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私立小の教員コミュニティをなぜ作った?立ち上げ教員が語る学校の垣根を超える意味。コロナ禍での教育ノウハウ共有も

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モノグサ株式会社、広報の中村です。弊社が提供する記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」は、塾や学校を中心とした4,000教室以上で活用されています。東京都中野区にある私立小、宝仙学園小学校もMonoxerを活用いただいている学校の1つです。

宝仙学園小学校の吉金佳能先生は、先生として活躍しながら、私立小を中心に小学校の先生が集まる場として「192Cafe」を設立。コロナ禍に揺れる日本教育に大きな貢献を果たしました。そんな吉金先生に私立小への思いや教育についてお話をお聞きしました。

——吉金先生ご本人はずっと国公立の学校で学ばれたそうですが、先生として私立小学校に勤務されている今、公立小学校との違いは感じますか?

吉金先生:一番の違いは建学の精神やポリシーを強く持っているところだと思います。たとえば私の勤め先である宝仙学園小学校では、品格と知性を兼ね備えた人を育む「人間造り」という建学の精神がありますが、それに基づいていれば、学習の仕方はある程度自由に任されています。

たとえば、クラブの活動でプロジェクションマッピングをやってみたいと打診すれば予算をつけてもらえます。実際Roboクラブで児童主体で、学校や宝仙寺というお寺でプロジェクションマッピングを実施しました。

結果の良し悪しは別の問題として、先生の挑戦したい気持ちを汲んでくれるのは私立ならではの特徴だと思っています。

——あらかじめ決められたカリキュラムに則るのではなく、先生方の裁量に委ねているということですね。

吉金先生:はい。こういう話をすると、「私立だからできる」「私立にしかできない」とよく言われるのですが、実際にその通りです。日本の教育は、学習指導要領に基づいて、みんなが同じことを同じように勉強するという風潮が根付いています。

もちろん、国の方針で変えられない部分はあると思いますが、私自身は外から与えられるものを取り込むインプット中心の教育に違和感を抱いている部分もあります。

私立はそういう固定観念にとらわれず、教育の形が比較的自由なのが大きな強みです。その特徴を活かして、日本の教育をリードする存在になるべきだと思っています。

一般的には裾野の広い公立の教育がフューチャーされる傾向が強いように感じますが、私学でもおもしろく挑戦的な取り組みがたくさんなされています。

学校の垣根を越えて私立小の先生がつながる場を

——吉金先生は私立小学校の先生がつながる「192Cafe」の立役者とのことですが、そもそも「192Cafe」を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?

吉金先生:私立の良さや魅力を世間に伝えていくためには、1校だけでいろいろやるよりも、他の学校とつながって取り組んだ方が効率的だと思ったのが直接のきっかけです。商店街や観光地と同じ原理です。1店舗で勝負するより、複数で見せたほうが魅力的に見えますよね?

そこで手始めに、宝仙学園小学校で公開研究会を実施したところ、思った以上の反響がありました。そこで、私立小学校の先生が集まる場所として、「192Cafe」の設立を決めました。

192という数字は、当時の私立小学校連合会に所属する学校数で、すべての学校をつなげたいという思いを込めました。

Cafeは、カフェのようにみんなが気軽に集まれる場所という意味と、コミュニケーション、コラボレーション、クリエーションに共通する「C」を含めたダブルミーニングになっています。

——吉金先生と同じような気持ちを持っている先生が多かったということですね。

吉金先生:そうですね。当時は私立小が約192校、先生は5,000人ほどいたのですが、他校とのつながりはほとんどなかったので、学校という垣根を越えたつながりを求めていた人は多かったのだと思います。

実際、192Cafeを立ち上げた翌年1月には大規模な会合を開催したのですが、おかげさまで大盛況にて終えることができました。

——現在、コミュニティにはどのくらいの方が参加しているのですか?

吉金先生:現在は、Peatixには約800人のフォロワーがいて、これまでのイベントには、延べ約2,300人の方にご参加いただいています。メインターゲットである私立小は、全国の約半分にあたる学校の先生が参加したことのあるようなコミュニティになります。

コロナ禍ではオンラインセミナーも開催していました。数日前の告知でも常時100人程度は集まるような大規模なコミュニティに発展しました。

最近は私立小の先生だけでなく、公立小や企業の方など、さまざまな教育関係者の方も集まるようになり、コミュニティとしての広がりを実感しています。

コロナ禍でのオンライン授業移行にも貢献

——新型コロナ感染拡大防止のために、2020年3月2日から全国一斉での休校要請が出されました。192Cafeの設立はコロナ流行前ですが、コロナ禍で実感できた影響などはありましたか?

