LIFULL HOME’Sの住みたい街ランキングはアンケートではなく、実際の問合せ数から算出しており、実際にユーザが家を借りたい街が分かるのが特徴です。
今回、ランキング結果からどのような世の中の動きが読み取れるのか住宅市場を分析するLIFULL HOME’S総研チーフアナリストの中山登志朗さんに解説してもらいました。
LIFULL HOME’Sの「住みたい街ランキング」の集計方法について
LIFULL HOME’Sの住みたい街ランキングは、買って住みたい街と借りて住みたい街をユーザーからの問い合わせの数をもとに集計したものです。実際にユーザーの皆さんが住みたい!と本気で探している街のランキングですから、今回から「みんなが探した!住みたい街ランキング」と名称を変更しました。2022年1月~12月に、LIFULL HOME’Sに掲載された物件の中から、メールや電話、店舗訪問など、ユーザーからリアクションがあった物件を、最寄り駅ごとにカウントし集計しています。
首都圏は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県が対象地域で「借りて住みたい街」ランキングは、賃貸物件に対する問い合わせ数をカウントしています。
「いま住むならどこに住みたいですか?」と聞くアンケート調査ではなく、実際に住むことを前提に、問い合わせしたユーザーの“総意”がこのランキングの結果に反映されています。
なお、対象になる駅は首都圏で1400を超えますので、ベスト100に入るだけでもたくさんのユーザーからの支持があることを意味しています。
「借りて住みたい街」TOP10結果発表と考察
「借りて住みたい街」のTOP10には、交通利便性の高い都心エリアは上位に入らず、近郊・準近郊のベッドタウンが並びました。2019年には、池袋、高円寺、三軒茶屋など都心周辺エリアが上位を独占していました。消費者物価の高騰で生活コスト全般を見直す必要もあり、テレワーク対応で毎日通勤しない前提での“脱・都心”は賃貸市場でも明確なトレンドです。
ランクインした街は、いずれも都心からダイレクトアクセスが可能で、駅周辺が栄えている割に賃料相場が比較的安価という点で共通していて、テレワーク時代の賃貸ニーズや条件を満たしていることが上位進出の最大の理由です。
ランキング第1位は神奈川県の本厚木でした。これで3年連続のトップです。“Withコロナ”生活が長期化することで、利便性とコストのバランスが取れた本厚木の評価は完全に確立したようです。
テレワークが定着したことによって、首都圏での賃貸ニーズは、賃料が高い都心周辺から交通利便性が相応に良好で賃料水準が比較的安価な郊外に移っています。
ランキング上位の位置関係と順位の上下移動を示したヒートマップを見ると、「借りて住みたい街」の上位は首都圏郊外にほぼ集中していることが明らかです。
また都心周辺も順位を回復しているもののまだ強い勢いは感じられず、賃料の高いエリアは依然としてユーザーの支持を得にくい状況にあります。
「借りて住みたい街」急上昇ランキング
「借りて住みたい街」の急上昇ランキングでは、都心部からのアクセスが良く賃料相場が比較的安価なエリアが並びました。急上昇1位の笹塚は、京王線と京王新線が乗り入れており、都営地下鉄新宿線の直通運転での始発駅なので交通利便性が極めて高く、都心方面に僅かに戻り始めた賃貸ニーズの受け皿となっています。
まとめ
「借りて住みたい街」ランキングではテレワークが完全に定着し、消費者物価も上昇している中で、部屋数の多さやリーズナブルな家賃を求めた結果、郊外での生活を検討するユーザーが増え続けていることが明らかです。LIFULL HOME’S公式サイトでは、首都圏版の他にも中部圏/近畿圏/九州圏版のTOP100を公開していますので、ぜひご確認ください。
<著者プロフィール>
中山登志朗
株式会社LIFULL
LIFULL HOME’S総研 チーフアナリスト
出版社を経て、1998年から不動産調査会社にて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。2014年9月にHOME'S総研副所長に就任。
不動産市況分析の専門家としてテレビ、新聞、雑誌、ウェブサイトなどメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、年間多数の不動産市況セミナーで講演。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。
(一社)安心ストック住宅推進協会理事