加えて、ソニー自身が通信事業者のアプリなどをプリインストールしないメーカー版の販売を、7月中旬以降に開始する予定です。
Xperiaは、19年に発売された「Xperia 1」以降、デジタルカメラとしてシェアを伸ばしている「α」シリーズの機能や使い勝手を取り込んできました。
例えば、「Xperia 1 II」から採用されているカメラアプリの「Photography Pro」はその代表例。αと同じような操作画面で、シャッター速度やISO感度といったパラメーターの設定を簡単に行えるほか、他のスマホにはないシャッターボタンも搭載しています。
また、オートフォーカスやオートエクスポージャー(露出)を追従させながら、秒間20枚の連写ができる機能もα譲り。人間やペットの目にきちんとフォーカスを合わせる「瞳AF」も、Xperia 1以降のフラッグシップモデルすべてに搭載されています。
一方で、どちらかと言えばカメラ寄りの新機能が多く、“スマホカメラ”としてのトレンドに十分キャッチアップできていなかった部分があります。Xperia 1 Vでは、こうした点が大きく改善されています。
1つ目は、高画素な新センサーを採用したこと。メインの広角カメラに搭載されたセンサーの画素数は4800万画素になり、Xperia 1シリーズとして初めて「ピクセルビニング」に対応します。これは、4つなど、複数の画素を束ねることで光を取り込める量を増やす技術のこと。
画像センサーは赤、緑、青の画素から構成されており、1つ1つが光を受け、映像を作り出します。このサイズが大きければ大きいほど、取り込める光の量が増え、暗所での撮影に強くなります。
ピクセルビニングとは、この画素を束ねて使い、光を取り込める量を増やす仕組みです。これによって、画素数は1/4の1200万画素相当になりますが、そのぶん感度を上げることができます。
処理能力を求められるスマホの向きの技術ですが、最近では、フラッグシップモデルだけでなく、ミッドレンジモデルにも採用が広がっています。
iPhoneも、22年に発売された「iPhone 14 Pro/Pro Max」のカメラが、ピクセルビニング対応になり、画素数が4800万画素になりました。
独自性が高いのは、そのセンサーです。Xperia 1 Vは新たに「2層トランジスタ画素積層型」のセンサーを採用。その名称は「Exmor T for mobile」といいます。
通常のセンサーでは、光を電気信号に変換するフォトダイオードと、それを増幅するトランジスタが1層になっています。ところが、このExmor T for mobileは、これを2層に分け、光を取り込むためのフォトダイオードの面積を拡大しています。
加えて、シンプルにセンサーサイズをXperia 1 II以降の1/1.7インチから1/1.35インチに拡大して、ここでも光を多く取り込めるようになっています。
まとめると、ピクセルビニングとフォトダイオードの面積拡大、さらにセンサーサイズそのものを大きくするという3点で、従来モデルから大きく低照度時の撮影性能を改善したと言えるでしょう。
スマホらしいところは、AIを駆使しているところにも表れています。一般的に、他社の場合は、画質補正や絵作りといった部分にAIを活用することがありますが、どちらかと言うと、彩度が高くなりすぎて絵を書いたかのようになってしまうケースがあります。
これに対し、ソニーはAIを使い、あくまで自然な絵作りになるよう注力しているといいます。
さらに、オートフォーカスで被写体を分析し、前景と背景を見分けることで、ピントを合わせやすくなっています。実際、Xperia 1 Vを使ってみると、そのフォーカス合わせのスピードに驚かされるはずです。
これらに加え、アプリ面でも、カメラアプリのPhotography Proが、Xperia 1 Vで初めて「縦撮り」に対応しました。これまでのPhotography Proは、カメラらしい操作感を重視していたこともあり、「横撮り」だけしかできませんでした。
一方で、スマホの世界では、通常時の操作と同じように本体を縦位置で持って撮影するのも一般的。こうした撮影スタイルに対応できるよう、Photography Proのユーザーインターフェイスを見直し、縦のメニューも用意しています。
これまではデジタルカメラのような撮影性能を取り込んできたXperiaですが、Xperia 1 Vでは、上記のように、スマホとしての強みをより取り込んできたような印象があります。
ピクセルビニング対応の画像センサーやAIの活用、さらにはアプリのユーザーインターフェイスに至るまで、従来モデルから大きく刷新されています。
また、カメラ以外でもチップセットに「Snapdragon 8 Gen 2」を採用し、処理能力を高めています。ソニーが得意とするスピーカーも、より音圧をアップ。
Xperia 1シリーズとしてナンバリングされているため、マイナーチェンジに見えてしまうかもしれませんが、その進化ぶりは、フルモデルチェンジと呼ぶにふさわしいものと言えそうです。
(文・石野純也)