冷却設備におけるティア4(データセンターとしての品質が最も高く維持されている基準)レベルでの安定稼働に成功しました。
従来のデータセンターと比較して、サーバー冷却のために消費される電力を94%削減し、データセンターの電力使用効率を示すPUE値1.05(現在稼働中の一般的なDCのPUE値は1.7)を実現したとのこと。
今回の実証実験の結果をもとに、3社では、大規模データセンターからコンテナ型データセンターまで幅広い活用を想定し、脱炭素に貢献するサステナブルな液浸データセンターとして、2023年度中に提供を開始する予定です。
拡大するデータセンターでは排熱処理が課題
今回の実証実験を行った背景には、様々な課題があります。第一に、世界的なDX の進展や新型コロナウイルス感染症の拡大による働き方の変化、自然災害へのBCP対策により、クラウドサービスおよびデータセンターの需要が急速に拡大していることがあります。
その一方で、IT機器の高性能化・高密度化により、IT機器による発熱がこれまで以上に大きくなってきており、データセンターでの排熱処理が課題です。
サステナブルなデータセンターを実現するためには、電力消費量の削減と排熱効率のよいデータセンター運用が重要です。サーバーが発する熱を高効率の冷却装置で冷却することで消費電力量を抑制し、環境に与える影響を最小限に留めることが求められています。
こうしたことから、今回、KDDIの小山ネットワークセンター(以下、KDDI小山NC)にて、液浸データセンターを試験運用し、各分野で社会インフラを担っている3社が持つ技術や知見をそれぞれ持ち寄り、安定性や成立性を確認しました。
省エネだけではなく低騒音も実現
実証の概要は以下の通りです。2022年4月1日からKDDI小山NCにて、100kVA相当のサーバーなどのIT機器と液浸冷却装置をデータセンター内に収容し、試験運用する実証を行いました。
最適化された外気空冷を行うフリークーリング装置を開発し、データセンターでの実装を想定した排熱処理能力の向上と省電力化を実現。
また、液浸冷却装置およびフリークーリング装置に高い可用性を持たせ、ティア4レベルの液浸データセンターでの実装設計を具現化し、安定稼働の成立性を確認しました。
大幅な冷却の電力削減などを実証
今回の実証実験の成果は、以下の通りです。(1)冷却効率の立証
・最適化された外気空冷を行うフリークーリング装置を含む液浸システムを開発し、データセンターでの実装を想定した排熱処理能力の向上と省電力化をすることで、サーバー冷却のために消費される電力の94%削減とPUE値1.05を実現しました。
(2)高可用性の実現
・液浸冷却装置およびフリークーリング装置に高い可用性を持たせ、ティア4レベルの液浸データセンターでの実装設計を具現化し、安定稼働の成立性を立証しました。加えて、IT機器が発する騒音は空冷方式に比べて、日常の会話レベルとなる約35dBの低減を実現しました。
(3)商用化を見据えた、保守マニュアル整備
・国内での商用利用を見据え、保守体制の検討、保守マニュアルの整備も含めた実践的な運用を行いました。
DXへの寄与を目指す3社の役割
今回の実証実験における各社の役割は以下のようになっています。・KDDI:本実証の円滑な管理推進。可用性を考慮したデータセンターへの液浸システム導入におけるシステム設計。IT機器の導入、保守、運用体制の課題解決に向けた取り組みとフィールドトライアル。
・三菱重工:フリークーリング(外気空冷)装置の開発および試作。液浸システムの設計、構築。液浸システムの制御および運用試験。フリークーリング(外気空冷)装置の保守・運用設計。
・NECネッツエスアイ:液浸データセンター向けの設備導入設計と課題抽出および改善。液浸装置、電源設備などの調達、設計、施工を通して課題抽出と改善。統合監視システムの SI設計構築を通して監視、管理、制御手法の検証。最適な保守設計、運用、保守スキームの確立。
3社は今後も、本実証を通じて、国内のデジタルトランスフォーメーション(DX)の発展に寄与するとともに、脱炭素化および地球環境保全に貢献していくとのことです。
PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000082252.html
(文・Motohashi K.)