そんな資金繰りの課題を解決する手段として、ここ1年で広まっているのがファクタリングです。実際にベンチャーキャピタルに資金調達の相談をしている間のブリッジファイナンスとしてファクタリングが使われているケースが増えています。さらに新たなファクタリングの形としてRBFという資金調達方法も注目されています。
今回の記事ではファクタリングサービス「PAYTODAY」を提供しているDual Life Partners株式会社の田中取締役に、ファクタリングの特徴と新たにリリースしたサービス「RBF by PAYTODAY」について伺いました。
融資までのブリッジファイナンスとして使うファクタリング
――改めてファクタリングについて教えてください。
田中:ファクタリングを一言で説明すると「請求書の買取サービス」です。商取引で発生した売上債権をファクタリング業者に売却することで、支払い期日前に現金化できるのが特徴です。
――御社でもファクタリングサービス「PAYTODAY」を提供していますが、どのような特徴があるのでしょうか?
田中:「PAYTODAY」の特徴は即日最短30分で融資ができる点、オンラインで完結できる点などが挙げられます。
特に短期間で資金調達できる点はファクタリングのメリットの一つです。
たとえば銀行やベンチャーキャピタルからの融資や投資は資金調達までに数か月かかることがほとんどなので「目の前にビジネスチャンスがあるのに、資金が不足していて手を出せない」といったケースに見舞われることも少なくありません。その点、ファクタリングであれば短期間で資金を調達できるのでチャンスを逃すことがなくなります。
一方でファクタリングにはいくつかのデメリットもあります。1点目は手数料が高いこと。2社間ファクタリングは通常10~25%の手数料がかかります。「PAYTODAY」では手数料の上限を9.5%にしていますが、それでも金融機関から融資を受けた方が手数料は圧倒的に安いですし、資金繰りも安定します。
特にファクタリングの債権は返済期間が1~3か月に設定されることが一般的なので、1年に換算すると手数料だけで利益を圧迫しかねません。
私たちはファクタリングをブリッジファイナンス(つなぎ融資)として使うことを推奨しています。
資金調達と事業展開は両輪で回っていくものですから、どちらかが止まってしまうことがないようにしなければなりません。たとえば銀行からの融資日、あるいはベンチャーキャピタルからの投資期日までファクタリングでつなぐことができれば自転車操業に陥りづらくなります。
足元の資金繰りのためにファクタリングを利用するのではなく、将来の売上に向けた投資のために使っていただきたい。最終的にはファクタリングを卒業して、手数料の安い銀行融資にシフトしてほしい。「PAYTODAY」はそんな思いでサービスを提供しています。
――ファクタリングはあくまでもブリッジファイナンスとして使うのがベストということですね。
田中:そこは「PAYTODAY」の立ち上げ当初から変わらない思いです。ブリッジファイナンスとしてのファクタリングという観点で、もっと使いやすく、もっと手元の資金を残せるようなサービスはないかと模索して出てきたのが「RBF by PAYTODAY」になります。
将来の売上を確定債権とみなし資金調達できるRBF
――RBFって初めて聞きました。どんな資金調達方法なのですか?
