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Tech シャープ、LINEの事例から見る広告漫画の変化。消費者の感情にまで響くストーリーをどう届けるのか広告漫画専門企業が語る

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シャープ、LINEの事例から見る広告漫画の変化。消費者の感情にまで響くストーリーをどう届けるのか広告漫画専門企業が語る

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漫画を利用した広告が見られるようになっています。広告漫画は従来、企業情報を伝達することが役割でしたが、最近は消費者の感情にまで響くようなストーリー性を重視した広告漫画が増えています。

消費者のニーズに合わせて広告も変化しています。日本初の広告漫画専門を提供する株式会社トレンド・プロの絹巻さんにご寄稿いただきました。

広告漫画の変化

進研ゼミの勧誘を目的とした広告漫画を読まれた方も多数いらっしゃるのではないでしょうか。漫画は、娯楽としてだけでなく、広告を目的として使われています。このような企業の商品やサービスを訴求した、いわゆる「広告漫画」をいたるところで目にする機会が増えてきています。

従来は企業が伝えたいこと(性能や値段など)を漫画にする情報伝達式のスタイルだったものが、近年、消費者の感情に訴えかけるスタイルが増えてきています。広告で重視されるポイントが「機能的価値から情緒的価値」へ変化してきたのです。ここでは、その経緯を考えます。

従来の広告漫画の特徴

まず、従来の広告漫画の特徴は以下のものが挙げられます。
・自社の製品・サービスを漫画でわかりやすく説明
・製品を知る・興味を持ってもらう入口、つまり「アイキャッチ」としての役割がメイン
・情報伝達が主軸であるため、漫画のストーリーについては優先度が低い

企業が伝えたいこと、例えば商品やサービスの機能的価値を訴求するスタイルが主流でした。しかし、メディアの発達とともに広告が氾濫し、日々大量の広告を目にしている消費者はこのような一方的に売りつける形式の広告は見飽きているのではないでしょうか。

近年の広告の変化

次に、近年の広告やプロモーションの変化について見ていきましょう。
・SDGsなど世論や消費者の感情を意識したプロモーションが増えてきた
・DXが進み紙以外のデジタル広告(Web広告、デジタルサイネージ)が増えた
・SNS広告が増えた
・ファン獲得のためのキャラクター活用や連載漫画(商品・サービスのメリットは直接訴求しない)が出現した

トレンド・プロへの問い合わせでも、パンフレットや冊子用の漫画広告が減って、漫画を使ったLPやWeb広告、SNSやWebメディアでの連載が増えています。

「ESG投資」(環境への配慮や社会貢献などにも着目した投資)なども耳にするようになりましたが、広告においても世論や消費者の感情を意識した訴求内容に変化してきています。

消費者に響く広告とは?

では、実際に消費者に響く広告とはどんなものでしょうか。上記の変化をみてみると、広告の内容が「機能的価値」から「情緒的価値」に変化してきていることがわかります。

機能的価値……製品やサービスの機能・性能がわかる。

情緒的価値……製品やサービスに対する好印象。製品やサービスを使用したことで得られる満足感。ブランド力。

マーケティング論の大家、コトラーも言っていますが、「いいものを作れば売れる」という時代は終わり(マーケティング2.0)、製品やサービスの付加価値・情緒的価値が重要視されるようになってきています。

じつは、情緒的価値への訴求を20年ほど前から行っている企業があります。それがAppleです。

例えば、1990年代の末、「Think different」というスローガンで展開した一大広告キャンペーンは、「Apple製品を使うことはかっこいい」と思わせるような、情緒に訴えかけるようなものでした。「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えている」というコピーで展開された広告は、Apple製品のスペックについては触れていません。

化粧品でも、同様のことが言えます。「機能」が優れた化粧品は、世の中に多数存在していますが、その中から購入に至る化粧品には、「使った結果得られる経験が想像しやすい」「環境にやさしい成分を使っている」などの理由があります。

こういった情緒的価値への訴求を重視した広告が、近年の消費者の心を動かしています。不自由ない暮らしをしている現代人は、自分がどんな世界と関わり、自分の消費や活動がいいことにつながっているのだ、と納得したいのかもしれません。

「ストーリーを重視した漫画」とは?

