海外・国内のベンチャー系ニュースサイト | TECHABLE

TECHABLE

Tech 給与、労働環境から働きがいは生まれない? 仕事へのやりがいをどのように創っていくのか

Tech

給与、労働環境から働きがいは生まれない? 仕事へのやりがいをどのように創っていくのか

SHARE ON

このエントリーをはてなブックマークに追加
「働くモチベーションがわかない」
「仕事に対してやる気がでない」
「ワークライフバランスを大事にしたいから、仕事はほどほどにする」

そういった声を若手社会人の方を中心に、しばしば耳にします。

本記事では、人を仕事に駆り立てるものは何か、という点で「モチベーション」をテーマに、「人間の本質(Human Nature)」をビジネスに活かす組織戦略家集団である株式会社ITSUDATSUの代表取締役の黒澤伶氏に「働きがいを高める要因」「真本音による心の活性化」についての考察をご寄稿いただきました。

モチベーションと従来の組織管理手法

モチベーションとは、「行動の背景にある心的な動機付け」のことを言います。やる気の源泉、あるいは人が原動力となれるような要因とも言えるでしょう。

仕事において、「モチベーションは不要だ」というお考えの方も多くいらっしゃるかと思いますが、人間であるがゆえに、様々な感情や心理的な要因等で仕事の生産性が大きく左右されることもまた確かなことかと思います。

しかし、従来の組織管理論は、そもそも働く個人の仕事に対する動機付けの問題には関心がほとんどありませんでした。むしろ性悪説的な考えのもと、いかに人を管理、コントロールするにはと縛らねば人は怠けてしまうのではという考えが主流でした。

そうであるがゆえに、様々な制度や規則といった外的な報酬や強制力によっていかにして人を動機付けられるか、というお考えの経営者も多いように思います。

しかし、昨今「人的資本経営」が叫ばれ、従業員に対する人間的尊重をすることが大事であり、経営に人を中心に据えた戦略策定の重要性が高まっています。

人は様々な欲望もあり、状況や体験により、刻一刻と様々な感情の狭間で揺れ動くものです。この人間に対する「現実」をあるがままに受け入れることが人の本質的活性につながります。

人の本質的活性化とは

では、モチベーションを高めるためにはどのようにしたらよいのでしょうか。それには、「モチベーションの仕組みを理解すること」が重要です。

ハーズバーグの二要因論と働きやすさ・働きがい

モチベーションに関する有名な研究に、アメリカの心理学者であるハーズバーグの二要因論というものがあります。

人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなくて、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるとする考え方です。

人の欲求には2つの種類があり、それぞれ人間の行動に異なった作用を及ぼすことが調査でわかりました。

人間が仕事に不満を感じる時は、その人の関心は自分たちの「環境」に向いているのに対して、人間が仕事に満足を感じる時は、その人の関心は「仕事そのもの」に向いているとするものです。

ハーズバーグは前者を「衛生要因」、後者を「動機付け要因」と名付けました。そして、後者の動機付け要因がより高い業績へと人々を動機付ける要因として作用していると考えました。

【動機付け要因】
仕事に対して満足感を感じる要因。
(例)仕事の充実感、達成感、責任、昇進、承認、裁量、自己成長

【衛生要因】
仕事に対する不満をもたらす要因。
(例)上司の管理方法、給与、労働環境、作業時間

組織を活性化するためには、私は「働きやすさ」と「働きがい」という2つの側面が大事だと考えます。「働きやすさ」を整える手法として、給与条件の改善や福利厚生面の環境整備、オフィスなどの執務環境のグレードアップやフレックス制度などの充実などが挙げられます。

これらは積極的に人を動機付けるというものではありませんが、やはり衛生的側面として、不満を抑制する、という意味では重要な条件になります。

しかし、やはり内発的に動機付けるためには、やはりハーズバーグが提唱している「動機付け要因」なのでしょう。これらは「働きがい」を高めます。

自分の仕事に自分なりに裁量を持って取り組み、自由にチャレンジし、目標達成する過程の中で達成感を味わう。そして、さらに大きな責任感のある仕事が報酬として返り、自分の成長実感を確かに感じられる。

