2021年度のスタートアップへの投資総額は$27.6 billion(約4兆円)を記録している。しかし、2022年度は世界的なインフレと戦争などの地政学リスクから、投資総額は$15.5 billion (約2.2兆円)と半滅した。
そんなイスラエルに研究拠点を持つ、米国のユニコーンVeevが、経営破綻に陥り廃業に向かう方針でいることを11月に発表した。順調に事業成長を遂げた新興企業に何が起きたのか、簡単にまとめた。
廃業に追い込まれたVeev。一体何が起きたのか
Veevは、2008年にAmit Haller氏が米国にて設立した建設テック企業。ハイテクノロジーとオートメンション機能を駆使した新しいタイプの建築手法を編み出したスタートアップだ。建物の主軸となる壁・床・屋根などを、あらかじめ製造したうえでパズルや模型のように組み立てるユニット方式を使う。モジュール建設・パネル化手法とも呼ばれる技術だ。
精密に無駄なく計算されたハイテク設計と、高度なデジタルオペレーションがVeevの特徴。人員や経験を従来ほど必要とせず、ごく短期間にてIoTで統合されたデジタル住宅が完成する。設立当初は米国の住宅不足が相まって、カリフォルニア州に拠点を設立し、順調なスタートを切った。
資金面では、2022年に$400 million (約6兆円)のシリーズDの資金調達ラウンドを獲得。ユニコーンに昇格し、2023年には$600million(約8.7兆円)規模のビジネスにVeevは成長していた。
しかし2023年11月26日、資金調達イニシアティブの急激なキャンセルが相次ぎ、経営破綻に陥ったことが発表された。翌日27日には、米メディアでVeevが廃業に向かう方針であることが報じられている。
イスラエル拠点は完全に廃業、米国拠点に関しては、Veevの事業は売却され、かろうじて同社が培った建築技術は誰かに受け継がれていく予定だ。
2024年、スタートアップは数々の社会課題にどう挑む
ここ数年は、インフレに金利上昇、気候変動問題、エネルギー高に資源高騰、さらに戦争と世界は数多くの難題を抱えている。ネガティブなニュースが相次ぐなか、コスト削減に急ぐ大手も少なくない。そこで、真っ先にダメージを受けるのが新興国企業やスタートアップ企業だ。なぜなら、それらの企業は資本規模がもともと小さいうえに、他からの投資や融資に依存するケースが多いからである。
2024年以降も、先行きの不透明感が続くようであれば、有望なスタートアップでも、Veevのように厳しい状況に陥るケースが出てきてもおかしくはないだろう。将来が約束されたかに見えたイスラエルのユニコーンでも、一寸先は何があるかわからないということだ。
参考元・引用元:
Start-Up Nation Central
CTech
The Times of Israel
(文・MI001YOU)