同レポートでは、日本企業のDXが進まなかった場合に予想される2025年以降の経済損失は最大で毎年12兆円にものぼると予測している。
既存システムの維持や保守に資金や人材を割かれることで、新たなIT投資にリソースを活用することができないといったリソース不足の課題も指摘。日本のIT人材不足が深刻化するなか、グローバル競争が激化する環境や技術の多様化なども相まって、昨今は外国人エンジニア採用の需要が高まっている。
エンジニアが知りたい“リアルな情報”を読み解く
英語を話すエンジニア人材に特化した求人サイトを運営するTokyoDevは、2023年10月13日~11月6日の期間、日本在住のソフトウェア開発者を対象にアンケートを実施。さまざまな国籍の日本在住エンジニアの働き方や給与、技術に関する調査を行い、713名からの回答結果をまとめて公表した。同調査は「エンジニアが知りたいリアルな情報」として、すでに日本で働くエンジニアだけではなく日本で働きたいと希望する海外在住のエンジニアからも好評だという。
海外から、高い技術を持つエンジニアを採用したいと考える企業にとって、雇用条件などを改めて考えるヒントとなるかもしれない。ここでは、アンケートの一部を抜粋して紹介する。
年収中央値は850万円に減少、男女の給与差も
まず年収の中央値については、昨年の950万円から100万円減少して850万円となった。この結果には、回答者の経験年数が昨年の回答者に比べ短いことが影響している可能性も指摘。一方、外資系企業の日本支社で働いている回答者の年収中央値は、日本に本社を置く法人で働くエンジニアよりも73%高い結果となった。
男女比でみると、女性エンジニアの給与が男性エンジニアよりも低い傾向は継続。
なお回答者のソフトウェア開発経験年数は、男性エンジニアの経験年数の中央値が8年に対し、女性は2年。全体の平均は5年で、昨年よりも2年短い傾向だという。
男性に比べ女性のほうが平均経験年数が短いことが年収の差に反映されたという見方もできるが、同程度の経験年数で比較した場合においても年収における男女差は残るという。
日本でエンジニアを目指す外国籍の女性も
同調査では、日本でエンジニアへのキャリアチェンジを考える外国籍の女性が目立つことにも触れている。プログラミングのブートキャンプでは、男性よりも女性の参加者が目立つといい、男性回答者の11.6%に対し、女性回答者は32.4%が参加している。リモートワークは減少傾向か
エンジニアの働き方にも着目したい。1日の勤務時間についての質問では、全体のうち79.4%の回答者が「平均的な1日の勤務時間」は8時間以下と回答。リモートワークは減少傾向にあるようだ。昨年は回答者の70%が完全リモートワークだったのに対し、今年は59%となっている。回答者のうち9%が完全出社勤務であると答え、昨年(4%)に比べ増加した。
転職時の給与交渉は日本法人のほうが難しい?
回答者のうち転職を希望している者は、昨年より11%増加し19%という結果に。同調査では、非雇用のエンジニアが0.5%増加していることも指摘し、これには米テック企業の大規模な人員削減の影響があるともみている。
転職時の給与交渉については、外資系企業より日本法人のほうが難しい傾向のようだ。外資系企業に勤務するエンジニアの36.6%、日本法人に勤務するエンジニアの27.7%が給与交渉に成功しているという。
ちなみに使用するプログラミング言語は、TypeScriptが昨年の33%から42%に急増。JavaScriptに次いで2位となった。
外国人エンジニア採用で「2025年の崖」回避なるか
IT人材不足を解決する一つの策として外国人エンジニアの受け入れを検討する場合、雇用環境を見直すことも必要だろう。法務省では「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」を設けるなど、国として積極的にサポートする動きもある。IT領域に限らず、外国籍の人材を採用することにより、社内で新たな価値観や文化の相互理解が生まれ、これまでになかった事業アイデアの創出につながることもあるかもしれない。「2025年の崖」という社会問題に向き合い、各企業をはじめ国全体の国際競争力を上げていくためには、一歩踏み込んで人材採用の視野を広げることも有効な策となり得るだろう。
参考元:
PR TIMES
2023 TokyoDev Developer Survey
経済産業省DXレポート
(文・Tsunoda Maiko)