一見、相反するこの2つの問題であるが、最近紹介した太陽光発電する“盆栽キット”をはじめ、さまざまなツールや技術が開発され、問題の解決に取り組んでいるようだ。
その1つとして、“圧電”現象を活用し、周囲の環境で生じる“音”や“振動”のエネルギーをスマートフォンのバッテリー充電にあてようというプロジェクトが進められている。この“圧電”とは、ある素材が曲げられたり、ねじられたり、一定の負荷がかけられたときに、電荷を発生させる仕組みのこと。
2010年には、Young Jun Park氏、Sang-Woo Kim氏の韓国の研究チームがある理論を提唱。スピーカーが電気信号を変換して、音を発生させる現象と同じように、その逆に、音を電気エネルギーに変換することが可能なのではないか、そしてその電力でモバイルデバイスを充電することはできないだろうか、といったテーマである。
研究チームとしては実現可能な技術であるとして、約50ミリボルトの発電に成功したという。ただ、通常の携帯電話の充電には、4~5ボルトの電力が必要であり、基準値には遠く及ばないものであった。
最近、電気通信機器メーカーのNokiaと、Queen Mary University of London (QMUL) の共同研究において、必要量の発電に成功したという。Joe Briscoe氏ら研究チームでは、周囲の環境、例えば人の声、音楽、車の走行などの交通音などを集め、その音を電気エネルギーに変換するナノ発電装置を開発。酸化亜鉛をナノロッドのシートの形状に成形し、微小なナノロッドは、音波を受けると反応して折れ曲がり、その負荷が電気を発生させるという仕組みだ。
金属の中でも特に、金が伝導性の高い物質であるが、酸化亜鉛も同様に高い伝導性をもつ。金よりはるかに安価な酸化亜鉛であれば、大量生産のコストもグッと抑えられるだろう。
また、Lawrence Berkeley Natural Laboratoryでは、圧電効果を発揮するウィルスの研究が進められている。層になったウィルスは、1度指でタップするだけで、6ナノアンペアの電流を生み出すことが観測されているが、400ミリボルトの電圧を発生させる可能性を含んでいるという。
こうした技術の研究開発が進めば、将来的にユーザーは、周囲の外環境などからモバイルデバイスの充電がおこなえるようになる。超クリーンなエネルギーを用いた、夢のような時代がくるかもしれない。
Young Jun Park,Sang-Woo Kim
Queen Mary University of London (QMUL)
Lawrence Berkeley Natural Laboratory