これまで、同社は中容量帯として20GBの「NEOプラン」や、NEOプランから一部サービスを削った「NEOプランLite」を提供していましたが、NEOプランWは、この上位プランにあたります。
格安スマホという愛称で呼ばれることからも分かるように、NUROモバイルのようなMVNOは、一般的に低料金が売りになっています。そのぶん、大手キャリアと比べるとデータ容量は少なめ。10GB以下の低容量帯が主戦場になっていました。
NUROモバイルも、この価格帯に合わせた「バリュープラス」と呼ばれる料金プランを用意しています。バリュープラスは、3GB、5GB、10GBの3つに容量が分かれます。
これに対し、NEOプランはいずれも20GB以上。ドコモのahamoなど、オンライン専用プランと同容量です。MVNOとしてはデータ容量が大きく、中容量帯を狙った料金プランと言えるでしょう。
ただ、MVNOがデータ容量の大きな料金プランを提供しようとすると、大きな壁があります。通信品質です。
MVNOは、大手キャリアからMbps単位で帯域を借り、エンドユーザーにサービスを提供しています。MVNOと大手キャリアを結ぶ接続点の“太さ”に料金を払っていると言えるでしょう。
一方で、帯域の太さには限界があります。特に問題になるのが、ピーク時。MVNOの抱えるユーザーが一斉に通信するお昼休みは、この接続点の帯域が不足して速度が低下する傾向にあります。
ピーク時のトラフィックに合わせて帯域を借りればいいのですが、そうなると、今度は料金に跳ね返ってしまい、格安で通信サービスを提供するのが難しくなります。データ容量が少ない場合、ある程度通信する時間は限られるため、それでもユーザーは獲得できていました。
一方で、中容量帯になってしまうと、データ通信の頻度や量が増え、通信品質が悪いと満足度が低下してしまいます。
そのため、NUROモバイルは格安プランのバリュープラスと中容量帯のNEOプランの帯域を分け、通信品質を向上させました。
そのぶん、料金はNEOプランが2699円、新プランのNEOプランが3980円と高くなっていますが、データ容量をあまり気にせずに使いたい人にとっては、比較的安価な選択肢と言えるでしょう。
ahamoなどのオンライン専用プランに、真っ向から勝負を挑んだのがNEOプランというわけです。
ただ、データ容量が同じで料金水準も変わらなければ、あえてNUROモバイルを選ぶ必要性もありません。そこで、NEOプランは一部SNSのデータ容量をカウントしない「NEOデータフリー」や、アップロードのデータ通信を無制限にする「あげ放題」といったサービスで差別化を図っています。
NEOプランWにも、こうした特徴は継承されています。同じ容量でも、実質的に利用できるデータ量が多く、快適なことを特徴にしていると言えるでしょう。
MVNOの競合他社も徐々に中容量の料金プランを拡充していますが、専用帯域を設けるなど、思い切った対策を取っているのはNUROモバイルならでは。
実際、通信が混雑しがちなお昼休みの時間帯でもNEOプランは速度低下があまりなく、22年8月時点で東京・港の虎ノ門で計測した際には200Mbps以上の速度が出ていたといいます。これこそが、専用帯域を設けた効果です。
一方で、単純に価格だけを見ると、大手キャリアのオンライン専用プランと同水準なのは事実。NEOプランの2699円は、ドコモのahamoの2970円と271円差しかなく、データ容量も同じです。
しかもahamoには、5分間の音声通話定額までついています。20GB帯はKDDIのpovo2.0やソフトバンクのLINEMOなど、競合も多い激戦区です。
これに対し、NEOプランWの40GBは大手キャリアが未開拓の容量帯。ahamoなどのオンライン専用プランでは、少しデータ容量が足りないというユーザーにとって、約1000円の追加で40GBになるのはいい選択肢と言えるかもしれません。
ahamoでもデータ容量の追加はできますが、1GBごとだと割高で、「ahamo大盛り」を選択すると一気にデータ容量が100GBに上がってしまいます。金額も4950円になり、ドコモがデータ容量無制限で提供する「5Gギガホ」などへの変更が視野に入ってきます。
povo2.0やLINEMOにも40GBプランはなく、NUROモバイルが“ちょうどいい選択肢”を提供しようとしていることがうかがえます。
とは言え、MVNOで3980円という料金は異例とも言える高さ。大手キャリアに対して品質やサポートが劣るイメージがあるだけに、こうした風評をどう払しょくしていくかが成否を左右するカギになりそうです。
(文・石野純也)