そんな中、オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を運営する株式会社ニットでは、社内でChatGPTの活用を始めました。今回は、株式会社ニットの代表取締役社長である秋沢崇夫氏に、ChatGPT活用のプロセスや狙いについて寄稿していただきました。
AI技術の発展で試される人間の適応力
優秀なAI技術が発展することで心配なのは、今ある人間の職業がなくなっていくことではないでしょうか。もちろんその可能性はある一方で、新たに登場する仕事もあることに着目するべきでしょう。新技術の台頭は、人間の仕事をアップデートするチャンスでもあるのです。これは、今に始まった話ではなく、時代の中で繰り返し起きていることでもあります。人間は技術の進歩に順応することで、やるべき仕事を変化させてきたと捉えることができます。
たとえば、自動改札機の登場により、駅で切符を切る駅員さんの姿は今ではほとんど見られなくなりました。しかし社会では新しい仕事がどんどん登場し、世の中は回り続けています。
重要なのは、現在の仕事のやり方や形態に固執することではなく、変化がより速くなっていく社会の中で、自身の考え方やスキルを柔軟にアップデートし続けるという覚悟・メンタリティを持つことではないでしょうか。
ChatGPT導入へ向けたHELP YOUでの取り組み
当社のメンバーは、ほとんどがフリーランスです。彼らは自身のスキルアップに関心が高く、最新ツールの情報にも敏感です。そのため、ChatGPTに関しても早くから注目し、業務での活用に向け実験的に導入を始めています。新技術をメンバーに浸透・適応させるため、当社でどのような取り組みをしているのか、その詳細をご紹介します。
①体感してもらう
ChatGPT活用の際は、ChatGPT使用に対するハードルを低くし、メンバーみんなが使いやすい環境整備が重要です。まずは、メンバーにChatGPTの利用を促し、実際に体験してもらいます。そして、使用感についての感想を集めることで、メンバーの反応や改善点を見つけ出します。
この流れにより、今後どういった業務で活用していける見込みがあるのかどうかも判断できます。
②社内外への勉強会開催、記事の執筆&公開
ChatGPTに関する情報を社外へ発信することは、会社の価値向上だけではなく、社内メンバーの意識を高めることにもつながります。さらには、リスキリングへの意欲向上などの効果も期待できます。発信までのプロセスにおいても同様で、勉強会資料の作成やメディア記事執筆を社内メンバーに依頼することで、ChatGPT情報に触れる機会を創出できます。
③利用時の注意を周知
ChatGPTを使用する際に機密事項を入力してしまうと、情報漏洩などのリスクが発生する可能性があります。そのため、メンバーには、取り扱いに関する注意事項を事前に伝えておく必要があります。個人情報や機密情報を入力しないなどのリスク周知に加え、AIで生成した情報のファクトチェックの徹底も会社の信用に関わるため、重要なポイントです。
④「HELP YOU AI ラボ」の立ち上げ
HELP YOUでは、さらなる業務の効率化に向け、2023年2月から新たに「AIラボ」を発足しました。AIラボでは以下のような活動を目指しています。・主要なAIに関する情報を収集・発信
・社内メンバーに情報共有をし、楽しみながらの活用を促進
・社内⇔社外のAI活用における戦略整備~研修などを実行
これまでの活動の成果として、①AIに任せるべきこと、②誰かに依頼すべきこと、③自分でやるべきことの3つに業務が分類できることがわかってきました。
AIと人間の分業の仕方
では、ライティング業務を例に①AIに任せるべきこと②誰かに依頼すべきこと③自分でやるべきことに振り分けて考えていきましょう。①AIに任せるべきこと
・文章のたたき台作成・創造的なアイデア出し
・企業リサーチ、用語リサーチ(大まかな内容のみ)
・文章の添削
テーマに関するリサーチや、ざっくりとしたアウトラインなどは、AIに任せても問題ないでしょう。また、アイデア出しなどは、AIから意外な発想が得られるかもしれないため、活用してみるのもおすすめです。さらに、誤字や表記ゆれなどの文章校正などもAIが得意とするところです。
②誰かに依頼すべきこと
・AIでリサーチした情報のファクトチェック・AIが出してきた文章のファクトチェック
・正確でわかりやすい文章にする
先にも述べたように、AIから得られた情報には不正確なこともあるため、必ず事実確認をしなければなりません。また、AIが作った文章の中に不自然な部分があれば、人間が修正する必要があります。ただし、これらは文章作成に慣れている / 得意な人材に任せた方が効率的に正確な文章に整えることができます。
③自分でやるべきこと
・戦略を練る・最終的なファクトチェック&確認
そのプロジェクトの意図や戦略は、他人やAIに任せるわけにはいきません。さらに、文章の最終チェックは、自分の計画していたものと齟齬がないかどうかを確認するためにも、本人が行うべきでしょう。
初めの章でも触れたように、AIを導入したら、人間の仕事が奪われてしまうのではないかという話を聞きます。
しかし、実際にChatGPTを導入して明らかになったのは、AIを使って業務を行ったとしても、どこかで人間の作業は必要となることでした。たとえば、ファクトチェックなどは人間にしかできないでしょう。
重要なのは、AIにのみ仕事を任せるのではなく、AIを使いこなせる人に業務を依頼することです。この業務の振り分けこそが、生産性を上げる鍵となるのです。
ChatGPTでサービス・仕事の可能性が広がる
フリーランスが主要なメンバーとなるHELP YOUでは、スキルアップに貪欲なメンバーが多く在籍しており、変化に柔軟に適応しながらともに成長していく自律型組織を目指しています。現在AIラボをはじめとするメンバーには、ChatGPTという最先端AI技術を業務で使ってもらうなどして、社内メンバーの意識を高めていくことで、社外からの期待にも応えられる強いチームになれると考えています。
また、これらの技術を活用し、生産性向上のヒントや業務効率化に貢献できるようなサービスの価値向上に還元していくとともに、新たな仕事の可能性にも大いに期待しています。
<著者プロフィール>
秋沢崇夫
株式会社ニット
代表取締役社長
1981年東京都生まれ。青山学院大学卒業。2004年株式会社ガイアックスに入社し、営業、事業開発に関わり、営業部長に。32歳で退職後、一人旅の最中にリモートワークを経験。「このスタイルであれば場所や時間にとらわれることなく自分らしい生活を実現できる」と実感し、さまざまな働き方や生き方の選択肢があってもいいのではないかと考えるように。帰国後「多くの人の働く選択肢を増やしたい」との思いからオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を立ち上げる。
オンラインアウトソーシング「HELP YOU」:https://help-you.me/