83%と幅がある。とはいうものの、もし改良が進められ、世間に普及するようになれば、“有能な学者ではあるが、よい先生ではない”ような知識ある人が、直接、生徒の脳に思考やアイデアを送ることで、相手とコミュニケーションをし、ダイレクトに理解してもらうようなことが可能になる。勘違いや誤った解釈が起こる懸念はなくなるはずだ。
まだまだ実用化には時間がかかるだろうが、もし、この夢のある技術が実現したなら、世界は大きく変わることだろう。
University of Washington brain-to-brain interface