吉金先生:休校要請の初日から2つの私立小がオンライン授業への移行を開始しました。これは、当時は驚くべきことであり、まさに私学ならではの取り組みだったと言えます。

その事実とノウハウを192Cafeのネットワークを通じて発信し、コミュニティに参加している私立小の多くがオンライン授業への移行をスタートしました。おかげでスムーズにオンライン授業に切り替えられた学校も多かったようです。

——192Cafeのネットワークが形成されていたからこそ、オンライン授業のノウハウもすぐに共有できたのですね。

吉金先生:そうですね。192Cafeがなかったら、最初の2校のみが独自にオンライン授業を行っていて、他の私立校にはすぐには浸透しなかったかもしれません。

その後、何度かオンライン授業に関するセミナーをWEB上で行ったのですが、私立小だけでなく、公立小の先生方もたくさん参加していました。

コロナ禍で教育現場はかなり混乱しましたが、オンライン授業の有効的な活用法を広めて日本の教育に貢献できたのは大きなことだったと自負しています。

教師の勘と経験にテクノロジーをプラス

——最後に吉金先生が今後目指すところや、理想の教育論などを伺いたいと思います。

吉金先生:理科の実践家として、本校2代目校長の栗山重先生の教えである「教えてはいけない、学ばせてもいけない、学びを支援することが教育だ」という言葉へ挑み続けていきたいと思っています。

——宝仙学園小学校では、Monoxerも活用いただいていますが、ICT教育を重視しているのでしょうか?

吉金先生:教員が出来ないこと、ICTに任せた方が良いものは積極的に活用したほうが良いと考えています。子どもたちが自分にとって合うツールを選べるような環境にしてあげるのが良いと感じています。

授業で利用するICTは教師が選んで採択するのですが、私は汎用性が高く、なるべく長く使えるものを重視しています。

学習においては、Monoxerは良いツールだと感じています。授業をベースにする前提で、知識の定着と広がりをMonoxerに任せることができます。

紙のようなアナログだと、知識の徹底のために、画一的なプリントの繰り返しを行うことになります。これは既に習得できている児童には退屈で非効率なものであり、習得が進まない児童には苦痛で自己肯定感が落ちる要因になることもあります。

たとえば、「10回書けば、漢字や単語を覚えられる」というのは、教師の勘と経験からですよね。児童が自分で選んでいるわけではなく、教師から与えられている覚え方です。

しかし、Monoxerを活用すると個人の記憶定着度に合わせて、難易度を調節して問題を出し続けてくれます。これによって、子どもの負担を最小限に減らした形で記憶定着に取り組んでもらえます。

だから、教師の勘と経験に、テクノロジーをプラスすることが良い教育につながると考えています。実際、勉強が苦手な子ほど助かっていますよ。

——吉金先生は今後どのような教育に取り組みたいと思っているのでしょうか?

吉金先生:日本教育における私立小学校の存在感を高めていきたいという思いもありますが、やはり一番は宝仙学園小学校に恩返しをすることですね。

目の前の仕事をひとつひとつ積み重ねて、お世話になった宝仙学園小学校に還元していけたらなと思っています。その上で、今後も私立小学校、宝仙学園小学校だからこそできる教育を模索し続けたいと思います。
<インタビュイープロフィール>

吉金佳能
宝仙学園小学校
教諭

宝仙学園小学校教諭。同校の理科専科、ICT教育研究部主任。現在は、東京私立初等学校協会理科研究部主任も務める。東京地区有数のICT先進校の同校で、ICT教育研究を牽引。著書『小学校理科 探究的な学びのつくり方』、『ICTで変わる理科授業 はじめの一歩』(ともに明治図書)他。
<著者プロフィール>

中村大志
モノグサ株式会社
広報

2013年新卒で株式会社マイナビ入社。求人広告の営業に従事した後、2015年より食品・ヘルスケア専門のPRエージェンシーに入社して食品やサプリメント等の商材のPR業務に従事。2020年にモノグサ株式会社へ1人目の広報担当として入社後、自社と提供しているプロダクト「Monoxer」の認知向上と支持者の増加に向けて、PR活動を担当している。

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