イスラエルでサイバーセキュリティ技術が飛躍的に進化した背景には、軍事用システムを守るためにセキュリティを強化してきた歴史がある。同国では高校卒業後にあたる18歳から男女それぞれ2年8か月および2年の兵役義務があり、サイバーセキュリティのスタートアップ創業者は軍でサイバー防衛を担う8200部隊出身の男性であることがほとんどだ。
創業チームは8200部隊出身という定番パターンのスタートアップ
2021年創業の「Sentra」も、まさにそのパターンを踏襲したスタートアップだ。8200部隊出身のAsaf Kochan氏、Yoav Regev氏、Yair Cohen氏を中心とする、同分野での経験が豊富な面々によって設立された。Kochan氏は機械学習ベースのデバイスマッピング技術の新興企業「Crosswise」(オラクルに売却)の共同設立者としても知られる人物。同じくCrosswiseの共同設立者だったRon Reiter氏もSentra共同創業者の一角である。Yair Cohen氏はDatadog、Microsoft Azure Protection で上級製品管理職を務めた経歴がある。国家機関の機密データの保護を専門に行うプラットフォームを提供し、近年増え続けている国家の重要機密情報を狙ったサイバー攻撃対策に特化したスタートアップとして注目を集めているSentra。顧客の業種は多岐にわたり、世界で最も包括的かつ広範に採用されているクラウドであるAWSと、マイクロソフトなどのフォーチュン500企業、イスラエル国防軍などの政府機関や金融大手にサービスを提供している。
同社が提供する「データ・セキュリティー・プラットフォーム・マネジメント(DSPM)」は、国家機関や企業が抱えるセキュリティリスクを先回りして発見するもの。高度なアルゴリズムと機械学習を用いて、リアルタイムでサイバー攻撃の脅威を検知し無力化する。
Sentraの特筆すべき点は日々進化する新しい脅威への適応能力だ。クラウド・データの動きを理解し、機密データの発見と分類、データセキュリティコントロールの継続的な分析を行い、データの脆弱性へのアラートも自動化されている。常時アップデートされることにより、国家機関などのサイバーセキュリティチームは現実世界の攻撃シナリオをシミュレーション・訓練可能となっている。
今後も成長が続くクラウドセキュリティ市場
2021年の創業以来、順調な成長を続けているSentra。2022年12月には、サイバーセキュリティ分野のスタートアップ支援プログラム「CyberUp」第一期の参加企業7社に厳正な審査を経て選出された。同プログラムはセキュリティの老舗であるイスラエル企業チェック・ポイント社が、同国のサイバーセキュリティスタートアップ企業ネットワークを支援するために発足させたもの。第一期参加スタートアップ7社※1は、チェック・ポイントの既存顧客にとって価値あるソリューションを有する企業のみが選ばれ、成熟してすでに展開可能な状態にあることが評価された。また、Sentraのサイバーセキュリティに対する画期的なアプローチが投資家から関心を集め、2024年1月にはシリーズAラウンドで3000万ドル(約39億円)を調達。これまでの資金調達総額はわずか3年間で5300万ドル(約79億円)となった。
サイバーセキュリティの重要性に対する認識は世界的に高まっており、クラウドセキュリティ市場に対する需要は今後も拡大継続が予想される。同社はサイバーセキュリティ技術の最先端に留まるために、研究開発への投資を続ける計画としている。
ちなみに、Sentraは参加しないが2月28日にはSentraイスラエル サイバーセキュリティ イノベーション ウェビナーが開催され、7~8社がピッチ登壇を行う予定となっている。
引用元:Sentra
(文・HAYASAKA)
※:他の6企業はCyberpion(現Ionix) 、Grip Security 、Infinipoint 、Reflectiz 、Suridata、Zero Networks