多くのロボティクス企業が農業市場へ参入する中、イスラエルのスタートアップであるBlueWhite(旧:Blue White Robotics)は、自律走行型トラクターによって「人手のいらない農業」の実現させようとしている。
果樹園を走る無人トラクター
2024年1月、農業機材提供を手掛けるBlueWhiteはInsight Partners主導のシリーズC投資ラウンドで3,900万ドルの資金調達を実現した。この時点でBlueWhiteはアメリカ・カリフォルニア州とワシントン州で15万エーカーの土地で活動し、5万時間以上の稼働実績を重ねている。
農業に活用されているBlueWhiteのソリューションは、ごく普通の農業機材ではない。BlueWhiteは自律走行するトラクターや農業運営のための自律型プラットフォームを展開し、極力マンパワーを投入しない「スマート農業」を提供している。
CEOのベン・アルフィ氏は、イスラエル空軍に25年間在籍していた人物。最先端の軍事技術を目の当たりにしてきたアルフィ氏は、自身の経験から無人トラクターを使用する自律型農業の着想を得て、BlueWhiteを設立するに至ったという。
BlueWhiteが公開している動画では、1台のトラクターが果樹園の合間を縫うように走行している。牽引している車両からは除草剤が散布されている。ところが、トラクターの運転席には誰もいない。
BlueWhiteはこうしたトラクターの運用を、先に書いた3,900万ドルを活用して新たな市場へと拡大するという。
なお、同社は既存のトラクターに自律システムを後付けできるレトロフィットキットを提供している。このキットにより、農家は初期投資の負担を抑え、効率的な生産を目指せるだろう。
農業は「机の上で行う仕事」に?
過去、農業は「キツい」「危険」というイメージで捉えられることもあった。最近はそのイメージが覆りつつあるが、実際、農業は人力で行う重労働である。それをどう軽減させるか、言い換えれば農機具をいかに改良するかが有史以来の人類の課題だろう。農業の効率化は食糧の増産に直結し、今後の人口増加に伴う食糧問題への一手となりえる。たとえば農業という仕事が、これまで以上に「楽」「安全」となれば、食糧問題を解決できるかもしれない。
BlueWhiteの自律型トラクターは、単一のプラットフォームで管理・運行することが可能。つまり近未来の農業は、徹頭徹尾机の上で作物の収穫を見届けるスタイルになる可能性もある。
日本でも高まる自律型農業の需要
現在、農業分野では4つの方向性から近代化を達成しようという試みが世界各地で進められている。1つ目はP2Pレンディングをはじめとした手軽かつ迅速な融資、2つ目は天候や土壌の状態を観測するセンサーとモニタリング用スマホアプリ、3つ目は収穫物が小売店に届くまでのサプライチェーンのスマート化プラットフォーム、4つ目はBlueWhiteが実施しているような自律型農業車両の展開である。
今後はこれらの試みが一体化することは想像に難しくないが、その前に日本でもBlueWhiteの無人トラクターが走行する日が来るのではないか。人口減少の只中にあり、「消滅可能性自治体」という言葉がいよいよ現実味を帯びてきた日本では、こうした自律型農業システムは重宝されるのではないか。
それは同時に、我が国に海外のテクノロジースタートアップが続々上陸するという意味でもある。
参考・引用元:BlueWhite
(文・澤田 真一)