だが消費者がEV購入をためらう理由の1つに充電の問題がある。自宅が一軒家で充電施設を設置できるのであれば問題はないだろうが、集合住宅住まいで設置が難しく、近くに手軽に利用できる充電ステーションもないとなると途端にハードルは上がる。そうした問題を解決してくれそうなのが米スタートアップのVoltpost。街灯に充電機能をもたせ、いつでもどこでも充電できる環境を整備するのに貢献する。
シンプル設計
Voltpostのソリューションは、街灯に取り付ける充電設備とアプリで構成される。導入するにはまず、街灯のポスト部分に充電のための装置を取り付ける。ポストの下部が一回り大きくなるほどのサイズで、一見、充電設備には見えない極めてシンプルな設計だ。2〜4つ備わる充電ケーブルは装置の中に収納されており、プラグを引っ張るとケーブルが伸びる。EVの充電口の位置は車によって異なるが、ケーブルの長さは約6メートルあり、充電口に届かないことはまずなさそう。不使用時にケーブルが歩行者の邪魔になるということもない。
充電操作は通常のEV充電や給油と同様、プラグを車の充電口に差し込む。充電器の規格はレベル2となっている。
設置は1時間
街灯を充電インフラにするという斬新な発想に加え、設置が簡単なこともVoltpostの売りの1つだ。地面を掘るなどの大掛かりな作業は不要で、当然電気を引っ張ってくる必要もなく設置作業は1時間ほどで終わる。費用は具体的に明らかにされていないが、開発元によると「かなり低コスト」という。また装置はモジュラー式で、例えば将来、規格を急速充電にアップするということも簡単にできるとしている。
アプリで場所や空きを確認
専用アプリを展開しているのもVoltpostの特徴だ。ユーザーはアプリにあるマップで最寄りの充電場所や空き状況、価格設定を確認できる。予約も可能で、支払いもアプリで済ませられるとのこと。また、街灯の管理者側のためのシステムもあり、どこの街灯が充電に使用されているかをリアルタイムに把握できるだけでなく、使用頻度などのデータも得られる。
道路の街灯そのものは自治体が管理している場合が多いため、おそらく行政がVoltpostの主な顧客になることが予想される。Voltpostはこのほど商業展開を開始したばかりだが、2022〜23年に米ニューヨーク市陸運局の試験プラグラムに参加した実績を持つ。
もちろん、公道に限らず街灯なら取り付け可能であるため、例えば企業の敷地や駐車場にある街灯にも使える。小売店やレジャー施設などが設置して客の利便性を図るということもできそうだ。
街中に無数にある街灯で充電できるとなれば、充電インフラ網は飛躍的に拡大する。Voltpostの今後の展開が注目される。
(文・Mizoguchi)