これが、組織や上司にも認められ、結果給与といった処遇にも結びつく。このようなサイクルこそが人をモチベートさせます。

真本音による心の活性化

先に述べたように、合理的・効率性を軸にしたシステム的発想の元で創りあげられた組織は人間の情緒的側面を無視しているように感じます。

弊社による組織活性・組織開発は、人の感情、さらには「心」こそが組織としての成果に重要な影響を及ぼすと考えています。

人には「心」があり、人の本質的な活性化には「心の活性化」が必須だと考えています。

ここからは「心」に焦点をあて、モチベーションの仕組みを考察していきたいと思います。

最近流行りのマインドフルネスや瞑想をしよう、というものではなく、弊社が考えるこの心の活性化とは、「想い」と「行動」と「成果」の一貫性からくる「悦び」そのものです。

つまり、確かな想いと元気な心で行動を起こしたら、望む成果を創ることができた、という体験そのもの(=主体的に自ら動くことの楽しさ)が人を本質的に活性化させると考えています。

さらに、そういった主体性を悦びとする人が集まることで起こる相乗効果により、組織は本質的に活性化をし始めます。

では、人の「心」はどうすれば活性化するのでしょうか。

私たちの心は、明確に2つに分けることができます。

①揺らぐ心
②揺るがない心

です。

①揺らぐ心とは、外部環境(=現実・体験・出来事・情報・・・etc.)からの影響を受けながら出来上がる心のことをいいます。
外からの影響により、その反応として反射的に発生するので、これを『反応本音』と我々は呼んでいます。

①に対して②揺るがない心とは、外部環境がどうであれ、それによって揺らされることのない確固たる心です。これを『真本音』と呼びます。

この『真本音』は、常に自分の中心にあり、それ自体、進化(深化)はするが、本質は変わらないものです。

多くの場合、それは自分自身の生き方への「揺るがぬ願い」であったり「揺るがぬテーマ」であったりすることが大半です。そのため、真本音は特定の状況や環境を選ばないため、「人生の願い」「人生のテーマ」と表現できます。

つまり、自分が自分である以上、「一生変わらないもの」です。

この「真本音」と「反応本音」は明確に区別されます。

「反応本音(=揺らぐ心)」に基づいて、目標設定をしたり、決断したり、行動を起こす人は何らかの外部要因によって心が揺れやすいようにできています。

例えば、3日坊主になったり、すぐに気が変わったり、後悔したり、いつも迷っていたり、悩んでいたりすることが多いです。

どのような決断をしようとも、どこか迷いがあり、潔く進めないことが多く、そのため、自分が期待する結果は出づらくなり、待ち望んでいる現実や人生を創り出しにくくなります。

しかし、一般的には、実は心の健康な人でも、1日の内、約9割は反応本音に基づいて生きている(行動を決めている)傾向が多いとも言えます。

それに対して、「真本音」とは、その人の心の中では「揺るがぬ存在」であるため、不必要な葛藤は起きず、どのような現実を目の前にしても、どのような状況に直面しても、外部環境からの影響は受けません。

真本音は誰の心にも存在しますが、残念ながら自覚できている人は非常に少ないのが現状です。しかし、真本音に基づいて生きる度合いが、その人自身の人生そのものに対して「腹の据わり度合い」や「覚悟の度合い」に著しく影響を与えます。

単純に言えば、

①腹が据わり、自社の成長やミッションを果たすことに覚悟を決めている
②自分の意思が定まらず、与えられた業務のみをやろうとする

という仕事に対する心構え次第で成果は大きく変わります。

「真本音度合い」が高い人というのは、①の度合いの高い人であり、「真本音度合い」を高めるということは、①の度合いが高まっていくことです。

また、この真本音度合いの高い人とは「心にゆとりのある人」と捉えることもできます。

真本音度合いの高まりは、心の内発的エネルギーの高まりに影響を与えます。最終的に、それが「心のゆとり」、ひいては「腹の据わり具合」や「覚悟」にもつながるでしょう。

人は、心にゆとりができることで、他者との関係性が飛躍的に向上します。したがって、人の意見をよく聴き、しかも自分の意見も丁寧に伝えられるので、共に最善の答えを見出すためのコミュニケーションをとれるようになります。

