アナログな「手書き」とデジタルテクノロジーを融合させたXNoteは、スマートペンと専用のノート、モバイルアプリから構成されている。専用ノートのページは特殊なパターン化表面となっており、その表面上での動きを検知するセンサーがペンに搭載されている。ノートに手で書き込めばスマートペンが人の筆跡の繊細なニュアンスまで感知し、XNoteアプリを通してリアルタイムでデジタルデバイス上に忠実に再現するという仕組みだ。
ChatGPT搭載でノートが有能な秘書やアシスタントに
手書き文字を瞬時にデータ化する技術自体は、特に真新しいものではない。XNoteを既存の類似製品から際立たせる最大の特徴は、ChatGPTを搭載した点だろう。ChatGPTが手書きのメモを認識して自動で分類・タグを生成、要約してくれるので、後からページをめくって探したり、手動でリマインダーを設定する必要もない。宿題の提出期限やミーティングの予定を書き込めば、AIが自動でタスクやカレンダーに登録、リマインダーを設定してくれる。
また、相手はChatGPTなので「今日のミーティングのポイントをまとめておいて」や「おすすめされた本のタイトル何だったっけ?」、「先週の講義の内容から復習用に小テストを作成して」のようにチャットでリクエストすれば、即座に応えてくれるのもユニークだ。
自分がとったメモをただ眺めるのではなく、インタラクトすることでアイデアのブラッシュアップも可能となる。すっかり忘れていた過去のなぐり書きからダイヤの原石が見つかる可能性もあるかもしれない。
クラファン成功もスタートアップの持続可能性がカギ
XNoteの開発元は、IndiegogoのプロジェクトページではKodion Innovation社となっている。ソフトウェアイノベーション、進化を続ける人工知能、クラウドソリューション、ユーザーフレンドリーデザインなど、多岐にわたる分野の専門家から成るチームが開発を手掛けたとのこと。クラファン成功後の流れとしては、2024年1月に量産開始、4月に発送が予定されている。2月2日には製造ラインを写した画像つきで開発元から状況が報告されたところを見ると、スケジュール通りに進んでいるようだ。
ただ、XNoteの製品サイトはあるが同社のコーポレートウェブサイトがなく、企業の詳細な情報は残念ながら確認できない。クラファン支援者からの質問への回答にあった署名によると、創設者兼CEOはOmer Celikという人物らしい。また、社名も「Kodion Innovation」なのか「XNote」なのか、未定のようでもある。ちなみに、下のプロモーション動画制作にあたって出演俳優を募集した際にはXNote社を名乗っていた。XNoteのスマートペンは基本的にはボールペン。つまり、いずれインクが切れるし(標準セットにはインクリフィルが5個含まれ、1~2年はもつとのこと)、専用ノートも補充が必要だ。こうした消耗品の供給と専用アプリのサービス提供には企業の長期存続が不可欠なため、「ライフタイムサポートをうたっているが、御社の事業はどれだけ持続可能なのか」と率直な疑問をぶつけた支援者もいる。
優れた製品でクラウドファンディングを華々しく成功させながらも、製品発送から2年と経たずに消えていったスタートアップは数多い。Kodion Innovationはそうした事例の一つにならず、今後も成長を続けることを期待する支援者は多いはずだ。アイデアと開発力の次には、ビジネスを継続する力が問われるなか、コーポレートサイト開設はもちろん、開発者や創業者の顔が見える広報活動もぜひ期待したいところである。
引用元:Indiegogo
(文・根岸志乃)