インドネシアの医療テックスタートアップ、Klinik Pintarは小規模クリニックの“チェーン店化”と同時に、既存のクリニックのDX革命を推し進める仕組みを開発している。
クリニックの「デジタル改革」
日本でもそうだが、インドネシア市民の「かかりつけ医」は多くの場合地元の開業医である。「内科はA先生、整形外科はB先生、歯科はC先生のクリニック」という具合に、現地市民は大病を患っていない限り、都市部の中心地にある総合病院よりも身近なクリニックを利用することが多い。しかし、そのクリニックは個人経営の食堂や小売店舗と同様、DX化の波の中で取り残されている現状がある。
クリニックの来院予約の管理や費用のキャッシュレス対応もそうだが、特に重要なのは電子カルテだろう。カルテが電子化されていれば、クリニックから別のクリニックへそれを送信することもできるはずだ。紙のカルテをなくすことで、それを保管するストレージを空けることができるという物理的なメリットもある。
こうした電子カルテのほか、クリニックのインターネット予約や決済、医薬品の在庫管理などの機能を統合したプラットフォームをKlinik Pintarは提供している。
日本の企業が医薬品情報検索システムを提供
2023年12月、日本のソフトウェア開発企業インフォコムがKlinik Pintarとの資本業務提携を発表した。インフォコムとKlinik Pintarの連携の軸になるのは、インフォコムの医薬品情報検索システム「RxPert」である。RxPertは東南アジア各国で承認済みの医薬品情報を提供するシステムで、電子カルテをはじめとする医療システムと連携できる。
医薬品とは、日々研究されているものだ。その情報は度々更新される。たとえば、インドネシア政府保健当局が来月初日からAという薬剤を国民皆保険制度の対象にしたとする。しかし、小規模のクリニックにその情報が浸透するには多少なりの時間がかかる。いまだ業務のオンライン化を実現していないクリニックは尚更だ。
今回の業務提携でKlinik PintarのプラットフォームとRxPertを連携することで、医療従事者が最新の医薬品情報へアクセスしやすくなり、個々の患者にとってより質の高い医療を施すことが可能になるのだ。
「医療の平等」は達成されるのか
なお、今回の業務提携はシンガポールのAltara Venturesが主導したシリーズA1投資ラウンドの中での出来事である。このラウンドで、Klinik Pintarは500万ドルの資金調達に成功している。2023年12月に発表されたTech in Asiaの報道によると、Klinik Pintarの創業者ハリヤ・ビモ氏は「運営する診療所を現在の23から、2025年までには100にする」と語る。そして、同社提供のSaaSモデル、物理モデルの両方を接続できるハイブリッドモデルを開発中であるという。
Klinik Pintarのプラットフォームが、世界最大の島嶼国家の医療問題を解決する日が来るのだろうか。その可能性は十分にあるだろう。
参考・引用元:
Klinik Pintar
インフォコム
Tech in Asia
(文・澤田 真一)