今回発売するのは「Galaxy Z Flip5」と「Galaxy Z Fold5」の2機種。両モデルは、22年に発売された「Galaxy Z Flip4」「Galaxy Z Fold4」の後継機。閉じるとコンパクト、開くと大画面というコンセプトは基本的に踏襲しています。
ヒンジを大きく改善。わずかなすき間もフラットに
2機種ともに、ディスプレイを折りたたむ際に支えとなるヒンジ(蝶つがい)を大きく改善しています。これによって、閉じたときに画面と画面の間にできるすき間がほぼなくなり、わずかなすき間もフラットになりました。
Galaxy Z Flip4、Galaxy Z Fold4までは、ヒンジ側に近づけば近づくほどすき間が大きくなり、均等に折り曲げることができませんでした。そのため、ヒンジ部に近くなるほど厚みが増しています。
これを解決したGalaxy Z Flip5、Galaxy Z Fold5では、そのぶん、大幅に薄型化しています。
たとえば、縦折りタイプのGalaxy Z Flip5は、折りたたんだときの厚みが前モデルの17.1mmから15.1mmへと2mmの薄型化に成功。2mmと聞くと、わずかな改良にも思えますが、その比率は1割以上になり、手に取ったときに違いはすぐに分かります。
より大きく薄型化できているのがGalaxy Z Fold5。こちらは前モデルの15.8mmから13.4mmへと、2.4mmも薄型化しています。
ヒンジ部分が、いかに折りたたみスマホをスリムにするうえで、ボトルネックになっていたかがよく分かります。
新開発の部品「フレックスヒンジ」の凄さとは
このピタッと折りたたむ仕様は、「フレックスヒンジ」と呼ばれる新開発の部品によって実現しています。
Galaxyに採用されているディスプレイの有機ELは、曲げることが可能な柔軟性を持ってはいるものの、紙のようにクッキリと強く折り曲げてしまうことはできません。そのため、普通に折りたたもうとすると、どうしてもすき間ができてしまいます。
そこでサムスンは、フレックスヒンジによってディスプレイの曲がる部分を水滴のような形に曲げるギミックを取り入れました。ヒンジの内側にその折り曲げた部分を収納することで、あたかもすき間がないかのように見えるというわけです。
また、水滴型に折り曲げる際にかかる力を分散させるよう、折り曲げる中心点の横に2つのレールを設けています。この部品を装着することで、曲げたときの力が逃げ、耐久性が増したといいます。
カバーディスプレイが拡大、初代iPhoneと同サイズに
2機種とも、折りたたみスマホ最大の特徴と言えるヒンジを刷新していますが、そのうえでさらに大幅な進化を遂げたのが、縦折り型のGalaxy Z Flip5です。このモデルは、いわゆるガラケーのように折りたためるのが特徴です。閉じたままでも、通知などの各種情報をチェックできるよう、カバーディスプレイが搭載されていますが、このサイズが一気に3.4インチまで拡大しました。
前モデルは、カバーディスプレイが1.9インチだったため、面積にして1.8倍弱になっています。
スマホも額縁を細くするなどして、ディスプレイサイズが大型化することはありますが、この場合、0.1インチ刻みでの改善が一般的。本体サイズそのままで、ディスプレイの面積だけが一気に倍増近くすることはほぼありません。それを踏まえると、Galaxy Z Flip5の進化がいかに大きいことが分かるはずです。
3.4インチと言えば、初代iPhoneと同サイズ。これによって、閉じたままでも必要な情報を見やすくなりました。
開閉できるのが特徴の折りたたみ型スマホを閉じたまま使えるというのは、逆説的にも聞こえますが、Galaxy Z Flip5であれば、あえて本体を開く回数は減ってしまいそうです。ブラウジングや動画視聴など、本当に必要なときだけ本体を開けばいいからです。
折りたたんでコンパクトな状態で持ち運び、そのままカバーディスプレイをチェックして再びポケットやカバンにしまうといったことも増えるでしょう。
また、試験的な機能を試せる「ラボ」という設定を有効にすると、カバーディスプレイにそのままアプリを表示することもできます。利用可能なアプリは一部ですが、マップなどは対応しています。たとえば移動中に周辺の情報を調べたり、経路をチェックしたりといったことをする際に、あえて本体を開く必要はありません。
3.4インチにカバーディスプレイが拡大したことで、Galaxy Z Flip5は従来モデルと使い方が変わる可能性も出てきたと言えそうです。
注目増す“折りたたみスマホ”、日本では縦折りが人気?
サムスン電子がここまでGalaxy Z Flip5に注力しているのは、折りたたみスマホが主流になれそうなほど、勢いが拡大しているからです。昨年時点で全世界の出荷台数が1000万台を超えていた折りたたみスマホですが、27年ごろには1億台を突破するという予想も打ち出されています。なかでも有利なのが、この分野で先行しているサムスン電子。実際、グーグルや中国メーカー各社が続々と折りたたみスマホを投入しているなか、7割以上のシェアを同社が占めているといいます。
折りたたみスマホには横折りで開くとタブレットサイズに近くなるGalaxy Z Fold5のような端末もありますが、どちらかと言えば、現在ヒットしているのはGalaxy Z Flip5のような縦折りタイプ。
サムスン電子によると、日本では7割弱が縦折りのGalaxy Z Flipタイプを選択するといい、折りたたみ型の主流になりつつあります。横折り型に比べ、価格が一般的なハイエンドスマホに近いのも、ユーザーに受け入れられている理由と言えるでしょう。
世界的にもこの傾向は同じです。日本では、モトローラが「motorola razr 40 Ultra」を発売するなど、ライバルも増えてきました。競争が激しいからこそ、Galaxy Z Flipは大幅なフルモデルチェンジを果たしたというわけです。
ただし、日本はもちろん、世界でも出荷台数を稼げるのは価格のこなれたミッドレンジモデル。今のラインナップのままでは、折りたたみモデルも頭打ちになる可能性はあります。海外では10万を下回る折りたたみスマホも登場しており、この分野の価格競争も今後は激化することになりそうです。
(文・石野純也)