この問題を解決するのが、インドの不動産テック企業NOBROKERが新たに提供するAIサービス「CallZen」である。同サービスは、AIを用いて企業と顧客の会話を書き起こして分析し、不正検出やビジネスプロセスの管理をオートメーション化するサービス。
このサービスにより、電話で行われた会話をもとに、乗車のキャンセルをタクシードライバー側からリクエストしたか、顧客がマーケットプレイスで取引を完了したかなどの判断ができるようになる。
自社で使っていたプラットフォームを新サービス化
NOBROKERは、2014年にAmit Kumar Agarwal氏とAkash Gupta氏によって設立。2021年には、インドの不動産テックとして初めてのユニコーン企業になった。General Atlantic、Tiger Global Management、Moore Strategic Venturesなどが投資をしている。NOBROKERは、仲介業者へ料金を支払わずに家を購入・販売したり、賃貸したりすることを可能にするプラットフォームを、インドの主要都市バンガロール、ムンバイ、プネ、チェンナイ、ハイデラバード、デリーなどで展開している。
今回新たに展開したサービスCallZenは同社の主要サービスとは一見異なるが、NOBROKER自身が2021年からCallZenを自社で使用していたという経緯がある。自社の顧客とのヒンディー語・英語の会話を書き起こし、分析することによってNOBROKERの成長を促進した。
これが他社への需要もあることに気付き、改良を重ね、現在ではインドのローカル言語であるタミル語、テルグ語、カンナダ語、マラーティー語を含む複数の言語で行われた会話を書き起こして分析することを可能に。それらをCRMおよびマーケティングオートメーションシステムにシームレスに統合する機能をSaaS製品として発売するに至った。
銀行、金融、保険、ヘルステック、エドテックが想定される顧客であり、当面はフリーミアムモデルで展開する。
NOBROKERのビジネスモデル
NOBROKERは、仲介業者を排除し、不動産を借りる側にも貸す側にもコスト削減をもたらすため、賃貸物件リストや不動産売買、さらには引っ越し等の関連サービスまで、ユーザーの多様なニーズに応えるさまざまなサービスを提供している。NOBROKERの主な収益源は、サブスクリプション料、取引手数料、および付加価値サービスから徴収する手数料の組み合わせによるものだ。
サブスクリプションは主に不動産オーナーやテナント向けのサービスであり、ユーザーはリスティングの可視性の向上や優先的なカスタマーサポート、プレミアム物件へのアクセスなど、ワンランク上の多様な機能を利用できるようになる。
また取引手数料としては、プラットフォーム上で取引が成立した場合に不動産オーナーからわずかな取引手数料を徴収。付加価値サービスでは、住宅サービスプロバイダー、金融機関、その他のパートナーからユーザーが利用したサービスに対する手数料を得ている。
インドの不動産業界をディストラクションするNOBROKER、今後の活躍も目が離せない。
CallZen:https://callzen.ai/
文:はっさく(@hassakumacro)