そんななかフランス・パリを拠点とするGreenerwave社は、ドイツ・ミュンヘンに本社を構えるローデ・シュワルツ社と連携し、RISモジュールの検証を実施。今後は、6G開発に向けた研究を推進していく方針です。
Greenerwave社とローデ・シュワルツ社
Greenerwave社は、フランス国立科学研究センター(CNRS)とパリ市立工業物理化学学校(ESPCI Paris)が運営する学術研究機関“ランジュバン研究所”発のディープテック・スタートアップ。高い技術力により、RISを用いた電磁波伝搬のパッシブ制御を革新に導いています。また、数百MHzからサブTHzにおよぶ電気的に再構成可能なメタサーフェイスの設計・開発・製造・特性評価も実施。そのアプリケーションは、低周波数側ではIoTやFRID、高周波数側ではスマート・アンテナやレーダーと多彩です。
ローデ・シュワルツ社は、試験・計測などをはじめとする技術システムやネットワークおよびサイバーセキュリティにおけるトップレベルのソリューションを提供しています。
また、欧州やアジア、米国の各地で6G研究活動を積極的に支援すると同時に、研究プロジェクトや業界団体の取り組み、主要な研究機関・大学との連携にも貢献しています。
多数の層からなる電気デバイスRIS
RISは、メタサーフェス反射板の一種で、多数の層からなる電気デバイス。あらゆる面で4G LTEや5G NRよりも効率的であるべき6Gネットワークにおいても重要な技術です。特徴は、電波の反射面の特性が可変であること。例えば、通常の反射板は特定の方向にしか電波を反射できないのに対し、RISは電波の反射方向を動的に切替えることができるため、特定の場所への電波の集約、多方向への電波の反射が可能です。
RISの表面には、ピクセルあるいはユニットセルと呼ばれる一連のパッチアンテナがはめ込まれており、その電磁気的応答が制御基板を介して制御できるようになっています。
そのRISに欠かせないのが、無線環境を制御するためのメタマテリアル。これによってインピーダンスをサブ波長スケールで操作することで前例のないような電磁波の制御を可能にし、イメージングやレーダー、無線通信に大きなブレイクスルーをもたらしています。
特許技術のメタマテリアルを使用したRIS
Greenerwave社のRISには、特許技術のメタマテリアルを使用しています。そのモジュールは5G FR2以上で動作し、25~30 GHzの帯域幅を瞬時帯域幅2 GHzでカバー。独立した偏波制御機能や-60~+60度のビーム走査機能を備えるほか、3度という細いビーム幅に対応しています。
検証環境の構築
このたびの検証では、Greenerwave社のFR2用RISの特性評価にローデ・シュワルツ社の試験・計測機器が使用されました。RISのテストには、さまざまな入射角で電磁波を照射すると同時に複数の角度の信号を測定できる試験環境が必要です。
そこで、OTA(over-the-air)測定にローデ・シュワルツ社の無線性能テスト・チャンバ(wireless performance test chamber:WPTC)が採用されました。
さらに、RISへ照射するためのフィードアンテナに合わせて、ホルダも特別に設計しました。
無線通信能力を向上できると実証された
こうして、ミリ波帯で変調した5Gシグナルに対する、FR2用RISモジュールがもつ反射特性と反射品質を調査。3次元的な反射特性の測定はR&S ZVAベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)によって実施し、5Gシグナルの品質測定にはR&S SMW200Aベクトル信号発生器とR&S FSWシグナル・スペクトラム・アナライザを用いました。
また、R&S AMS32ソフトウェアを使って、測定とデータ解析を自動化しています。
その結果、Greenerwave社のRISが特に5G FR2の導入・運用において無線通信能力を向上できることが実証されました。
Greenerwave社CEO兼CSOのGeoffroy Lerosey氏らは、以下のように述べています。
当社のRIS技術とその能力によって5G FR2の新しいユースケースが発展していくものと確信しています。とりわけローデ・シュワルツとの協力は、高度なOTA測定機器を用いてRISが5Gの要件に応えるものであることを証明するうえで欠かせないステップです。私どもは近い将来、5G-Advancedとその先の6Gにおける技術展開の方向付けに貢献するような新しい可能性も探る予定です
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000104512.html
(文・Higuchi)