同実験では、東南アジアの医療現場におけるグラム染色*1をAIとロボティクスでアップデートした装置の導入とその精度検証を実施する。
グラム染色*1…細胞壁の構造の違いによって細菌を染め分ける方法(一般社団法人 福岡市医師会「えんしんぶんり」より引用)
“抗菌薬が効かない菌”が世界的な医療課題に
近年、抗菌薬の不適正利用により発生する“抗菌薬が効かない菌(薬剤耐性菌)”が世界的に増加中。薬剤耐性菌に感染すると抗菌薬が効く菌による感染症と比べて治療がしにくく、重症化率・死亡率が上がると言われており、世界レベルで取り組むべき医療課題とされている。薬剤耐性菌は東南アジアでも深刻な問題だ。イギリスからのレポートでは2050年には世界で1,000万人が薬剤耐性菌によって命を落とすこと、また約半数の4,730,000人はアジアで亡くなることが予想されている。
その原因の一つとして、微生物検査技師の不足により適切な精度と数の微生物検査が行われていないことが考えられている。
マヒドン大学でAI・ロボティクス活用の実験を実施
世界的な医療課題にアプローチするため、大阪大学発スタートアップとして2020年に創業したGramEyeは、微生物検査の一つであるグラム染色をAIでアップデートし、抗菌薬の適正利用を目指すAI・ロボティクスソリューションを開発している。グラム染色は最も一般的に用いられる細菌検査とされているが、実施には多くの手間と知識、経験が必要になるため「大規模な医療機関でも夜間休日には実施されていない」「画像として保管されず検査技師の主観によって報告されてきた」という問題があったという。
GramEyeのAI・ロボティクスソリューションでは、グラム染色工程における手間を省き、AIが顕鏡をサポートすることで、より迅速かつ正確な検査結果を反映するシステムを構築することが可能だ。
今回、GramEyeは1943年にタイで初めて医科大学として設立されたとされる国立大学・マヒドン大学にてAI・ロボティクスソリューションを導入し、実証実験を行う。同社のソリューションがどのような成果を残すのか、今後も注目していきたい。
参考元①:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000098814.html
参考元②:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000098814.html
(文・Haruka Isobe)