3GB、5GB、30GBの3プランを用意しており、それぞれ料金は2178円、2618円、3058円になります。通話料は、「Rakuten Link」の法人版から発信した場合、個人向けと同じく無料です。
個人向けではワンプランを貫いてきた楽天モバイルですが、法人向けを3プランにしたのは、一定の合理性があり、ニーズに基づいていると言えるでしょう。
法人回線は、自分で持つのではなく、人に持たせる料金プランだからです。個人の裁量で持つ携帯電話とは異なり、法人の場合、会社側がその従業員に持たせるケースがほとんど。
コスト管理をする立場からすれば、自動で料金が大きく上下してしまう仕組みは導入しづらいと言えるでしょう。
UN-LIMIT VIIと比べると、3GBや5GBのプランはやや割高感がある一方で、30GBプランは比較的リーズナブルです。
UN-LIMIT VIIは20GBを超えると無制限になり、料金は3278円になりますが、法人向けの場合は、20GBを超えても30GB未満なら3058円に抑えられます。
また、KDDIへのローミングや海外ローミング時のデータ容量が別計算になっている点も、個人向けプランとの違いです。
楽天モバイルが法人向けのサービスを展開するのは、“見込み客”が多かったからです。代表的なのは、楽天市場の出店者。まずは取引先に売り込んでいくというのが、楽天モバイルの戦略と言えます。
楽天グループの代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、「楽天(グループ)は40万を上回る法人とビジネスさせていただいている」と語り、初年度の目標として100万契約を掲げました。1月30日に提供を開始し、すでに600超の顧客に利用されているようです。
この法人向けプランを先行発表したのが、楽天市場の出店者が集う年1回のイベント「楽天新春カンファレンス」だったのも、そのためです。ここでも、三木谷氏は、楽天モバイルの成功が楽天市場の売上げを押し上げるとして、法人契約への協力を呼びかけていました。
楽天新春カンファレンスには、契約を結ぶための専用ブースも設けられていました。それだけ、潜在ニーズがあったというわけです。
法人ユーザーの場合、個人とは異なり、契約を簡単に切り替えることはありません。個人向けでは、UN-LIMIT VIIの導入で1GB以下0円を廃止し、多数のユーザーが短期間に流出してしまいましたが、法人では同様のことが起こりづらくなります。
契約数を伸ばしていかなければならない楽天モバイルにとって、法人向けプランの導入は必要不可欠だったと言えるでしょう。
料金プランとしては、他社が展開している法人向けプランよりも割安感があります。例えば、ドコモの場合、「5Gギガライト」が1GB以下の場合、料金は3465円です。
法人プランは複数回線を持つのが大前提のため、各種割引はほぼ適用されますが、それでも1GB以下で2178円です。ここに、別途通話定額などの料金もかかります。
楽天モバイルも最安プランは2178円ですが、データ容量が3GBと多く、通話料も無料。料金の安さにこだわってきた同社ならではの金額設定です。
ただ、これはあくまで“表”に出ているメニューの話。法人向けに関しては、2004年の電気通信事業法改正で相対(あいたい)契約が認められているため、直接契約で格安な料金で回線が卸されていることがあります。
直接契約で、その企業に合わせた料金プランを設定できるのが相対契約の特徴。特に、大企業など、回線数を見込める法人の場合、ボリュームディスカウントが効きやすくなります。
KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏も「法人は相対契約が多い」と語ります。また、法人向けの回線の場合、必ずしも人が音声通話やデータ通信をするわけではありません。
どちらかと言えば、現在大手3キャリアが注力しているのがIoT向けの回線です。自販機やタクシーのタブレット、決済端末、監視カメラなど、モバイルネットワークはさまざまな場面で使われています。
こうしたIoT端末は、必ずしもデータ通信量が多いわけではありません。1回線あたりの料金も、非常に安価に設定されています。そのぶん、数は膨大になります。
楽天モバイルの場合、あくまで人が対象。現時点では、IoT向けの料金プランが設定されていません。IoT向けの回線は各種ソリューションとセットで展開されることも多いため、こうした分野に楽天モバイルが踏み込んでいけるかが今後の行方を左右しそうです。
(文・石野純也)