逆に言えば、心にゆとりがないことで、他者との関係性は悪化します。なぜならば、心のゆとりのなさは、「自己防衛」を喚起するからです。

自己防衛によるコミュニケーションは主に2つのタイプが存在します。

①「逃げるコミュニケーション」
例えば、消極的、受動的、責任回避、責任転嫁、言い訳、怠慢、自己卑下、などのコミュニケーション

②「攻める(責める)コミュニケーション」
自分が攻められる前に、人を攻める、責める、否定する、自己主張する、主義主張を押し付けなどのコミュニケーション

この2つの自己防衛的コミュニュケーションが部署間でのヒエラルキーを生み、仕事が円滑に進まなくなる原因です。

真本音度合いが高まることで職場における関係性や雰囲気が著しく向上するようになります。
チームの一体感が高まり、「このチームで仕事をするのが楽しい!」と思えるようになります。

組織行動学の権威であるダニエル・キム氏の「成功の循環(Theory of Success)」モデルによって、チームの関係性が結果につながると提唱されました。よりよい組織を生み出すフレームとして、多くの組織開発の実践の中で活用されています。

成功の循環モデルでは、組織を4つの質で捉えます。周囲との関わり方やコミュニケーションといった「関係の質」が高くなると、自然と考え方も前向きになり、目的意識が高まって「思考の質」が上がります。

それが人々の積極性や主体性といった「行動の質」を高め、成果が生まれて「結果の質」につながります。すると、ますます関係の質が高くなる、といった循環を指しています。

このことを考えると、もし真本音の度合いが低く、依存気質になってしまうと、自己防衛的なコミュニケーションをとってしまい、結果的にチーム内に大きなストレスを生む可能性があります。

一方、真本音の度合いが高いと、関係性の質もよくなり、色んなコラボレーションから創造が生まれるようになります。

真本音度合いを高めるためには

では、どのようにすれば真本音の度合いを高めることができるのでしょうか。それは、真本音の願いの1つを言語化し、それを常に意識することです。

最初に言語化するものとして有効なのは「人生理念」です。

人生理念とは、調子がよい時も悪い時でも、仕事においてもプライベートにおいても、どんな状況においても、「自分の望む生き方・在り方」です。

言い換えれば、人生を通しての「願い」とも言えます。

言語化をすることで、人は意識を向けることができます。意識を向けることで、人は意識をしながら行動をすることができます。

この真本音のキーワードは、人生においてずっと続く「テーマ」「課題」です。それに真摯に向かうことが、その人の内発的エネルギーをわき起こします。そこに「モチベーションアップ」は必要ありません。

「テーマ」に向かい、決めたことを1つずつ着実に実行するのみです。本人は至って淡々ですが、しかし周りから見れば「躍動してるなぁ」と感じられることでしょう。

人生の願いに包まれている人は、「一つひとつの物事に意志を込める」ことの喜びを体験として理解しています。当然それが仕事にも現れます。

しかも、自分自身の人生の願いと、その会社の理念・ミッション・目的(パーパス)などのつながりを感じれば感じるほど、「この仕事に打ち込むこと=人生の願いに向かうこと」となり、仕事において「本来の自分」を出し切る方向に向かえるでしょう。
<著者プロフィール>

黒澤伶
株式会社ITSUDATSU
代表取締役

早稲田大学人間科学部卒。デル株式会社(現:デル・テクノロジーズ株式会社)、株式会社ビズリーチ(現:ビジョナル株式会社)、コーチングファーム取締役を経て、株式会社ITSUDATSUを創業。「ITSUDATSU(非直線的な現象)を再現性の高い世の中にする」という大義の下、要人材を起点とした独自の組織活性方法で累計300以上のプロジェクトを推進。現在、複数社の取締役CHRO(非常勤)を歴任。

関連記事

Techableの最新情報をお届けします。
前の記事
次の記事

#関連キーワード


WHAT'S NEW

最新情報