2019年には1790万人がCVDにより死亡したと推定されており、これは全世界の死亡者数の32%に相当するという。そこで昨今は予防措置として、CVD患者に心臓の健康状態を定期的に監視する「遠隔患者モニタリング(RPM)デバイス」を提供するといった施策がとられている。
しかし、デバイスの使用方法を全員の患者が把握できているとは限らない。患者がデバイスの設定を間違えて、測定値が誤って表示されることもあるようだ。そのため、診療所や病院への通院や在宅看護師の訪問が必要になることも。
イスラエルの医療テック企業Biobeatは、遠隔で患者の血圧や心拍数などの健康状態を監視できる腕時計型モニターを提供している。
イスラエル発・医療AIスタートアップBiobeat
2016年に設立されたBiobeatは、イスラエル発の医療AIスタートアップ。光電脈波ベースセンサーを活用して血圧、脈拍数、呼吸数、血中酸素飽和度、体温、脳卒中量、心拍出量などの“健康パラメーター”を正確に測定する「遠隔患者モニタリング(RPM)デバイス」を提供している。創業者兼CEOのArik Ben Ishay氏は、2014年のイスラエル・ガザ紛争中、イスラエル国防軍の現役戦闘部隊で救急救命士として勤務した経歴を持つ。Arik氏はある激しい衝突の直後に、数十人の負傷兵のバイタルサインを監視するのに苦労した経験をもとに、ウェアラブルで直感的なRPMデバイスのアイデアを思いついたという。
血圧や脈拍などを監視する「手首モニター」
BiobeatのRPMデバイスは、ヘルスAIや機械学習テクノロジーを使用して、患者ケアに関する実用的な洞察を提供する製品で、「手首モニター」と「胸部モニター」が含まれる。このうちの手首モニターは、患者の血圧をリアルタイムで監視するだけでなく健康状態を監視し、健康状態の悪化の可能性を警告するといった機能を備えている。
バッテリーは最大5日間持続。Biobeat アプリとペアリングしてデータをクラウドにアップロードできる。患者の情報をリアルタイムで入手可能なため、病院側は投薬、ライフスタイル、さらには緊急サービスの必要性などの変更をすぐに行える。
一方、患者は診療所や病院での血圧測定を心配することなく、日常生活を続けることが可能だ。
感染防止のための“使い捨て”「胸部モニター」
胸部モニターは病気の伝染を避けるため、一人の患者が使用できるように設計されている“使い捨て”のデバイス。ステッカーとセンサーカプセルが分離されているため、取り外しと交換が簡単だ。胸部モニターは入院患者の胸部に取り付けられ、血圧、血液飽和度、心拍数、呼吸数、体温などの心肺バイタルサイン測定値をリアルタイムで表示。バイタルサインの変化がしきい値を下回ったり上回ったりした場合は、アラートと早期警告スコアを送信する。
すべての測定値と傾向をBiobeat Web プラットフォームを通じて表示するため、病院側は1つの直感的なプラットフォームを通じて無制限の数の患者を管理することが可能に。複数の有線デバイスの使用、バイタルサインの頻繁なスポットチェック、医療スタッフによる手動データ入力が不要になり、人的ミス・時間コストの削減につながる。一方、患者は邪魔されることなく自由に動き回ったり休んだりすることができ、快適な使い心地を体験できる。
2022年にFDA認可を取得
2022年3月、Biobeatは同社のRPMデバイスが米国食品医薬品局(FDA)の認可を取得したと発表した。同社によると光電脈波計のみによるカフレス血圧モニタリングに関して、FDAの認可を受けた製品はこれが初とのこと。BioBeatのデバイスを従来の外来血圧モニタリング(ABPM)と比較したところ、同社のデバイスはワークフローを高速化し、完了までの平均時間を74%短縮したという。この効率性により、病院側の直接の人件費が年間で大幅に削減された。
患者と医療スタッフの満足度を高める可能性を秘めたBioBeatのデバイスは、地域医療にも有望な進歩をもたらすだろう。
参考・引用元:Biobeat 公式サイト
(文・Techable編集部)