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インド版PayPal?ユニコーンRazorpay、シンガポール政府系投資ファンドから資金調達

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インドで現金主義が少しずつ弱まり、オンライン決済が広がりを見せている。インド準備銀行によると、同国の現金流通量は減少傾向にあるという。一方、2022年度のオンライン決済の件数は1000億件を超えた(参考)。この数字は、2018年度の実に5倍近くに当たる。

この状況下で大躍進を遂げたオンライン決済プラットフォームがRazorpayだ。運営会社であるRazorpay Software Private Limited(以下「Razorpay」)は2014年に創業し、2020年にユニコーン企業の仲間入りを果たした。さらに、2022年にはForbes誌の「プライベートクラウド企業100社」にも選出。インド企業で選ばれたのはRazorpayだけだった。

同社はクレジットカードやデビットカードはもちろん、電子マネーやネットバンキング、さらには政府が主導する電子決済システム(UPI)などでの支払いを仲介する。インド版PayPalと言えばイメージしやすいが、税金の支払いや無担保ローンなど、ユニークなサービスも見逃せない。

メディアの注目を集める共同創業者たち

Razorpayには2人の共同創業者がいる。CEOのHarshil Mathur氏と、マネージングディレクターのShashank Kumar氏だ。

Harshil Mathur氏 Image Credit:Razorpay

Harshil氏は大学で機械工学を専攻していたが、プログラマーとしての顔も持っている。学生時代に書いたプログラムの中には、Razorpayで使われているものもあるという。大学卒業後は、フルタイムのエンジニアとして働いていた。

Shashank Kumar氏 Image Credit:Razorpay

Shashank氏もHarshil氏と同じ大学の出身。Microsoftでエンジニアとしてソフトウェア開発に携わった人物だ。

2人はインドのオンライン決済に変革をもたらすべく起業を決意。「オンライン決済をシンプルに」することをミッションに掲げてRazorpayを設立した。

Image Credit:Razorpay

同社の公式サイトは、インドにおけるオンライン決済の問題点として「規制の複雑さ」「利害関係者の多さ」などを挙げつつ、「ユーザーがオンライン決済に慣れていない」点も指摘。Razorpayのサービスを見ていると、ユーザーにフォーカスし、使いやすさを徹底的に追求しているように思える。

ユーザー重視で順調に成長するRazorpayを率いる2人は、メディアからの注目度も高い。Forbes誌(インド版)の「世界を変える30歳未満の30人」(2017年)、Fortune誌(同)の「世界を変える40歳未満の40人」(2019年)、Entrepreneur誌(同)の「世界を変える35歳未満の35人」(2021年)にも選ばれた。

「おもてなし精神」でシンプルな決済を実現

Razorpay支払いデモ画面

Razorpay公式サイトの支払いのデモを試してみたところ、シンプルそのもので、オンライン決済が初めてでも、直感的に支払いを済ませられそうだった。

こうしたシンプルな仕組みの裏では、さまざまな工夫がなされている。たとえば支払い画面の色は、それぞれの店のイメージカラーが採用されるという。エンドユーザーに違和感を抱かせないためだ。

また、一見すると「問題」とは思えない「ちょっとした不便」にも踏み込んでいる。たとえば、クレジットカード番号をRazorpayに登録しておけば、店が変わっても再度入力しなくても済む。通常は電子マネーを使う際に各電子マネーのサイトやアプリへのログインが求められるが、Razorpayならその必要もない。

店側がRazorpayの支払い画面を導入する場合も、特別なプログラミングの知識は必要ない。テンプレートを選び、必要事項を記入していくだけだ。

Razorpayはこのような「おもてなし精神」で、ミッションである「オンライン決済をシンプルに」を実現している。

PayPalとの提携・マレーシア企業の買収

Razorpayはインドだけでなく、世界も見据えている。2020年12月にはPayPalと提携して国際送金を取り扱い始めたほか、2022年2月にはマレーシアのフィンテック企業であるCurlecの買収を発表。2023年7月に「Curlec by Razorpay」の立ち上げを発表し、マレーシアでも決済の仲介を担い始めた。

自国で培ったきめ細かいノウハウは、マレーシアでも大いに活用できるだろう。シンプルな決済より複雑な決済を好む人はいないからだ。

シンガポール政府系投資ファンドから資金を調達

Razorpayは2021年4月、シリーズEラウンドで1億6000万ドルを調達し、評価額が30億ドルに達した。この資金調達を主導したのは、Sequoia CapitalとGIC(旧:シンガポール政府投資公社)だった。

一国の政府がRazorpayの今後の成長に期待しているとも解釈できるわけで、GICからの資金調達の意義は大きいだろう。

決済金額の拡大が飛躍のカギか

ここまで順調すぎるほどの成長を遂げてきたRazorpay。今後、インドでオンライン決済の金額が拡大すれば、同社もさらに飛躍できるかもしれない。

冒頭で書いたとおり、2022年度のオンライン決済の件数は2018年度比で5倍近くになったが、金額は1.3倍程度の伸びに留まったからだ(参考)。少額の決済に好んで使われているのだろう。

インド全体のオンライン決済金額が拡大すれば、Razorpayの収益にも寄与することは間違いない。Razorpayは加盟店の売上に応じて手数料を得ているからだ。とはいえ、Razorpayはローンの取り扱いや海外展開など、収益源の多角化を進めている。次の一手にも注目したい。

参考・引用元:Razorpay

(文・サト

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