超速度の充電、バッテリーは20年もつ
そんな問題を解決しようと、世界各国でさまざまな研究がなされているが、Nanyang Technology University(NTU)が研究を進めている技術は、大きな飛躍につながる可能性がある。超速度での充電および20年のバッテリーライフを実現しようという試みだ。
二酸化チタンを使った新素材
NTUのMaterials Science and Engineeringに所属するChen Xiaodong氏を中心とした研究チームでは、従来のリチウムイオンバッテリーによく使われている黒鉛の代わりに、電極の素材として、二酸化チタンからつくられるゲル状物質を導入した。二酸化チタンは安全な素材で、かつコストもかからず、土壌から簡単に入手できるのが大きな強み。これは食品添加物や、日焼け止めの紫外線吸収剤としてよく用いられる。
二酸化チタンをバッテリーに使用できるよう、研究チームでは元来は球形の物質を、ナノチューブ状に変換。この素材は、人間の髪よりも薄いというから驚きだ。ナノチューブ状にすることで、バッテリー内の化学反応速度が向上し、おかげで充電速度が飛躍的に速くなるのだという。
2分で70%の充電が完了
このバッテリーは約2分で70%の充電が完了する上、従来のバッテリーに比べ、2年どころかそのおよそ10倍にあたる20年以上、電池の機能を持続させるというスグレモノだ。もちろん、モバイルデバイスなどの充電に有用だが、もっと大きなものの充電にも活用できるだろう。
電気自動車など、より大きいものにも活用を
このところ一般でも目にするようになった電気自動車だが、自動車のバッテリー交換の際、時には5千ドルもの大金が必要となり、非常にコストがかかる。また、毎晩のように車を充電する手間も要求される。
研究チームでは、より大きいバージョンのバッテリー開発に着手しており、もしこの研究が順調に進めば、電気自動車のようなより大きな対象の充電において、これまでよりずっと短い時間で充電が完了できるだけでなく、はるかに長持ちするバッテリーを使用できるようになる。さらなる電気自動車の普及に寄与する可能性もあるだろう。
有毒な廃棄バッテリー問題にも貢献
さらに、老朽化したバッテリーの廃棄数が減れば、有毒な廃棄物問題の解消にもつながる。いいことづくめの期待の新技術、実用化が待たれる。
Nanyang Technology University