このようなトレンドの中で、「ストーリーにフォーカスした広告漫画」が登場しました。製品やサービスの訴求はほとんどなく、終始エンタメに近いストーリーが展開される広告漫画です。

読者の情緒に訴えかけることで、製品やサービスのイメージ付けを図っています。具体的に見ていきましょう。

【シャープ株式会社】

ストーリーを重視した広告漫画の例として、シャープ株式会社の事例を挙げます。シャープが立ち上げた美容家電ブランド「beauté A」(ボーテアー)のPR施策として、漫画家の弓家キョウコ先生執筆でオリジナルの恋愛漫画を制作しました。

この案件には私(絹巻)も編集担当として参加しています。制作した漫画は、弓家キョウコ先生のInstagram・Twitter、beauté AのInstagramアカウントからそれぞれ配信しました。



第1話
https://www.instagram.com/p/CX0XaG3l5Pc/
第2話
https://www.instagram.com/p/CYtCd8Dl-KO/
第3話
https://www.instagram.com/p/CZRCpWsJ7IX/
第4話
https://www.instagram.com/p/CZyg_VOpwZS/?hl=ja

この広告漫画は、過去の経験から恋愛に臆病になってしまった主人公(20代後半女性)と、そんな女性に淡い恋心を抱く同僚の後輩男子が一歩を踏み出すまでを、全4回に渡って描きます。

その中で製品自体は登場しません。「beauté A」のメイン製品であるドライヤーを想起させる、「濡れた髪」が漫画の一部に出て来るくらいです。もちろん、製品についてはセリフでも言及していません。

有名漫画家と企業のタイアップ広告は、拡散力がある一方、一部の読者からは「PR案件」として漫画の内容に関わらず毛嫌いされてしまう可能性もあります。

しかし、この漫画シリーズは、公開後すぐにコメント欄が「キュンキュンする!」「早く続きを読みたい!」といった感想であふれ、PR案件としては異例の盛り上がりを見せ、弓家キョウコ先生のファンからとても好意的に受け入れられています。※ステルスマーケティングとならないよう、「#PR」とハッシュタグをつけています。

【LINE占い】

LINEが展開するオンライン占いサービス「LINE占い」の認知拡大・ダウンロード数増加を目的として、SNSで人気の漫画家・池田ルイさんとコラボした漫画です。池田さんのSNSアカウントで投稿した他、特設ページにもオリジナル連載漫画を掲載しています。

漫画の内容は、恋愛経験を重ねた結果、男性をジャッジする癖がついてしまった主人公が、本来の恋心を思い出し次の一歩へ踏み出すまでを描きます。各話1~2コマほど、LINE占いでチャットをしている絵が登場しますが、漫画内でそれ以上の言及はありません。広告漫画ながら、池田さんの作家性がいかされたストーリー構成となっています。

第1話
https://fortune.line.me/talk/event/campaign/manga/new/ikeda01.html?utm_
第2話
https://fortune.line.me/talk/event/campaign/manga/new/ikeda02.html?utm_
第3話
https://fortune.line.me/talk/event/campaign/manga/new/ikeda03.html?utm_
第4話
https://fortune.line.me/talk/event/campaign/manga/new/ikeda04.html?utm_

情緒に訴えることができるというだけでなく、作家自身が製品・サービスを体験することでリアルな感想を漫画にできるため、「好きな作家(=インフルエンサー)がお勧めしている」という信頼感で包んで情報を届けられるという特長があります。

まとめ

物やサービスがあふれ、ネットにも広告が氾濫している現在、機能を伝えるだけでは、消費者の目に届かず他製品と差別化ができなくなってきました。

そんな中で、これからの広告には消費者に情緒的価値という付加価値を与えられるかどうかが鍵となります。今後は、スペックを声高に主張して押し付けるのではなく、共感が得られるような広告がますます増えていくと考えられます。
<著者プロフィール>

絹巻玲奈
株式会社トレンド・プロ
広報担当

明治大学卒業後、新卒で株式会社トレンド・プロに入社。広告をはじめとした企業向け漫画の編集を行う。入社2年目に広報の立ち上げを行い、現在は広報・漫画編集・採用などに携わる。株式会社トレンド・プロ:https://ad-manga.com/

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