衛星データの利用で必要となる“前処理”
「データは新しい石油である」というフレーズがある。データが持つ社会的価値を、資源として貴重な石油に例えた言葉だ。
“地球観測データ”も同様に、現在データ領域全体の中で非常に重要な役割を担っている。
石油を使うために精製と処理が必要であるように、衛星データを利用するには補正や標準化といった“前処理”が必要となる。そこで登場したのがARD(Analytics Ready Data)という概念だ。
衛星データの前処理を行うことで、ユーザーは処理されたデータを迅速かつ簡単に利用できる。このARDの概念は、NASA(アメリカ航空宇宙局)、ESA(欧州宇宙機関)をはじめ多くの関連機関から強い注目を集めており、ARDによる衛星データの利用促進が期待されているという。
「衛星データパイプライン」の社会実装に取り組むNSI
タイのAIT(アジア工科大学)と日本の山口大学のメンバーによって設立されたNSIは、地理空間技術の分野、特に衛星データの分析と関連する地理空間データの最適な利用を専門とするスタートアップ。NSIの目的は、より効率的な衛星データ統合技術を開発することだ。
同社は、ユーザーの目的・予算・頻度に応じて正しい複数の衛星データを選択し、独自の統合技術によりこれらの画像を統合するプラットフォーム「衛星データパイプライン」の社会実装に積極的に取り組み、あらゆる産業・分野における衛星データの実用化を支援している。
この衛星データパイプラインの「統合」部分で利用されるのが、Labsphereの機器だ。
データ検証・画像改良ツールを提供するLabsphere
Labsphereは、FLARE(Field Line-of-sight Automated Radiance Exposure)と呼ばれる革新的な自動キャリブレーションテクノロジーを市場に提供している光測定機器メーカー。
FLAREシステムをグローバルネットワークとして提供。地球観測衛星がFLAREシステムとしての地上視を観測することで、衛星のセンサーを評価を可能とする。
FLAREは、非常に強力なデータ検証および画像改良ツールであり、一般的な衛星画像をNASAおよびESAの品質レベルまで安定しているための衛星データプロバイダーのコストを削減する。
複数の衛星センサーと衛星コンステレーションの調和がなければ、より適切な意思決定を行うための精度の高い衛星データを適用することはできない。同社のキャリブレーション手法により、センサー・出力を調整し、衛星コンステレーション全体で一貫した衛星データの提供を実現する。
このデータ品質は、将来のビジネスを獲得するための強力な市場差別化要因となるだろう。
NSIは「FLARE」を介した“商用画像データ改善”を実証済み
今回NSIとLabsphereは、ARD製品の開発に向けパートナーシップを締結。
NSIはすでにFLAREを介して商用画像データを改善することを実証しているとのこと。LabsphereはNSIと協力して、この参照方法を日本で確立する予定だ。今後の両社の動向に注目していきたい。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000110181.html
(文・Haruka Isobe)