フランス発のスマートタグ「Stick nTag」は、廃棄されるはずだった革素材(アップサイクルレザー)とNFC*をかけ合わせた製品。ユーザーはスマートフォンをStick nTagにかざすだけでルーティンタスクを自動化できる。さらに環境負担の軽減に貢献できるのも魅力だ。
NFC*…Near Field Communication(近距離無線通信)の略。対象のデバイスにかざすだけで、簡単にデータの送受信ができる技術
アプリで日常タスクを簡単にプログラミング
Stick nTagは、パリにあるアトリエで熟練した職人によって作られたNFCタグ。素材にはアップサイクルレザーを採用し、直径25mmのNFCチップと888バイトのメモリを組み込んでいる。背面にはマイクロサクションテープが付いており、あらゆる表面に貼り付けられる。アプリを通じて、いわゆる“ルーティン化”している日常作業を簡単にプログラミングできるため、毎日の貴重な時間を節約できる。
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動画では、ワークデスクに貼り付けたStick nTagにスマートフォンをかざして自動でアジェンダを検出したり、テーブルに貼り付けたStick nTagにスマートフォンをかざしてWi-Fiに接続したり…といった様子が確認できた。
パリの研究所の学生グループが開発
Stick nTagを開発したのは、パリの未来技術研究所でクリエイティブ・テクノロジーを学ぶ3人の学生グループだ。エンジニアでありデザイナーである彼らは、革新的なプロジェクトや製品を通して人類の問題を解決し、技術の持続可能性を確保しながら人々の生活を簡素化し、向上させることを目指している。以前より彼らは、高級品産業から発生する革廃棄物量の多さを懸念していたという。
推定によると、ジャケットやバッグなどの商品の製造において、原皮の約20〜30%が廃棄されているとのこと。1キログラムあたり20〜40キログラムのCO2を排出するという皮革生産による環境への影響を考慮し、彼らは革の“有意義な目的”を模索するようになったそうだ。
こうした持続可能性へのコミットメントと、クリエイティブな技術者として身近でローテクな革新技術を通じて人々の生活をより快適にしたいという願望。この2つのモチベーション結びつきが、革をスタイリッシュで環境に優しく、実用性の高い製品に再利用するという画期的なアイデアにつながった。
世界のNFC市場は2026年までに398億ドルに達する見込み
2021年4月にREPORTOCEANが発行したレポートによると、世界のNFC市場は2020年に175億米ドルに達すると推定され、さらに2026年までに398億米ドルに達すると予測されている。NFCはおサイフ機能付きスマートフォンや交通系ICカード、クレジットカード、鍵や財布などの忘れ物防止タグなど、さまざまなサービスに利用されている。
2022年11月には、サンワサプライがNFCを小さなシールに埋め込んだ「NFCタグ」を発売。あらかじめNFCタグにアプリの起動、Webページの読み込み、無線LANやBluetoothのON/OFFなどの動作を登録しておけば、スマートフォンをかざすだけで登録された動作を実行できるというものだ。
このようなNFCを活用したサービスは増えつつあるが、「誰もが日常的に利用している身近なツール」と呼ぶにはあと一歩足りない印象だ。Stick nTag開発グループも、NFCがすでに多くのスマートフォンに組み込まれているにもかかわらず、十分に活用されていない点、そしてNFCの“未開拓の可能性”に気付き研究を進めたという。
Stick nTagはNFCの可能性を切り開く存在となりえるのだろうか。今後もStick nTagの活躍や、同製品の反響に注目していきたい。
参考・引用元:Kickstarter
(文・Haruka Isobe)