今回の実証事業は、家庭用蓄電池をはじめとした低圧リソースのアグリゲーションビジネスの実現可能性の検証を目的としています。
家庭用蓄電池システム4台を使用
2022年5月から2023年2月までの期間、東京電力エリアと中部電力エリアで実施された今回の実証事業では、家庭用蓄電池システム(Tesla Powerwall)4台が使用されました。
実証では、Sassorが提供するRA(リソースアグリゲーター)システム「ENES」と、Evergenが提供する制御APIの活用を通じて、シェアリングエネルギーの蓄電池システム(「シェアでんき蓄電池モデル」として提供)を統合・遠隔制御。デマンドレスポンス(※1)やバーチャルパワープラント(※2)といったアグリゲーションサービスの商用化が検討されました。
※1:エネルギーリソースの保有者などがエネルギーリソースを制御し、電力需要パターンを変化させること。
※2:電力系統に直接接続されている発電設備・蓄電設備の保有者などが、エネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供すること。
3種類の実証実験を実施
Sassorらは、今回の実証事業で「供給力実証」「調整力実証」「独自実証」を行いました。
スポット市場価格値差に応じた制御ができたことを確認
「供給力実証」では、制御実施日のスポット市場価格を基に、電力小売事業者視点での電力調達価格の値差を考慮した充放電計画を作成し、家庭用蓄電池の群制御を実施。
実験の結果、各世帯において、スポット市場価格値差に応じた制御ができたことを確認できた一方で、充電対応についてはシステムの仕様上の課題が浮き彫りになったとのこと。
一次調整力を想定した制御実証などを実施
「調整力実証」では、需給調整市場にて将来的に開設が予定されている一次調整力を想定した制御実証や、容量市場における発動指令電源の実証を実施しました。
この検証では、一次調整力実証については、周波数取得まで対応できたものの、実際の制御は今後の課題であることが確認されました。
容量市場発動指令電源については、成果が見られたものの目標値を下回っており、電力需要の傾向を考慮した追加の検証が必要と結論付けられました。
すでに開設されている三次調整力を実証
「独自実証」は、蓄電池を活用して、需給調整市場にてすでに開設されている三次調整力を実証するという内容。
結果的に、成功判定範囲に入れることはできませんでしたが、シェアリングエネルギーとしては初めて、三次調整力の実証で一連の流れを一定程度の精度で実施できたとされています。
サービス化に向けた取り組みを加速
Sassorとシェアリングエネルギー、Evergenは、今年度(2023年)のDERアグリ実証を通じて得られた、家庭用蓄電池を遠隔制御する際の技術的な課題などを踏まえ、サービス化に向けた取り組みを加速させる予定。
EV充電器や給湯器など、制御対象となるエネルギーリソースの種類と数量を増やして統合制御することで、電力の安定供給とカーボンニュートラルの推進にも取り組む方針です。
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000028289.html
公式サイト:https://www.sassor.com
(文・S.Inosita)