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インドネシアChickin、養鶏農家向けIoTデバイス提供でたんぱく質供給に貢献

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インドネシアでは鶏肉が広く消費されている。

食肉は、今後起こり得る食料問題の解決に必要な切り札だ。人間にとって動物性たんぱく質は欠かせないものだが、政府の意向があるからといってすぐさま食肉を増産できるわけではない。そこには環境整備の課題がある。

ウクライナ侵攻以降、世界各国の農家は飼料と光熱費の高騰に苦しめられている。そんな中、インドネシアではChickinというスタートアップが養鶏農家向けの先鋭的なIoTデバイスを提供している。

ケージ内の環境をスマホアプリで管理

Image Credits:Chickin

ブロイラー養鶏で重要なのは温度と湿度である。

鶏も生き物であるため、密集した環境に長期間置かれると最悪病気を発症する。そして1羽の発症が、同じケージにいる全羽の殺処分につながることも。これを防ぎ、なおかつ給餌のタイミングを一定化するには24時間体制の温度・湿度管理が求められる。

しかし、冒頭に書いた通りウクライナ侵攻以来の原料費高騰がインドネシアの養鶏事業者にも襲いかかっている。飼料、電気、自家発電に必要なガソリンなど、どれも血の1滴に等しいほどに価格が高くなっている。

そこでChickinは、独自のIoTモニタリングシステムを開発した。

同システムでは、温度と湿度を感知するセンサーでケージ内の環境を把握し、温度調整ファンの強弱を自動調整することが可能。ケージの状況は、スマートフォンを介してリアルタイムで監視できる。

これは言い方を変えれば、「ファンを無駄のない強さに回す」ということである。効率化は電気代の節約に直結し、養鶏事業者が原料費高騰を乗り切るカギとなるだろう。

この記事の執筆時点(2024年4月)で、ChickinのIoTモニタリングシステムを含む統合ソリューションを採用しているブリーダーは9,800を越える。3,100万羽を超える鶏が、このソリューションの下で飼育されているのだ。

加工流通部門も完備

Image Credits:Chickin

上記はChickinのIoT養鶏部門「Smart Farm」の説明だが、その他にもChickinは加工流通部門「Fresh」を展開している。

養鶏事業者から入荷した鶏を食肉にする工場を構え、そこからさらに飲食店へ納入する。ここで加工される鶏肉は国家認証であるNKV(家畜管理番号)が与えられている上、イスラム教の教義に則った手順(ハラル)が実施されている。

食肉の納入先のラインナップには、国内で人気の飲食チェーン店が名を連ねている。

Image Credits:Chickin

なぜ、業務用IoT機器を提供する企業が商品の流通まで手掛けているのかというと、やはり中間業者問題があるからだろう。

複数の中間業者がマージンを搾取する仕組みは、生産者の報酬を目減りさせる上に小売価格を吊り上げる。さらに、中間業者から中間業者へ渡っていくうちに具体的な生産地が曖昧になってしまう。

サプライチェーンを単純化・効率化することで生産者の顔が確認できる食肉を流通させる。Chickinはインドネシアの養鶏業の技術的進化を後押ししている。

「食料問題」に関するインドネシア人の意識

ChickinがEast Ventures主導のシードラウンドで資金を調達したのは、2022年7月(調達額は非公開)。

この時期は、ウクライナ侵攻の影響が怒涛の勢いでインドネシアへ押し寄せていた頃である。

まず、ウクライナ産のヒマワリ油の供給が滞り、ヨーロッパ諸国全体の食卓に悪影響をもたらした。その代わりとしてインドネシア産パーム油の巨大な需要が発生したが、これがパーム油の価格高騰をもたらした。インドネシアの料理は食用油を使うものが多い。そのため、食用油の価格の推移は国民の関心事である。

食用油と同時に、穀物由来の飼料の価格も跳ね上がる。これは現地に暮らす生活者にとって近い将来起こり得る食料危機を自分事として考える契機ともなり、この話題に関して「Tidak apa-apa(心配ない)」と言えなくなってしまった。

この瞬間から、それまで若者から“遅れた分野”とも見られていた農業・漁業分野にようやく関心の目が向けられたという節もある。こうした機運から勢いが増しているインドネシア発のアグリテックスタートアップは、数年後には世界の食料問題の解決を担う重要なセクターに成長しているかもしれない。

参考・引用元:Chickin

(文・澤田 真一)

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