田中:RBF(Revenue Based Finance:レベニュー・ベースド・ファイナンス)は売掛債権の流動化サービスの一種で、将来の売上の一部を現金化する方法です。日本ではまだあまり浸透していませんが、米国やイギリスなどの英語圏を中心に広まっています。
RBFの一番の特徴は、将来債権を現金化できる点です。ファクタリングは確定債権、つまり請求書を締めて売掛金として計上されるタイミングで債権を買い取るものなので、将来発生する売上についてはファクタリングでは債権とみなしていません。
一方RBFは「1年間の契約」「毎月の定期売上」などを確定債権としてみなせるため、資金調達の選択肢を広げることができます。
――RBFにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
田中:ファクタリングと同じく金融機関の融資よりも資金調達スピードが速いのがRBFのメリットです。またファクタリングに比べて返済期間が長いので、長期間になればなるほど手数料が安くなるというメリットもあります。
とはいえ、金融機関に比べると手数料は高いのでデメリットであるとも言えます。またRBFを利用できる企業は限られていて、SaaS企業やD2C企業といった毎月安定的に売上がある業態しか使えない点もデメリットです。
たとえば建設会社と塾を比較してみるとわかりやすいと思います。建設会社は毎月同じくらいの仕事を同じくらいの金額で依頼されても、これは継続的な依頼であって、リカーリング契約としてみるのは難しいです。
一方の塾は毎月月謝が発生しますし、一度入ったら3年間通うことが見込まれるため継続的な契約だとみることも可能です。もちろん途中で辞めていく生徒もいますが、入ってくる生徒もいるので、毎月安定した売上が見込めます。したがって建設会社はRBFを使えないけど、塾はRBFを使えると言えます。
――先日、御社でも新しくRBFのサービスがリリースされましたよね。
田中:2023年4月15日に「RBF by PAYTODAY」をローンチしました。手数料はファクタリングと同様レベルを目指していますが、RBFは返済期間が長いので相対的にファクタリングよりも安くなります。
たとえばファクタリングで返済期間2か月、手数料が9%だと単純に1か月4.5%ですが、RBFは半年~1年の返済期間になることが多いので、1年だと0.75%、半年でも1.5%です。
調達までのスピードもファクタリングのように最短30分というわけにはいきませんが、1~3営業日、長くても1週間以内に入金ができます。実際にRBFを使われているのは、今日明日中に資金が必要という方ではなく、資金調達の一つとして銀行と並行して使うような余裕のある方が多い傾向にあります。
――「PAYTODAY」ならではの特徴はあるのでしょうか?
田中:「PAYTODAY」ならではの特徴として挙げられるのが柔軟性の高さと事業の将来性を重視している点です。
RBFは売掛債権を担保にした融資のようにイメージされる方が多いのですが、融資のように毎月決まった額を返済するのではなく、毎月の売掛債権の入金額を見ながら返済額を相談していく形になります。
たとえばA・B・C・D・Eの5社と取引をしていたとすると、最初の1か月目はA・B・Cの入金額から返済してもらう。翌月にA社が倒産したらB・C・Dの入金額から返済してもらう。B社の入金が少なければC・D・Eから返済してもらう……と相談しながらカスタマイズできるのが特徴です。
その際、売掛先が倒産した場合は事業者がそのリスクを負います。融資の場合は取引先が倒産しようが、売上が少なかろうが毎月決まった額と利息を返さなければならないので、RBFの方が柔軟性が高いと言えます。
またRBFの審査にあたっては、事業の将来性を重視しています。単に決算書が良い、足元の売上が上がっているといったことだけでなく、お客様のビジネスモデル理解から始め、事業に広告費や人件費をどれだけかければ売上が伸びるか、マーケットの成長と比較してどのタイミングでスタートダッシュを切れば事業が成長するかといった部分を細かくヒアリングしていきます。
この審査の段階で重視しているのが解約率です。ユーザーに解約されてしまうと将来債権が消えてしまうので、過去1年間でどれくらい解約率があったかをチェックしています。解約率をKPIとして会社で管理してもらっていると良いかもしれません。
ファクタリングとRBFをうまく使い分けてほしい
――ファクタリングとRBF、どのように選択すればよいのでしょうか?
田中:ファクタリングはどの業態でも確定債権さえあれば使える商品なので、事業をされている方であればどなたでも使えます。一方のRBFに関しては、利用できる事業形態がSaaSやD2Cといった将来の売上が継続的に発生するものに限られているので、企業によっては使えないこともあるため注意が必要です。
どちらを使えば良いのかわからない場合には、ご相談いただければ私たちの方で最適なものをお選びします。
また、これまでファクタリングを使ってきたお客様が、新たにSaaSやD2Cといった事業展開を始めたのであればRBFに移行することもできますし、ファクタリングとRBFの両方を行き来することも可能です。選択肢を2つ持っていることはPAYTODAYの強みなので、ブリッジファイナンスとしてうまく活用してほしいですね。
(取材/文・川口裕樹)