両社は同実験を通して、それぞれが持つ暮らしの知見と先進テクノロジーを掛け合わせ、より快適で安全な住まいの提案に生かすとともに、病院やオフィスなど公共空間への活用も検討する方針です。
富士通の「常時認証技術」とは?
常時認証技術は、生体認証技術と行動分析技術Actlyzerを組み合わせ、生体認証による本人確認結果を特定エリア内に設置されたカメラで撮影された人物と紐づけることで認証状態を維持しながら、その人物の位置をリアルタイムに推定できる技術です。これまで、カメラの設置位置によって、各カメラ映像中の人物の見え方が異なり、複数のカメラをまたいで人物をトラッキングすることは困難でした。
しかし今回、複数のカメラ映像から、トラッキング中に人物の外見の特徴を随時抽出して特徴量を更新する技術を開発。これにより、カメラ間での人物トラッキングが可能となり、住宅内のような区切られた空間を行き来する際においても活用が見込まれます。
今後は、人の行動をトリガーとして、エリア内での転倒事故のリアルタイムな通知やキャッシュレス決済など、認証操作を意識させないサービスへの応用も検討するようです。
なお、常時認証にかかる処理はすべてクラウドで実行され、エリア内の機器がその処理結果を受け取り、駆動する仕組みです。
共同実験の概要
今回の実験は、「ミサワパーク東京」内にある、暮らし・健康・環境という3つのサステナビリティの実現を目指すコンセプト住宅「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」で実施中。この住宅は、シェアオフィス空間と居住空間の併用住宅であり、同実験は1階にあるシェアオフィス空間で行われています。
期間中、ミサワホームと富士通の一部関係者がシェアオフィスを使用する際に、入口の専用機器で生体認証登録を行い、自身の趣味嗜好などの個人情報も登録。
その登録情報をもとに、シェアオフィス内で常時認証を行い、照明・スピーカー・モニターなどの機器と連動して、来場者の好む音楽を流すなどパーソナライズ化された住環境の価値を検証します。
同実験での検証内容は、意匠性を考慮したカメラ台数・配置での個人特定精度の高さ、動作検知との連携による快適性、生体認証せずに入ってきた人物や転倒した来場者の異常検知などです。
未来の住宅の実現を目指す2社の取り組み
社会課題解決へつながる住まいづくりに取り組むミサワホーム。2021年に建設した「グリーン・インフラストラクチャー・モデル」を、業種の垣根を越えたソリューション開発や実証実験を行うイノベーションフィールドとして提供しています。富士通は、1980年代から生体認証の研究に取り組み、PCやスマートフォンなどの個人利用端末のアクセス管理だけでなく、災害時などに身ひとつでさまざまなサービスを利用できる社会の実現に向けて研究開発の領域を広げてきました。
そんな両社は、「2030年の暮らし」をコンセプトに、住まい自体が社会を支え、持続させるためのインフラとなる、未来の住宅の実現を目指し、2021年より議論を重ねています。
その中でミサワホームは、常時認証技術で実現し得る新しい暮らしの可能性に共感し、実験場所の提供や機器を空間に溶け込ませる工夫など知見の共有を行い、このたびの実用化に向けた共同実験に至りました。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000093942.html
(文・Higuchi)