異常音を工場のノイズに埋もれずに検知
本システムは、「収音センサー」(上図左)と「データ閲覧アプリ」(上図右)から構成されており、凸版印刷のスマート点検支援サービス「e-Platch(読み:イープラッチ)」専用のツールとして提供されます。これにより、設備や機器が発する異常音を、工場や施設内に定常的に存在するバックグラウンドノイズに埋もれることなく検出し、アラートを発報することや、異常の履歴をレポートとして出力することが可能となります。
ZETAの採用で低コスト運用が実現
「e-Platch」は、工場や施設において、排水の水位や水素イオン濃度をはじめとする環境データを自動収集し、工場全体のリスクマネジメントを強化する統合的監視システムです。センサー機器から監視システムへのデータ伝送には、次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)ZETA(ゼタ)を採用しています。
ZETAは、IoTに適したLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク規格。超狭帯域(UNB: Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信、メッシュネットワークによる広域の分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能といった特長を持っています。基地局の設置を少なくでき、低コストでの運用が可能です。
「e-Platch」に接続できるセンサー機器のラインアップに収音センサーが加わったことにより、設備の異常を早期発見し、機械部品の交換時期を適切に把握することで、保守・点検作業の効率化を実現します。
収音センシングシステムの特長
・異常音の発生を警告発生している音を収録し、収集した音データの160ヘルツから1万6,000ヘルツの帯域を21分割して、周波数帯ごとの音強度データを取得、独自の手法によりデータを圧縮・分割してアプリ側に伝送します。
アプリ側では、受信したデータのデシベル値を周波数帯ごとにプロットし、音の傾向をグラフ上に見える化、ユーザーが設定した「しきい値」を超過した場合には、アラートを発報します。
・配線や電源の確保が難しい場所にも設置可能
ZETAの持つ「超狭帯域による多チャンネル通信」「メッシュネットワークによる分散アクセス」「双方向での低電力通信」といった特長と、付属の収音マイクが防水仕様であることを活かし、工場や施設の屋上や、地下の入り組んだ場所にも設置が可能です。
これにより、それらの場所で稼働する装置の故障予測・騒音対策が取れるようになります。
・従来品の半額以下の価格を実現
アラートを発報したり、収音したデータの傾向から「異常」を定義・検出したりするなどの機能を、センサー側からアプリ側に移行することで、従来品と比較して半額以下での提供を実現しました。
これにより、同額の予算内でセンサーの設置個所を倍以上にできるなど、監視できる対象をきめ細かく設定することが可能となります。
検知しにくい工場の異常音
工場や施設では、複数の装置が同時に稼働しているため、常に機械音や作業音が発生しています。これまでは、施設の管理者が一日数回現場に足を運び、これらバックグラウンドノイズの中から、ボルトのゆるみから起きる衝撃音、部品の劣化に起因する機器の摩擦音など、機器の不具合やその予兆を示す異常音を経験に基づいて聞き分け、異常を察知していました。
このプロセスを遠隔管理するためには、異常音検知センサーなどの導入が必要となります。
しかし、市販されている機器は、一台の価格が数十万円台と高価で多機能なものから、音源が発する音の大きさのみを記録するものまで、製品の幅が広く、適切な機器やシステムの選択には高い知見が必要でした。
さらに、検知した信号を伝送するためには、ケーブルを敷設し、電源を確保する必要があり、このことが工場や施設に新しいシステムを導入する上での障壁となっていました。
凸版印刷はこの課題を解決するために、スマート点検支援サービス「e-Platch」に、異常音検知の機能を追加。
凸版印刷は、約50年におよぶ半導体設計事業により培った回路設計技術や、クラウドサービス事業におけるデータ加工のノウハウを駆使しすることで、音データをZETA通信の環境下で効率的に取り扱うことを可能とし、今回のソリューションを実現しました。
今後同社は、今回開発した収音センシングシステムに加え、温度・湿度・照度・二酸化炭素濃度を計測する「マルチセンサー」を含む各種センサーをラインアップした「e-Platch」の拡販を進める方針です。
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001107.000033034.html
(文・Motohashi K.)